今回は、投資信託の「運用実績」はどのように捉え、活用すべきかを見ていきます。※本連載では、毎年1000を超えるファンドを分析する投信評価会社に所属する「投信のプロ」が、投資信託の基礎知識を世界一わかりやすく解説します。

「将来」は分からない投資信託の評価レイティング

みなさんは、レストランを探すときや予約をするときに、飲食店の口コミサイトで世間の評判を確認しますよね。ネットやSNSにより個人が情報を共有できるようになると、利用者の評判を確認しあうことが当たり前になりました。サイトでは5点満点による分かりやすい表示がされています。自分が行きたいと思ったお店、選んだレストランが高い評価だと、ホッとしたりするものです。

 

細かい説明や比較より、視覚に訴える表示は便利なものです。分かりやすく簡単な答えを求めるといった、現代社会の風潮も影響しているのでしょう。

 

料理は同じお店で同じ人が作るのですから、品質はそれほど変わることはなく、安定しています。料理人が交代でもしない限り、大きく味が変わることはないでしょう。その点では、食べログ等の評判はある程度は信頼できるものであり、利用価値が高いものです。

 

投資信託においても、評価会社が独自の基準で各ファンドの運用実績を比較して、分かりやすく5段階のレイティングで示しています。たとえば「★★★★☆」のような表示形式で、5段階中の上位4に相当するといった示し方をしています。

 

投資信託はいまや5000以上もあるのですから、この中から自分で選ぶのは至難の技であり、このような形で運用実績を成績通信簿のように表示してくれることは便利で分かりやすいですよね。でも、投資信託の評価レイティングは、口コミサイトのそれとは必ずしも同じではないということを知っておきましょう。

 

端的にいえば、投資信託では、現在の成績が良かったファンドが、これからも良い成績を示すとは限りません。料理の美味しさや勉強における偏差値のように、現在の実績がそのまま今後を保証するものではないのです。

 

それは、レシピ通りの分量で料理を作れば毎回同じ味になるのとは違い、運用の場合には、たまたま良い結果になったということもあり得るからです。

 

投資では、いつも思った通りの合理的な結果が得られる可能性は低く、かなり不確実な世界だからです。そのため、上手くいっているものの多くが、そのまま将来にわたって上手くいく保証はないのです。そう考えると、運用実績は成績通信簿であることはたしかですが、飲食店の口コミサイトのように、一定の信頼がおける点数を示しているとは限らないのです。

自分の資産形成に適した投資信託を選ぶことが第一

実際に、市場全体の動きよりも良い運用結果を示すファンドは全体の3割にも満たないといった調査結果もあるようです。そのなかでも、長期間にわたって良い成績を示し続けるファンドはさらに少ないといわれています。これは、そのファンドを良いときに購入すると、逆にその後は芳しくない結果になる可能性もあることを意味しています。

 

下記の図表は実際に表彰されたファンドがその後どうなったのかリターンの推移を市場全体の動きと比較したものです。

 

【図表】表彰されたファンドと市場全体の動きの比較

 

では、運用実績はどのように活用したらよいのでしょう? 運用実績は、儲かりそう、儲かりそうでないといったことを見分けるものとして用いようとすると、上手く活用することはできません。それよりも、ファンドを選ぶ際の参考指標の1つとして用いることです。

 

具体的には、運用実績はファンドが目指す運用方針から大きく逸れた結果になっていないか、目論見書などで良いことをうたっているけれど、その方針にそった結果がついてきているファンドなのかを確認するために用いるべきでしょう。

 

投資信託の優れた活用法は、自分の資産形成にあった投資信託を選ぶことです。これは、儲かる投資信託をみつけることと比べれば、それほど難しいことではありません。電車の中吊り広告で、有名な男性ファッション雑誌の見出しに「かっこいい服ではなくて、自分にあった服を探そう」とありました。資産形成も自分にあった投資信託を探すことが大切だと気づくことです。

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