雇用、賃金・・・労働市場の動向がNZ経済に与える影響

雇用成長率などといった労働市場の動向は、ニュージーランド経済の成長に大きな影響を与えます。今回は、ストラティージック・リスク・アナリシス社のロドニー・ディケンズ氏による、ニュージーランド労働市場についての見解を見ていきましょう。

労働賃金のインフレは低く留まるとの予測もあるが…

今回は、ストラティージック・リスク・アナリシス社のロドニー・ディケンズ氏(マネージング・ディレクター兼チーフ・リサーチャー)の労働市場についての見解を見ていきましょう。

 

 

私の(高齢の)雇用主や準備銀行、経済予測を行う者たち(以降、「経済予測者」とします)による全般的な予測を超え、劇的な伸びが雇用成長にみられます。そして同様のことが労働賃金にも起こるでしょう。

 

NZ準備銀行のウィーラー総裁は過熱労働市場を見て見ぬふりをしていますが、住宅市場、消費支出、住宅建築、外国為替、金利など、幅広い分野を予測するに当たり、労働市場はもっとも過熱状態と言えます。

 

経済サイクルの中で、私たちは今、経済予測者たちの予想を超えたことが起きようとしている段階にいます。事業主やビジネス・マネージャー、投資家にとって、より広く労働市場および経済について質の高い眼識が必要となる重要な時期といえます。

 

実際に何が起きているか分かっていない経済予測者たちに、好況に沸く労働市場が持つ多くの意味についてあまり理解していないでしょう。

 

雇用成長は下記のチャートが示すように、昨年大きく下降した後に劇的な回復をみせました。

 

[図表1]ニュージーランドの雇用成長率

 

これは準備銀行やNZIER(= New Zealand Instituteof Economic Research<ニュージーランド経済調査研究所>)が昨年12月にアンケート調査した9人の経済予測者による平均的な見通しをはるかに上回る伸びです(チャート内、緑色および青色線参照)。

 

これはスタティクス・ニュージーランドの6月期の雇用者数に、これまで対象外であった基地から離れて暮らす軍人が加算されたことが一因ですが、主な要因は経済予想を大きく上回って雇用が成長したことにあります。

 

以前レポートで私が指摘した通り、これまで経済予測者たちは酪農業の所得の落ち込みが経済成長にもたらす悪影響や、金利下落および移住による労働力の過剰供給による雇用成長を必要以上に注視してきました。

 

準備銀行の経済予測者、およびNZIERがアンケート調査を行った銀行のエコノミストらには今労働市場で何が起きているか把握できないため、今後ビジネスおよび投資に関連した分野で何が起きうるかを予測することは不可能でしょう。

 

もしこれについて疑問に感じられる向きは、9月22日のOCR(政策金利)切り下げの際にウィーラー総裁が労働市場について述べたことと、第一線の現場にいる者の見方とを比較してみるとよいでしょう。

 

インフレ予測および適切な政策金利の評価を行う際、労働市場については全く言及していません。このことは、強い雇用の伸びを受けて過熱している労働市場が今後大きな脅威になるとする幅広い筋の見方と全く対照的です。

 

一方、NZIERの9月のビジネスに関する調査では、次四半期には労働者数が上昇すると27%の企業が回答しており、これは過去43年間で最も高い値でした。

 

トニー・アレクサンダー社(TonyAlexander)の8月のビジネス調査では、人材不足が幅広い分野で顕在化していることが判明しました。また、オークランド商工会議所による8月の調査では、回答した48%以上のオークランドのビジネスで人材不足が生じていることが判明しました。

 

第一線からの声は、中期インフレ予測および適切な政策金利の評価に際しては、準備銀行は労働市場に真っ先に焦点を当てるべきとしています。

 

経済予測者は労働賃金インフレが低く留まると予測していますが、昨年後半の雇用成長は緩やかであるとした前回の予測同様に、この予測もまたはずれるでしょう。彼らは前回の過ちから何も学んでおらず、労働市場があたかもインフレへの脅威とはなり得ないという神話を持っているようです。

労働市場の動向把握はインフレ・金利の予測に不可欠

2015年12月、国庫局(Treasury)は2015年~2016年の財政赤字がGDPの0.2%であると予測するも、5月のGDP成長率は0.3%のプラスに修正され、最終的なGDP成長率は0.8%でした(下記図表2参照)。2015年~2016年の結果は国庫局の12月の予測よりも22億ドル多いものとなりました。

 

[図表2]5月のGDP成長率

 

これは主に雇用、消費支出、およびGDPの成長による税収入の伸びに関係しています。労働市場の成長は源泉徴収税を増加させ、また予想されていた以上の消費支出の伸びはGST税(付加価値税)による税収を増やします。

 

そして強い経済成長は法人税による増収をもたらします。これは強い経済の始まりに過ぎず、政府は接戦が予想される来年の選挙戦での勝利を手にするため、この財政黒字をもって支出を増やし、減税に着手することが可能となるでしょう。

 

これが準備銀行および経済予測者らに今後の労働市場および経済の展開を読めなくするもう1つの理由であり、この誰も予測できないという状態は、ローンの借り手、輸出・入業者、投資家、小売業者、建設業者、そしてビジネスサービス業を生業とする幅広い会社(弁護士事務所、会計士事務所、コンサルティング業者など)に大きな影響を与えます。

 

為替レートが準備銀行および多くの経済予測の予想を大きく外れるとすれば、輸出・入業者にとっては重大なことです。

 

準備銀行および経済予測者らが労働市場で起きていることを予測できないのであれば、金利、為替を予測することは不可能でしょう。また同じ理由で、住宅価格、消費支出、住宅建設についても予測は行えないでしょう。

 

経済予測者が予測を苦手とする分野に、政治的影響を受けやすい住宅建設があります。住宅建設の伸びとGDP成長率とは強い相関関係にあるため重要であり、住宅建設についての予測は、労働市場、金利、そして為替にとって重要な意味合いを持ちます。

 

もしビジネスまたは投資で利益を得たいのなら、最良の経済予測分析を得ることです。経済と雇用の成長予測が準備銀行や経済予測者たちの予測をはるかに上回っていること、そして両者が酪農業の所得の落ち込みが及ぼす悪影響に傾倒し過ぎているとする指摘も含め、これまで警鐘を鳴らしてきたのは私だけでした。私がそうできたのは偶然ではありません。それは私が経済の原動力について質の高い分析を行っているからです。

 

労働市場がそれほど重要な理由とは何でしょうか。現代経済における労働賃金は、平均的な企業の場合、生産費(または製造原価)の最も多くを占めており、そのためインフレおよび金利を予測する上で最も重要な位置付けにあります。

 

労働者の収入は経済の収入に占める割合が最も高く、消費者支出の成長にとって大変重要であるにもかかわらず、経済予測者はこれをあまり理解できていません。

 

 

労働市場の成長、そしてそれに関連した消費支出の成長は、政府の財政を押し上げ、接戦が予想される選挙年でもある来年の経済成長へ向けた財政出動の礎となるでしょう。来年、財政出動を行う可能性は高くあります。それにより更なるインフレ圧力が高まると予想されるでしょう。

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Goo Property JP(TERRY’s WAY株式会社) 代表取締役社長

1992年、奈良県天理大学中退。1993年、個人輸入代理店を起業。ITシステム開発会社のジョイントベンチャー設立などを経て、2003年、グルメデリバリーシステム株式会社(現:Terry’s Way株式会社)を創業。自ら開発した富良野メロンパンの移動販売を手掛け、2004年よりフランチャイズ募集を開始(2007年、100加盟店を達成)。現在は、Terry’s Way株式会社 FOOD事業部として展開中。

2009年、富裕層向け国際会計サービス HENRY INVESTMENT SERVICES pte.ltdを元PWC国際会計士と共同設立(本社:シンガポール)。海外金融サービスや投資スキームのコンサルティングサービス、富裕層開発のマーケッターとして、顧問社数は現在200社を超える。2014年より、海外投資サービスの一環として海外不動産投資のリサーチを開始。2015年、ニュージーランド不動産投資コンサルティングサービスを開始し、GOO Property NZ LimitedをNZ不動産エージェントと共同設立。GOO Property ジャパン (Terry’s Way株式会社)と共に不動産投資コンサルティングサービスを行う。
WEBサイト http://gooproperty.com/

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