前回はバブル期に購入した物件を例に、「譲渡益」と「譲渡損」の関係を説明しました。今回は、資産を会社に移す具体的な方法について見ていきます。

どうやって子どもの会社に資産を移すか?

相続税対策として法人を設立する場合、やはりポイントになるのは子どもの会社にどうやって資産を移すかです。

 

その方法は大きく分けて3つ。それぞれの状況に合わせて、どの方法がいいのかは税理士などと相談して決めることが重要になります。まずは、その3つの方法を簡単に解説しておきましょう。

財産の規模や質によって最適な手法も異なる

①現物出資

親の保有する財産を子どもが設立した会社に現物で出資してもらいます。アパート・マンション等の収益物件をはじめとして自宅などを保有しているような場合も、親が現物の土地や家屋、マンションなどを子どもが設立した会社(仮にA社とします)に出資することができます。

 

A社は当然、その不動産の価値に応じた株式の発行によって処理することになります。この方法のメリットは、融資等を受ける必要がなく、大きな資金が不要である点があげられます。

 

一方、デメリットとしては相続では株式を相続することになり、場合によっては、株の評価を下げるのが難しい場合があることです。

 

②金融機関からローンを借りて一括払い

親の資産を会社(A社)に移転するときに、金融機関から融資を受けて親に一括払いする方法です。一括払い後、A社は金融機関に元本と利子を返済していくことになります。

 

親の資産を子どもが創設したA社に売却するというと、どうしても身内だけで不透明という印象はぬぐえませんが、金融機関のローンを通すことで透明感が増すために客観性が高まります。いわゆる税務調査などのリスクを軽減することができます。

 

金融機関は、当然その資産を担保の全部もしくは一部として審査するために、ローンに見合う価値のないものには融資しません。金融機関のデューデリジェンス(資産価値審査)が入ることで、資産価値の査定もしっかりしてくることになります。

 

この方法で問題なのは、親の世代に対価として支払われた現金が残ってしまうことですが、現金でもさまざまな方法によって相続税の節税は可能です。毎年110万円ずつの贈与税の基礎控除枠を活用したり、相続税の改正で注目を集める教育資金の贈与枠(1人1500万円まで)を活用する方法など、考えられる手段は多くあります。

 

③分割払いによる移転

会社に資産を移す際に、売買契約を結びますが、支払い方法については10年、20年という分割払い契約にします。

 

この方法では、市場価格とあまりにもかけ離れた価格で譲渡した場合には税務調査のリスクを高めることになります。市場と乖離しない契約内容にすることが大切であり、月々の支払いもきちんと銀行口座を通して処理することも重要です。

 

これら3つの方法のうちどれを選択するかは、その相続財産の規模や質によっても変わってきます。金融機関から融資を受けるにしても、金融機関がNGを出す可能性があります。3つの選択肢の中から最も適したものを選ぶことが大切です。

本連載は、2013年8月2日刊行の書籍『相続税は不動産投資と法人化で減らす』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

相続税は不動産投資と法人化で減らす

相続税は不動産投資と法人化で減らす

成田 仁,富田 隆史

幻冬舎メディアコンサルティング

従来より相続税対策として考えられてきた、アパートや小規模ビルなどの建設。しかし、それこそがリスクをもたらしているかもしれないとした…。 本書は、持て余している土地を収益性の良い賃貸物件に買い替える不動産投資の最…

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