今回は、家族が遺留分を取り戻す方法を見ていきます。※本連載は、池田税務会計事務所の代表税理士の池田俊文氏の著書『50歳からの相続・贈与の本』(駒草出版)の中から一部を抜粋し、大切な家族と財産を守るための相続や贈与に関する法律知識や税金知識を幅広く紹介します。

財産を取り戻す「遺留分の減殺請求」

愛人と暮らしていた夫が、「自分が死んだら、全財産を愛人にあげる」という遺言書を遺していました。自分の財産はどのようにでも自由に処分することができるとしても、その基本は家族の応援があったればこそ築き上げた財産です。

 

遺言書があれば、遺言通りに分けることが亡くなった人の意思であり優先されるべきものとはいえ、遺言通りに財産を分けると、残された家族の生活は成り立たなくなることもあります。

 

取得した相続財産が実際に取得できる財産に満たない場合を、遺留分が侵害されているといいます。この場合、遺贈を受けた相手から遺留分相当額を取り戻すことを「遺留分の減殺請求」といいます。

 

遺留分の減殺請求の方法は特に決まりがないため、相手方に意思表示をすればよく、家庭裁判所に訴えを起こすといった面倒な手続きは必要ありません。ただ、減殺請求をいつどのような方法で意思表示したかを明確にしておくため、内容証明郵便などで行うのがよいとされています。

 

減殺請求に相手方が応じない場合は、家庭裁判所に調停の申し立てをすることになります。なお、遺留分の減殺請求は、遺留分を侵害されていることを知った日から1年以内に行わなければなりません。何もしないで1年が過ぎてしまうと、時効によって権利が消滅してしまいます。

相続開始前1年以内の贈与財産も遺留分の対象

遺留分の対象となる財産の範囲は、死亡時の相続財産だけでなく相続開始前1年以内の贈与財産も遺留分の対象になります。この場合、法定相続人以外の誰に対する贈与であっても遺留分の対象財産に含まれることになります。

 

また、相続開始前1年を超える贈与財産で、財産を渡す側、受け取る側が遺留分を侵害することを承知の上で行われた贈与も遺留分の対象財産に含まれます。遺贈する場合は、遺留分には十分注意して行うことをお勧めします。

 

【図表 夫が遺言書に「愛人に全財産を遺贈する」と遺した場合】

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    本連載は、2015年12月17日刊行の書籍『50歳からの相続・贈与の本』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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