今回は、自分に適した投資信託を選ぶための5つのポイントを見ていきます。※本連載では、毎年1000を超えるファンドを分析する投信評価会社に所属する「投信のプロ」が、投資信託の基礎知識を世界一わかりやすく解説します。

資産形成は「収益」ありきで考えない

みなさんは、歓送迎会や女子会でお店を選ぶとき、どのようなことをチェックしますか? その会の趣向にあったお店であることはもちろんのこと、お店の雰囲気や料理の質、価格についてあれこれと比較しながらチェックしていくはずです。

 

これと同じく、自分の望む資産形成にあった投資信託なのかどうかを確認することは、すごく重要です。それは、自分の資産形成にあっていなくても、結果がうまくいっているときは問題ないのですが、市場環境等によって投資した対象の価格が想定外の動きをした場合には、資産形成や人生設計が大きく損なわれる可能性があるからです。

 

身近な例では、退職金を手にした人が、超低金利下において銀行預金の利息では満足できず、高い利回りを求めて8%近いブラジル債券に投資をして、その結果、多くの人が1年間で40%近い損失を被りました。これは決して他人事ではなく、いつなんどきでも起こり得るリスクです。

 

2015年~2016年はリートが大人気ですが、リスクがないわけではありません。想定外のなにかが起こったときでも、自分の人生設計を損なわない資産形成とは、儲かりそうとか、高い利回りが得られそうといった収益(リターン)ありきで考えるのではなく、自分にあった資産形成のなかで投資信託を選ぶことです。それは、自分の受け入れることができるリスク(これを許容リスクといいます)にかなった資産形成であり、投資信託なのかということです。

必要情報は「目論見書」「運用報告書」でチェック可能

とはいっても、投資信託のどこをどのようにしてみたらよいのか、かなり分かりにくいのが実情です。ここでは、投資信託のどの点を確認すればよいのかをチェックしてみましょう。

 

それは、主に5つのポイントをチェックすればわかります。

 

①そのファンドの特色・特徴

②実際の運用の実績

③価格変動の大きさ

④ファンドの実際の中身

⑤費用

 

です。これらの情報はすべて、投資信託において開示が定められている目論見書と運用報告書だけでチェックできます。

 

これは、図表1に示すように、お食事会のお店選びに置き換えることができます。どういう料理なのか、お品書き等を確認することに相当するのは、①ファンドの特色・目的を確認することになります。そのファンドがどういう運用をおこなうものなのかを簡潔に伝えるものとして、目論見書の最初に記載されることになっているので、じっくりと読んで、自分が理解し、イメージできるものかをチェックしましょう。

 

でも、文字で書かれているだけでは、本当のところよくわかりませんよね。料理のメニューだけをみても想像の域をでません。ましてや、投資信託は馴染みがないものです。そこで、実際にメニューやお品書き通りの運用がなされているのかを確認するのが、②運用実績、③価格変動の大きさ、そして④ファンドの中身のチェックです。これはそれぞれ、運用実績=料理の評価や口コミ、価格変動リスクの大きさ=カロリーや塩分の量、ファンドの中身=実際の料理の姿や写真のようなものです。

 

【図表1】投資信託を選ぶ際のチェックポイント

 

前回、②運用実績は結果の良し悪しだけに注目するだけではなく、ファンドが目指す運用から大きく逸した結果になっていないか、目論見書などで良いことをうたっているけれど、その方針にそった結果がついてきているファンドなのかを確認するために用いることをお話しました。

 

投資信託は、いままで運用実績が良かったからといって、今後も同じような良好な成績が得られるとは限りません。その点では、運用実績や、それをもとにしたレイティングは飲食店の口コミ・評価のように参考にはなりますが、それだけでは心もとないです。

 

ファンドの運用実績が思ったようにいかなかったとしても、それが自分が想定したリスクの大きさの範囲内にとどまりそうなものなのかを確認するのが、③価格変動の大きさです。価格がどれくらい動くファンドなのかを把握しておけば、事前に損失可能性の大きさをイメージすることができ、自分が投資するファンドとして適しているものなのかどうかの判断材料にもなります。また、④実際にファンドに組み入れている資産や通貨の配分などが思い描いたものになっているのかを確認したほうがよいでしょう。

 

これらは個人が投資信託を確認する際の大切なポイントなので、2014年12月以降は、すべての運用報告書に同一の形式で図示することが定められました。③価格変動の大きさは、他の主要資産とともに一目で比較できるようになりました。図表2は、オーストラリアの債券を中心に投資するファンドの例を示しています。図からは、先進国債(世界の先進国債券に幅広く投資する指数)と同程度の価格変動の大きさであることがわかります。

 

【図表2】価格変動の大きさを確認する

 

また、④投資信託の中身についても、「資産」「国」「通貨」ごとの構成割合が円グラフで表示されています(図表3)。通貨配分はオーストラリアドルですが、国別配分では、オーストラリアに加え、国債機関債や多くのヨーロッパ諸国の発行体による債券が組み入れられていることがみてとれます。

 

丁寧な運用会社では目論見書や月次レポートに掲載されているケースがありますが、運用報告書を見れば確実に確認できます。これら「資産」「国」「通貨」は価格変動の大きさを左右する主要項目でもあります。料理を選ぶ際には写真やサンプルを見ることで、実際のイメージが湧きますよね。ファンドを選ぶ際にも、ぜひともチェックしてもらいたい項目の一つです。

 

【図表3】ファンドの中身を確認する

投資信託を利用するための適正な「費用」とは?

そして、最後に見逃してはいけないのは⑤費用です。投資信託は、資産形成のため機能が高い一方で、費用が高くなりやすいことが難点です。費用が長期の資産形成において大きな影響を及ぼすことについては、第12回(2月27日公開予定)で詳しくお話します。

 

お店や料理を選ぶ際にも、必ずチェックするのが価格や値段ですよね。どんなに良さそうなお店でも、値段が高ければ見送って別のお店に切り替えます。ファンドでも、費用が高ければ同じことがいえます。これは、どれくらいの費用水準なら高くて、どれくらいであれば安いというのは難しいのですが、あえて目安を示すとすれば、投資信託全体の運用管理費用の平均である1.5%を意識すべきでしょう。

 

もちろん、日本債券のファンドは相対的に低く、外国資産に投資するファンドは高いなどの違いはありますが、この水準よりも高いファンドは慎重に考えましょう。現在のような低金利下で、あえて高い費用を支払ってでも投資するのであれば、購入する理由を自分で説明できることです。

 

このように、自分の資産形成にあった投資信託選びは、運用会社や販売会社から提供されている資料だけでも、なにをどこで確認するのか要領をおさえてみれば、自分で確認することができます。難しく考えることはありません。お店を選ぶ幹事のつもりで楽しみながらチェックしましょう。

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