本連載は、日本公証人連合会理事・栗坂滿氏の著書、『トラブルのワクチン―法的トラブル予防のための賢い選択―』(エピック)の中から一部を抜粋し、遺言、相続にまつわるトラブルとその予防・解決法を紹介します。

「遺言書」がなければ、財産は法定相続人が引き継ぐ

人が亡くなると相続が開始します(民法882条)。その人が多少にかかわらず財産を残していたら、それは生存している者に引き継がれていくことになります。亡くなられた人が、遺言等により自分が死んだ後にその財産を引き継ぐ相手を指定していなかった場合は、法律で定められたその人の相続人に引き継がれることになります。相続人の典型は子ども(民法877条)で誰もが知っていると思います。

 

子どもがいない場合に誰がどのような順番で相続人になるかについても民法は規定しています。つまり、子やその子である孫がいない場合は、先ず両親等の直系尊属が相続人になり、直系尊属が既に亡くなっているなら、兄弟姉妹が相続人になります(民法889条)。なお、亡くなられた人が既婚者の場合は、その配偶者は、子、直系尊属、兄弟姉妹と並んで同順位で相続人となります(民法890条)。

 

相続分についても民法に規定があり、①相続人が子と配偶者の場合は、子が2分の1で、配偶者も2分の1(図1)、②相続人が直系尊属と配偶者の場合は、直系尊属が3分の1で、配偶者が3分の2(図2)、③相続人が兄弟姉妹と配偶者の場合は、兄弟姉妹が4分の1で、配偶者が4分の3(図3)です(民法900条1号~3号)。なお、子、直系尊属、兄弟姉妹が複数人いる場合は、その相続分は人数分で割ることになります(同条4号)。

 

【図1】亡くなった人(Aさん)に配偶者と子がいる場合

配偶者の相続分は1/2

子の相続分は1/2、それを子の頭数で分け合う

図1のように子が2人ならそれぞれ1/4

 

 

【図2】亡くなった人(Aさん)に子がなく、親が存命の場合

配偶者の相続分は2/3

親の相続分は1/3で図2のように両親とも健在ならそれぞれ1/6

 

 

【図3】亡くなった人(Aさん)に子がなく、親が亡くなっていて兄弟姉妹がいる場合

配偶者の相続分は3/4

兄弟姉妹の相続分は1/4、複数いるなら頭数で分け合う。

図3のように2人ならそれぞれ1/8

 

遺言書を書くことで、自分の意思を反映した相続が可能

亡くなられた人に相続人が見当たらない場合は、その人と生計を共にしていたとか、療養監護に努めていた者など特別の縁故があった者の請求により、財産の全部または一部が引き継がれる場合があるものの(民法958条の3)、引き継がれない財産は、国庫に帰属することになります(民法959条)。

 

これが、基本的な相続の仕組みですが、このような法定相続により自己の築いた財産を承継させることを望まない者は、遺言書を書くことで、その意思を反映させることができます(民法902条)。

 

ただ遺言は、民法の定める方式に従わなければすることができません(民法960条)。また、遺言は15歳に達すれば誰でもすることができますが(民法961条)、認知症などで遺言能力がないと判断される場合はすることはできません(民法963条)。

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    本連載は、2016年8月1日刊行の書籍『トラブルのワクチン―法的トラブル予防のための賢い選択―』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

    トラブルのワクチン ―法的トラブル予防のための賢い選択―

    トラブルのワクチン ―法的トラブル予防のための賢い選択―

    栗坂 滿

    エピック

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