前回は、家賃滞納トラブルを防ぐための入居者「審査」のポイントについて説明しました。今回は、空室が続いても入居者審査のハードルを下げてはいけない理由を見ていきます。

申込書に記載された勤め先が存在しない!?

前回の続きです。中には保証会社の審査制度を悪用するケースもあります。保証会社も書面を定型化しているため、多少おかしなところがあっても、書類が揃っていれば通してしまうのです。

 

そこで、いい加減な客付け業者だと体裁を無理矢理整えた書類を用意することがあります。要は、「虚偽の内容でもいいから申込書さえ埋めてしまえば通る」という考え方です。ずさんなケースでは、書かれている勤め先が存在しない場合も普通にあります。

 

いつの時代も抜け道を見つける人がいるもので、違法業者が最たる例です。ひどいケースになれば不動産業者がアリバイ会社と提携していて、入居希望者を「コピー機器販売の営業」とかに仕立てあげることもあります。

 

今までは不動産会社が審査して、嘘をつかれる立場だったのが、今度は保証会社にどう嘘をつくかを考えているのです。具体的にはワンルームを一つ借り上げてそこに電話を何本もひいて、それぞれにA社、B社、C社、D社というように振り分けて、電話が鳴れば「はい、何々会社です」と対応するようになっています。

 

このように保証会社を騙すダミー会社によって定職についていないフリーター、風俗関係や水商売のような、部屋を借りたくても借りられない人が部屋を借りている現実があります。

 

保証会社が見るのはあくまで支払い能力や信用だけなので、犯罪履歴まではチェックしません。

 

オーナーさんのためにも管理会社が犯罪履歴も調べるべきですが、それをやっている会社はまだ少ないです。筆者の管理会社は、トラブルを避けるため「日経テレコン」のサービスを使って、過去に新聞に載った事件や犯罪記事を調べるようにしています。

 

入居者の名前で検索すれば、過去に事件を起こしたかどうかがある程度わかります。まれに傷害事件や窃盗事件を起こしている人もいます。もちろん、きちんと反省している方もいますが、一般的に再犯率は高いものです。

「誰でも入居させてくれる」という噂が広まったら・・・

問題がある物件を抱えているオーナーは、空室に困っていて「喉から手が出るほど賃料が欲しい」「なんとか入居者に入ってもらいたい」一心で、ついつい入居のハードルが緩くなりがちです。

 

そういう物件ほど、「普通では住めない人」を入れられるケースが多いのです。入居の基準をきちんと持っていないで「まあいいや」と入れてしまった入居者が、後で事件を起こすこともあります。そういう物件の評判は広まるもので「あそこは誰でも入れてくれるらしい」とか、「あそこの管理会社の審査はザルだ」と知れ渡ると、ますます問題のある入居者を連れてこられます。

 

池袋から近い立地で投資家が購入を検討しているアパートがありました。そのアパートの一室が風俗店の営業電話を置く目的で借りられていることが判明しました。部屋には電話機とパソコンが置いてあるだけで、人の出入りはほとんどありません。しっぽをつかまれないために、電話の中継点にだけ利用して、別の所で実際の風俗店を運営しているか、派遣しているようです。犯罪ではありませんが、グレーな使い方です。

 

結局、購入は見合わせました。もしも借り手が反社会勢力だったら深刻です。銀行が知れば、我々も加担していると思われかねません。その物件が相場よりも安かったのは、そういう理由があるのです。そのリスクを冒して、1〜2%利回りが上がる程度なら買わないほうがいいですとアドバイスしました。

 

最近では、空室がオレオレ詐欺や犯罪に悪用されるケースがあります。不正に鍵を手に入れて荷物の受け渡し場所などに利用するそうです。

本連載は、2016年10月11日刊行の書籍『失敗例から学ぶ儲かる不動産投資の極意』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

失敗例から学ぶ 儲かる不動産投資の極意

失敗例から学ぶ 儲かる不動産投資の極意

平山 智浩・渡辺 章好

幻冬舎メディアコンサルティング

物件の周辺環境の変化、急な修繕、家賃滞納など数々のリスクが潜む不動産投資において、事前にそのリアルな失敗パターンを知ることが不可欠です。多くの個人投資家にコンサルティングを行い、それぞれに合った不動産投資の方法…

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