投資のリスクをコントロールする方法

今回は、投資のリスクをコントロールする方法について見ていきます。※本連載では、毎年1000を超えるファンドを分析する投信評価会社に所属する「投信のプロ」が、投資信託の基礎知識を世界一わかりやすく解説します。

リスクの高い投資では「金額」を減らす

一般的に、高齢者は低カロリーで栄養バランスが良い和食が適しているといわれます。また、高血圧の人は塩分を減らした食事が良いでしょう。では、こういった人は、自分が食べたい食事はとれないのでしょうか? 高齢の人が中華料理を食べたり、高血圧の人はラーメンを食べるのは避けるべきなのでしょうか?

 

資産形成にもこれと同じことがいえます。資産形成の教科書では、シニア層と呼ばれる比較的高齢の人たちは、安定的な運用を中心におこなうことが良いとされています。たとえば、これから年金生活を迎える人が手にした退職金は、老後を生活していくための大切なお金なので、大きなリスクにさらして万が一にでも大きな損失を出してしまうと、人生計画が狂ってしまいます。そのため、銀行預金ではなくてお金を投資にまわしたい場合でも、日本の債券のように、価格が安定していて、元本を失うリスクが小さいものを中心に投資をしたほうが良いという考え方です。

 

同じ視点で、投資の知識や経験が少ない人も、比較的安定した資産を中心に投資をしたほうが良いとされています。なぜなら、投資商品は価格が変動することはつきものですが、どういったときに価格が動くとか、どのような資産であればどれくらいの大きさで価格が動くのかについてイメージできないため、価格変動に対しての備えを見誤ってしまいがちだからです。これを専門的な言葉では、「リスクコントロールをおろそかにする」といいます。そういう人にとって、想定外の損失を出してしまうとか、急に価格が下がったときに狼狽売りをする可能性を避けるために、安定した資産を中心に投資したほうが良いとされるのです。

 

一方で、最近の日本では超低金利が続き、日本国債は10年物でもほぼゼロ金利です。これがいつまで続くのかはわかりませんが、こうした環境下、日本国債のような安定した資産では、望んだような収益を得ることすらできません。ある程度の収益を得ようとすれば、外国の債券やリートなど、さらにリスクの高い資産に投資することになります。

 

「年金生活だけど、低金利のせいで利息も入らないのだから、数%の金利があるリートにどうしても投資したい!」

「退職金が入ったのだが、7%近い金利があり、ブラジルや中国と違って経済も好調で将来性も有望なインドの国債が魅力的で...」

こういう人も多いはずです。

 

でも、高齢なシニア層や、投資に関する知識や経験が少ない人たちは、株式やリート、新興国に投資をしてみたいと思っても、投資してはいけないのでしょうか? いいえ、そんなことはありません。投資する対象のリスクが大きければ、それだけ投資するお金を少なくすればいいのです。そうすれば、全体でみると受け入れるリスクの大きさは同じになります。

 

たとえば、銀行預金プラスアルファ程度のリスクしかとりたくない人、つまりほとんど損することを考えていない人は、日本債券程度のリスクしか受け入れることができません。日本債券の価格変動リスクは大きく見積もって年率5%程度です。一方でリートの価格変動リスクは20%程度です。そうであれば、リートに投資するお金を4分の1にするのです。

 

たとえば、100あるお金を日本債券に投資すれば、損失可能性は100×5%=5です。リートに同じく投資すると、100×20%=20になります。ここで、投資に回すお金をリスクが増えた割合だけ減らすと、25×20%=5です。

 

【図表】投資対象のリスクと投資金額のバランス

 

もっと割りきった言い方をすれば、外国の債券であれば2倍強、株式やリートであれば4倍程度と考えておけば近い数字になります。また、インドのような単一国に投資する場合には、投資の基本である分散効果が効かなくなるので、さらに倍のリスクがあるとみておけばよいでしょう。

 

実際に高金利のブラジル債券に投資した場合、1年程度で40%近くも価格が下落する時期もありました。いつもこういうことが起こるわけではないのですが、美味しいものにはリスクが潜んでいるのも事実です。リスクがいつ顔を出すのかはプロでも予測できないので、慎重になるくらいで良いでしょう。

「資産全体に与えるリスク」を許容範囲内に抑える

投資で自分が上手に立ち回ることができなければ、リスクの大きい資産に対しては投資金額を抑えることで、あなたが受け入れることになるリスク全体の大きさを、自分の許容範囲内にとどめておくことです。投資する対象が安定資産かリスクが高い資産かといった投資対象のリスクの大きさだけで考えるのではなく、そのリスクがお金全体に与える影響の大きさで考えることです。

 

高齢者も、ときには肉料理や中華料理を食べます。その際、健康を気遣う人は、食べる量を少量にしますよね。高血圧の人もラーメンを食べたいときもあるでしょう。でも、少量に抑えるとか汁を飲まないようにして塩分摂取を避けるようにします。これは、トータルでのカロリー量や塩分量を意識的にコントロールしていることにほかなりません。

 

投資にも同じことがいえます。リスクが高い資産に投資したいときは、投資にまわすお金の大きさとの兼ね合いで考えることです。そうすれば、あなたが受け入れるリスクの大きさをコントロールできるのです。

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三菱アセット・ブレインズ株式会社 シニアコンサルタント

慶応義塾大学卒、唐木研究会出身。三菱UFJ信託銀行において、投資の専門家として20代前半から数十年にわたり、ファンドマネージャー、トレーダーとして一貫して運用の最前線に身を置き、市場のなんたるかを体得。その経験をもって、現在は、投資信託の評価会社である三菱アセット・ブレインズ(MAB)において、投資信託の販売支援や投資教育などを通じ、個人が安心して健全な資産形成に励むことができるための啓蒙に取り組んでいる。
書籍『顧客をリスクから守る資産形成術』(きんざい)を始め、資産形成に関する記事を新聞、雑誌に多数掲載。

三菱アセット・ブレインズ株式会社(MAB)
http://www.mab.jp/

著者紹介

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