自社株にかかってくる相続税の納税を「猶予」する方法

前回は、いわゆる「黄金株」を活用法をなどを説明しました。今回は、「非上場会社の株式に係る相続税の納税猶予制度」を利用した、自社株に関する対策について見ていきます。

非上場会社の株式に係る相続税の納税猶予制度とは?

自社株に関する相続税の対策方法としては、「非上場会社の株式に係る相続税の納税猶予制度」を利用することも考えられます。

 

この制度は、後継者が、相続により非上場会社の株式を取得し、「一定の要件」を満たす場合には、後継者が相続前からすでに保有していた議決権株式を含めて、議決権を完全に有する発行済み株式の3分の2に達するまでの部分について、課税価格の80%に対応する相続税の納税が猶予されるというものです。

 

「一定の要件」とは、①先代経営者(被相続人)、②後継者(相続人)、③対象会社に関するもので、具体的には以下のような中身となっています。

 

①先代経営者(被相続人)が・・・

●会社代表者だったこと

 

●同族関係者(親族等)と合わせて発行済み議決権株式総数の50%超の株式を保有し、かつ同族関係者内で筆頭株主であったこと
 など

 

②後継者(相続人)が・・・

●相続開始の直前において対象会社の役員であること

 

●先代経営者の親族であること(平成27年1月1日以後は、親族外でもよい)

 

●同族関係者(親族等)と合わせて発行済み議決権株式総数の50%超の株式を保有し、かつ、同族内で筆頭株主となること
 など

 

③対象会社が・・・

●下記図表の「資本金」または「従業員数」のいずれかの要件を満たしていること

 

●非上場会社であること

 

●資産管理会社(自ら使用していない不動産等が70%以上ある会社やこれらの特定の資産の運用収入が75%以上の会社)ではないこと。例えば、所有する不動産の70%以上をマンションやアパートなどの形で賃貸しているような会社は資産管理会社に該当することになります。また、所有不動産を会社の事務所として使っているような場合には、﹁自ら使用していない不動産﹂には該当しないことになります。
 など

 

[図表]対象会社の用件
[図表]対象会社の用件

5年経過後も納税猶予を継続できる場合がある

さらに以下のような要件を満たすことで、①5年間、さらにまた、②5年経過後も納税猶予を継続することができます。

 

①5年間

●後継者が代表者であり続けること

 

●毎年、雇用の8割以上を維持すること(平成27年1月1日以後は、5年間の平均で雇用の8割以上を維持すればよい)

 

●相続した対象株式を継続保有すること

 など

 

②5年経過後

●対象株式を継続保有等する

さらに以下の場合には全部または一部の猶予額が免除されます。

 

●後継者が死亡した場合

 

●会社が破産または特別清算した場合(平成27年1月1日以後は、事業再生等の場合に一部免除されるようになる)

 

●対象株式の時価が猶予額を下回る中、株式譲渡を行った場合

 

●次の後継者に株式を贈与し、その後継者が贈与税の納税猶予の適用を受ける場合

 

納税猶予制度を利用するための手続きとは?

また、「非上場会社の株式に係る相続税の納税猶予制度」を利用するために必要となる手続きは、以下のような流れとなっています。

 

〈手順①〉相続開始後8カ月目までに申請する

定款および株主名簿の写し、登記事項証明書、従業員数証明書等を添付します。

 

〈手順②〉審査後、認定書の交付を受ける

 

〈手順③〉認定書の写しとともに、相続税の申告書等を提出する

定款、株主名簿の写し、登記事項証明書等を添付します。

 

〈手順④〉納税猶予税額および利子税の額に見合う担保を提供する

特例を受ける非上場株式のすべてを担保として提供すれば、納税猶予税額および利子税の額に見合う担保提供があったものと見なされます。

 

〈手順⑤〉5年間、経済産業局へ「年次報告書」を提出する(年1回)

 

〈手順⑥〉5年間、税務署へ「継続届出書」を提出する(年1回)

 

〈手順⑦〉5年間の経過後は、税務署へ「継続届出書」を提出する(3年に1回)

本連載は、2014年11月27日刊行の書籍『地主の相続財産は法人化で残す』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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連載株式会社、合同会社、一般社団法人――最適な法人化で徹底節税

税理士法人ティーアンドエス 会長

1950年生まれ。1983年に埼玉県上福岡市で税理士登録開業し、1995年から川越市に事務所を開設。2010年、税理士法人ティーアンドエス設立。 埼玉県内で30年以上税理士として活躍し、特に都市近郊の地主に向けた相続税対策については知識・経験が豊富。

著者紹介

税理士法人ティーアンドエス 所長

1966年生まれ。平成元年、慶応大学経済学部卒業。その後、海外留学をし、一般企業にて国内海外の不動産開発にかかわる。 平成8年、税理士試験合格。平成11年、さいたま市にて税理士登録開業。

著者紹介

地主の相続財産は法人化で残す

地主の相続財産は法人化で残す

小澤 豊,川本 泰正

幻冬舎メディアコンサルティング

相続税をできるだけ節税したい、遺産分割で家族がもめてほしくない――。地主にとって相続は、頭の痛い問題です。 多くの地主の相続財産は、現金ではなく土地が大半のため、いざ相続になったときに預貯金だけでは相続税を支払…

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