前回に引き続き、土地売却のための「目安価格」の査定方法について解説します。今回は、取引事例の調査方法などを見ていきましょう。

全国の取引事例は「不動産取引価格情報検索」で調べる

●目安価格の査定方法③取引事例を調べてみる

実際に行われた取引事例の価格も目安を把握する上では大変役立ちます。

 

国土交通省のウェブサイト内にある「不動産取引価格情報検索」では全国の取引事例が紹介されています。記載されているのは物件の所在地や広さ、形状、最寄り駅などの他、取引価格の総額や坪単価、取引が行われた時期などです。

 

どんな物件がいつ、いくらで取引されたのかがわかるので、売却したい不動産の近くで類似物件の取引情報が見つかれば、公示地価とは異なる実情データとして活用できます。

 

ただ、地域によっては取引情報が少ないため、参考になるデータが見つからないこともあります。また、不動産は個別性が高いため、他の不動産の取引情報が売却したい不動産に必ずしもあてはまるわけではありません。

 

●目安価格の査定方法④不動産鑑定士に査定を依頼する

目安となる不動産の価格相場を知る方法として、もっとも信頼性が高いのは、不動産仲介会社や不動産鑑定士などの専門家に査定を依頼することです。当然、個人によって能力や情報量の差はありますが、一般的に不動産仲介会社は日常から売買を手がけ、市場の動向にもアンテナを張っているので、より現実的な価額が出せると考えられます。

 

ただし、売買に利害が絡むことがあるため、査定額が操作されている可能性は否めません。「売買を手早く済ませたい」と考える不動産仲介会社は低めに見積もることがありますし、「時間がかかってもより多くの利益を得たい」と望む不動産仲介会社は高めに見積もる傾向があります。

客観的な価格査定が期待できる「不動産鑑定士」の鑑定

一方、不動産鑑定士は国家資格であり、土地など不動産の価値を〝鑑定する〟専門家です。自身の利益のために鑑定価額を上下させることはほとんど考えられないので、不動産の価値を客観的にしっかり査定してもらうことができるはずです。

 

不動産鑑定士が不動産を査定する際、主に「取引事例比較」と「収益還元法」を用います。「取引事例比較」は、近隣の不動産の取引価格をヒントに価格を割り出す方法です。

 

宅地として利用する土地の価格はこの手法によって査定します。

 

一方、不動産により利益を生み出す商業地や工業地の場合は「取引事例比較」に加え、「収益還元法」が採用されます。その不動産がどれだけの収益を生み出すかを想定した上で、いくらまでなら買主が利益を上げられるかという観点から価格を割り出すのです。たとえば土地を1億円で購入し、さらに1億円をかけて賃貸住宅を建設すると、合計2億円の資金が必要になります。

 

20年返済のローンで2億円を借り入れ、金利3・0%で計算すると、年間1300万円あまりを返済しなければなりません。空室リスクや修繕費用などを算入するなら、年間1500万円はかかると見るべきです。

 

つまり、この土地でマンション経営をしようとする買主にとって、年間1500万円を上回る家賃収入が想定されるなら1億円での購入は可能ですが、それ以下の収入しか見込めないのであれば購入する意味がありません。

 

このように、近隣の家賃相場などをもとに買主が収益を得られる価格はいくらかを試算して不動産の価格を割り出すのが「収益還元法」です。

本連載は、2016年8月16日刊行の書籍『経営者のための事業用不動産「超高値」売却術』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

経営者のための 事業用不動産「超高値」売却術

経営者のための 事業用不動産「超高値」売却術

大澤 義幸

幻冬舎メディアコンサルティング

事業が悪化し経営苦に陥った中小企業経営者の切り札「不動産売却」。できるだけ高値で売却して多額の負債を返済したいと考えながらも、実際は買手の〝言い値″で手放せざるを得ないケースが多い。しかし、売れないと思っていた…

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