前回は、経験・年齢不問、資格も不要な 「不動産屋の仕事」の実情について説明しました。今回は、不動産仲介業者が「収益」を得るしくみを見ていきます。

部屋を借りる際の「礼金」は不動産屋に渡っている!?

お部屋を借りたことがある人はわかると思いますが、契約時には必ずといっていいほど敷金と礼金が必要になります。敷金は、大家さんが受け取る預り金で、家賃や光熱費等が未払いになったときのためのデポジットです。

 

一方、礼金は誰がもらうのでしょうか。大家さんへの謝礼金? 違います。礼金は、関東地方、とくに東京近郊では、いったん大家さんが受け取りますが、そのあと名前を変えて「広告料」という名目で不動産屋に渡ります。

 

昔は、普通の住居なら敷金は家賃2カ月分、礼金も家賃2カ月分という額が相場でした。その礼金は、大家さんと不動産屋で1カ月分ずつ折半したものです。しかし現在では通常、敷金1カ月、礼金1カ月がほぼ常識となっています。そのため大家さんの取り分がなくなり、ほとんどを不動産屋がもらっているのです。

 

お部屋を借りるとき、不動産屋に仲介手数料を支払っていることはすでにご存じでしょう。不動産屋は仲介手数料という名目でお客様から家賃の1カ月分(+消費税)を受け取っています。そこに、さらに広告料として家賃1カ月分が上乗せされることになります。

 

つまり、物件の賃貸が決まると、大家さんは敷金1カ月を受け取り、不動産屋は仲介手数料1カ月+消費税と広告料(元は礼金)1カ月を受け取ることで、大家さんの2倍も受け取っていることになるのです(不動産屋1社で決めた場合)。

 

これだけ聞くと、「不動産屋は悪徳」と思われがちですが、物件を紹介するためには、図面を作り、物件の詳細を調べなければいけません。所有者確認や抵当の有無、ライフラインの状況、部屋のコンディションや、区分所有マンションならマンション規約等を調べ、管理会社の住所や連絡先等も図面や重要事項説明書に記入しなければいけません。また、早く物件の賃貸契約を決めたいと思えば新聞折り込みや郵便受け等への投函を行うなど、それなりに経費がかかることになります。

 

不動産屋の法律である宅地建物取引業法(宅建業法)においても、物件を預かれば指定流通機構システムへの登録や、大家さんへの定期的な報告などの義務があります。不動産屋側もそれなりにやることが多く、調査や広告に経費もかかるため、大家さんから広告費の名目で契約時に礼金をバックしてもらうことが慣習となっているのです。

 

慣れてしまえば、勝手知ったるマンションの調査など朝飯前ですが、広告費をもらうことで、物件への入居後に何かトラブルがあった場合、大家さんの求めに応じてスクランブル発進よろしく飛んでいかなくてはいけません。契約後に何か問題があれば相談に乗ることも、広告費の対価となっているわけです。

仲介手数料は家賃の1カ月分と規定されているが・・・

よく不動産屋の間では「片手しかない」「両手になった」などと言います。

 

不動産の仲介においては、賃貸でも売買でも、直接大家さん売主から物件を預かっている不動産屋のことを元付け業者といいます。それに対して、入居者を募集している物件にお客様を付けた不動産屋のことを客付け業者といっています。契約に至れば、それぞれの業者は物件の所有者から手数料、お客様から手数料をもらいます。これを「片手」といいます。一方、元付け業者が自分でお客様を見つけて契約に至った場合は、双方から手数料をもらうので「両手」となります。

 

大家さんもお客様も手数料を払うわけですが、宅建業法において仲介手数料は、賃貸なら大家さんからとお客様からとを合わせて家賃1カ月分(+消費税)と規定しています。

 

しかし、元付け業者と客付け業者がいる場合や紹介の業者などが絡んでいる場合もよくありますので、仲介手数料だけでは経費も出ない取引もあるのです。その場合は、宣伝広告費や企画料等の名目で、売主・貸主さんにその経費分を負担していただくわけです。当然、最初に決められた金額ですので、売主さん貸主さん承諾のうえでの話です。

本連載は、2016年10月21日刊行の書籍『誰も知らない不動産屋のウラ話』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

誰も知らない不動産屋のウラ話

誰も知らない不動産屋のウラ話

川嶋 謙一

幻冬舎メディアコンサルティング

“ディープタウン新宿"の不動産会社社長が業界のアブナイ裏話を一挙公開! 「学歴ナシ」「若さナシ」「経験ナシ」「金ナシ」でも儲かる仕組み、意外な慣習とは── 2回の自己破産を経験し、ありとあらゆる職業を渡り歩いて…

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