前回は、団塊世代の大量退職にともない「技能工」の確保が中小製造業の課題となっていることをお伝えしました。今回は、中小製造業にとってM&Aでの売却チャンスが高まっているとされる現在の市場環境について解説をします。

近年、肩上がりに増え続けているM&Aの件数

人材不足を補うのは大変です。特に製造業で熟練の技能工を育てるとなると、時間的にも労力的にもかなりの負担になりかねません。

 

そこで各企業が考えるのがM&Aです。M&Aであれば貴重な人材をすぐに手に入れることができて、即戦力として働いてもらうことができるからです。また、工場や設備なども一から準備するにはコストがかかりますが、その負担もありません。近年では事業を成功させるためにいかに速く事業展開できるかということが求められていますから、その点でも優れている方法です。

 

実際にM&Aの件数はリーマンショック後に一旦は下がったものの、その後また右肩上がりに増え続けています。大手製造業も経営戦略の一つとしてM&Aを捉えているところが増加しています。大手製造業なら生産能力の増強や多角化戦略のためにM&Aを検討することもあるでしょうし、中規模以上の製造業なら大手に負けまいと新たなシナジーを求めてM&Aを視野に入れることもあります。

中小製造業が抱える技能工などの人材に注目が集まる

こういった業界の動向を踏まえると、今後の先行き不安を抱えている中小製造業にとって、M&Aで譲渡するのに有利な市場環境が整ってきているともいえます。

 

多くの中小製造業は市場の変化や競争に翻弄されながら事業承継問題に苦心しているところも多いのですが、大手製造業や今後の事業拡大を考えている企業からしたら、技能工など貴重な人材を持っている、自社の成長をスピーディに促す可能性を秘めた存在なのです。

 

これこそが今、中小製造業にM&Aをお勧めする根拠です。売り時とも言える市場ですから、高い価値を認めてもらう可能性も格段に高いと言えるでしょう。

本連載は、2016年4月27日刊行の書籍『中小製造業の社長が知っておきたい会社の売り方』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

中小製造業の社長が知っておきたい会社の売り方

中小製造業の社長が知っておきたい会社の売り方

浅岡 和彦

幻冬舎メディアコンサルティング

自分が高齢になってもその技術や従業員を守っていきたい、自社の技術を信頼してくれる取引先に迷惑をかけたくない──これは中小製造業の社長に共通する願いでしょう。 しかし、社長の思いに反し、多くの会社がいま存続の危機…

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