前回は、社員の採用で「試用期間」を設定している場合の注意点を解説しました。今回は、労務トラブルの原因となりやすい「労働時間」を適正に管理することの重要性をお伝えします。

労務管理の基本は労働時間の適正把握

会社による労働者の労働時間管理が、不適正又はずさん行われていることに起因して労使トラブルに発展するケースは意外と多いです。なぜなら、未払い残業代に関してのトラブルや、長時間労働に起因するうつ病の発症や過労死などに関しても、元をたどれば、会社が、労働者の残業時間などを適正に管理・把握・対応していなかったことが原因であるといえるからです。

 

労務管理の基本、それは労働時間の適性把握といえます。労働時間の管理がしっかり行われていなければ、残業時間の把握やそれに伴う給与計算も正しくできませんし、労働者の健康管理にも支障が出てきます。そのようなことから、国は使用者に対して、労働時間の適性把握を求めていますので、使用者はしっかり労働者の労働時間を管理するとともに把握し、対応しなければいけません。

 

そもそも、ここでいう労働時間とはいかなるものでしょうか。「労働時間とは」に関して、労働基準法に明確な定義がありません。実務的には、判例で示されている、「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」というのが一定の判断基準となります。労働時間をめぐる労使トラブルにおいては、使用者と労働者の間で労働時間に関する認識の違いが起きます。要は、この時間は、労働時間にあたるのか否かという点です。たとえば、就業時刻前のそうじや更衣時間、就業時間後に行われる会議の時間、研修参加時間、健康診断等の受診時間など様々ですが、その中でよく話題にあがるのが、「手待ち時間(待機時間)」と言われる時間についてです。

助手席で交代要員として仮眠している間は労働時間か?

「手待ち時間」とは、使用者の指揮命令下に置かれつつも、所定の労働に従事することなく、いつでも行動に移れるよう就労の為に待機している時間のことを言います。よくあるケースでは、昼休みの電話当番・来客当番の時間、トラックやバスの交代運転手として同乗仮眠している時間(不活動仮眠時間)、運送物流における積み込みや荷降ろしの待機時間などです。

 

これらは、確かに、通常の業務から離れた待機中であったとしても、労働から完全に解放されているとはいえません。例えば、昼休みの電話当番や来客当番の場合、デスクに座って昼食をとっていたとしても、電話や来客があればそれに対応しなければなりません。運送物流における荷下ろし後、次のトラックが到着するまでの待機時間なども、次のトラックが予定より早く到着すれば座る間もなくすぐに荷下ろしを始めなければいけません。そもそも、休憩時間は、労働者の自由に利用させる必要がありますので、このような手待ち時間については、労働者が自由に利用することができる時間とは言えないでしょう。故に労働時間と判断されるケースが多いです。

 

使用者がいくら休憩時間だ、と主張しても実態から労働時間であると判断されてしまえば、その時間に対する賃金支払いが必要になります。後々揉めることのないよう、御社に「隠れ手待ち時間」がないかどうか一度確認してみてください。

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