前回は、不動産高値売却のキーポイント「売り時」の見極め方について説明をしました。今回は、「東京オリンピックまで」といわれる不動産相場の動向について見ていきます。

東京以外の大都市圏でも地価は上昇しているが・・・

2016年春の時点で不動産の相場は近年にない上げ潮となっています。東京オリンピックによる需要増を予想する事業者が東京の不動産を買い上げたのがそのきっかけです。

 

転売により利益を上げようとする事業者が積極的に買い上げたため、首都圏の地価は急激に高騰しました。高騰した不動産はそれ以上の高値で転売するのが難しくなるため、利ざやを稼ぎたい不動産事業者は購入の対象を首都圏の外に広げていきます。その結果、大阪や名古屋など、東京以外の大都市圏でもジワジワと地価が上昇しているのです。

 

ただ、首都圏から全国に波及しつつある不動産の価格押し上げは短期的な現象であり、長期的には依然として下落圧力の方が強いと思われます。

 

一部の輸出関連企業は好決算を発表しているものの、経済の足下は日銀がマイナス金利を導入するほど頼りないものです。少子高齢化が進む中、住宅に対する基本的なニーズが高まることは、今後も長くは見込めません。既存住宅の「7軒に1軒が空き家」と言われる通り、不動産における需要と供給のバランスは今後も長く供給過多が続くものと考えるべきです。

ピークの前に売り抜けるのであれば…

また、重要な判断基準の一つとなるのは国内における所得の推移です。国税庁が発表している資料を見ると、民間の平均給与は1997年の467万円をピークに、2009年には406万円にまで落ち込んでいます。

 

その後はわずかに上昇が見られ、2014年には415万円となっていますが、依然として低いレベルにとどまったままです。さらに非正規雇用が増加する中、収入が不安定化している実態も見逃せません。高い賃料を支払ったり高額のローンで賄ったりできる人はむしろ減少しているのです。ベースとなる需要が伸び悩んでいる国内事情に照らすと、「不動産価格が長期的な下落傾向を抜け出すとは考えにくい」というのが一般的な見方になります。

 

「東京オリンピックまでは上昇する」との予想をよく耳にしますが、裏返すと「その後の相場は下がる」あるいは「不透明」ということになります。目端の利く不動産業者はオリンピック前に売り抜けようとするため、ピークは2020年ではなくその前にやってくると考えた方がよさそうです。

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    本連載は、2016年8月16日刊行の書籍『経営者のための事業用不動産「超高値」売却術』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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    大澤 義幸

    幻冬舎メディアコンサルティング

    事業が悪化し経営苦に陥った中小企業経営者の切り札「不動産売却」。できるだけ高値で売却して多額の負債を返済したいと考えながらも、実際は買手の〝言い値″で手放せざるを得ないケースが多い。しかし、売れないと思っていた…

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