前回は、顧客の信頼を得る「営業マン」になるための秘訣を紹介しました。今回は、自社の営業マンが「育たない」本当の理由を見ていきます。

仲間である部下をわかろうとする気持ちもなく…

正直に告白すると、私も「いい営業マン」ではありませんでした。成績的には優秀だったと思いますが、人間的には全然ダメでした。

 

リフォーム業界に飛び込んだ頃は仕事を辞めたいという気持ちがどこかに常にあり、その気持ちをお金でごまかしていました。お客様のためにという真摯な気持ちで取り組むのではなく、インセンティブに翻弄された生活を送っていました。

 

稼ぎは20代としてはかなりよかったほうですが、稼げば稼ぐだけ生活は派手になり、大きな借金を抱えたこともあります。

 

普通、ひと月あたり20万円の給料で生活している人が100万円の給料になれば、本来なら80万円は貯金できるはずです。

 

しかし、実際にそうなってみるとやっぱり100万円の生活をしてしまうのです。80万円の貯金どころか、インセンティブ制ですからもっと稼げばいいと簡単に借金までしてしまうのです。そうやって破滅していく同僚を何人も見てきました。

 

私が彼らと同じ運命をたどらずに済んだのは、仕事を辞めずにやり続けたからです。途中で辞めていたら借金だけが残って・・・どうなっていたでしょう。

 

仕事が面白いなと感じ出したのは、自分のチームを持ってからです。部下ができて、マネジメントをするようになって半年ほどした頃、お金だけでは満たされなかった何かが満たされていると感じるようになりました。

 

部下のマネジメントをする中ではうまくいかないことのほうが多く、挫折を何度も味わいました。しかし、それが仕事をするうえでの、お金ではない活力になっていたのです。

 

一人で営業していたときは自分が頑張れば結果もついてきたものですから、慣れていくうちにそれが当たり前になり、手応えがないというか、「なんだこんなものか」と感じることが増えていました。

 

ところが、チームリーダーになると、他のチームに全然勝てないのです。毎月毎月、メンバーを叱咤激励するのですが売上が振るいません。

 

「おかしいな。なぜだろう」と答えが出ない日々が続きました。営業時代は常にトップだったのに、リーダーを任されたときも「やってやるぞ」と強い気持ちで臨んだはずなのに、蓋を開けてみると、トップどころか上位にもなれません。

 

その原因は、他でもない私自身にありました。当時の私は売れない営業マンの気持ちが全くわからなかったのです。

 

ですから、自分の仲間であるはずの部下に向かって、「やる気がないなら辞めてしまえ」などということを平気で言っていました。数字を出せないメンバーをフォローするどころか、わかろうとする気持ちもなく、ただ厳しく追及するのみだったのです。

 

今思えば、自分の営業スタイルを部下に押しつけ、ダメ出しばかりして、一人で空回りしていた気がします。そのときは、部下のことを「自分の成績を伸ばすための駒」くらいにしか思っていなかったかもしれません。

 

そんな強引なやり方ですから、メンバーがついてくるはずもありません。形だけのチーム、形だけのリーダーになっていました。

 

とはいえ、私の愛のないスパルタでも、何とか全店でベスト3に食い込めるくらいのチームにはなっていきました。だから余計に、私は自分のやり方が間違っていることに気づきませんでした。

「自分の部下を何人辞めさせたら気が済むんだ」

気づかせてくれたのは、当時の社長です。幹部会議のとき、みんなの前で立たされて、「お前、もうクビだ。辞めていいよ」と突然言われたのです。私としては頑張っているし、チーム成績も上がってきていたので、てっきり褒められると思っていました。それが真逆のことを言われ、一瞬、頭が真っ白になりました。

 

その理由を聞いてみると、「お前は自分の部下を何人辞めさせたら気が済むんだ」と言われました。私のチームから辞めていく営業マンが断トツで多かったことを、そのとき初めて知りました。

 

そして、「この前辞めた○○さんの家族構成を言ってみろ」という質問に、私は答えられなかったのです。彼の年齢が55歳くらいだったことは知っているのですが、それ以上の個人的なことは何もわかりませんでした。

 

すると社長に「彼には奥さんと、高校生と中学生の子どもがいるんだぞ。この年代の子どもが2人もいて、どれだけ学費や生活費がかかるかわかるか」と言われました。そのとき私は20代でしたから、子どもの学費など知る由もなく黙っていると、「もういい。出て行け」と会議室から出されてしまいました。

 

私は反省するより怒りが先に来て、「辞めてやるよ!」と内心思いながら言われるがまま部屋を出たのですが、後から冷静になって考えてみると、「そういえば、自分の部下に興味がなかったな」と思い至りました。

 

辞めたら次が入ってくるだろう、という程度の感覚で、人間として彼らを見ていなかったと気づきました。

 

それが自分の独りよがりに気づいたきっかけです。今だから言えますが、営業マンが育たないで辞めていくという場合、その原因の多くはリーダーにあると思います。

本連載は、2016年10月28日刊行の書籍『見込みゼロ客をヘビーリピーターに変えるスゴい営業の仕組み』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

見込みゼロ客を ヘビーリピーターに変える スゴい営業の仕組み

見込みゼロ客を ヘビーリピーターに変える スゴい営業の仕組み

武蔵原 一人

幻冬舎メディアコンサルティング

「受注が取れない」「売上も伸びない」「営業マンは辞めていくばかり」――負のサイクルを断ち切り、激化する顧客争奪戦を勝ち抜くカギとなる「見込みのない顧客をリピーターに変える仕組み」づくりを3ステップで徹底解説しま…

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