前回は、減価償却がどのような考え方のもとに成り立っているかを説明しました。今回は、その続きとなりますが、減価償却資産の耐用年数などについても見ていきましょう。

「減価償却資産」を取得する理由は何か?

個人や法人が減価償却資産を取得する目的は、その資産を使って収入を得ることです。減価償却では、資産の取得に投下された資金(=購入にかかったお金)が、その法定耐用年数の全期間を通じて回収されていくことが税法上の前提として考えられます。回収できなければ、その分が損になってしまいます。

 

その前提に立てば、減価償却資産の取得にかかったお金は、取得時に全額を経費・損金
とするのではなく、法定耐用年数の各課税期間に経費・損金として配分していくことになります。

 

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やや難しい言い方になってしまいましたが、要するに100万円で買った償却資産が耐用年数5年であれば、20万円ずつ5年に分けて経費・損金を計上したりする、ということです(配分の仕方は等分に限りません)。

 

[図表]原価償却は帳簿上で経費を分割計上する
[図表]原価償却は帳簿上で経費を分割計上する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここまでをまとめると、減価償却とは、減価償却資産の取得に要した金額を一定の方法によって各課税期間の経費・損金に配分していく手続きといえます。

 

新築の賃貸用アパート(鉄筋コンクリート造)を例に整理しましょう。

 

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自分の土地に、RC造アパートを5000万円で取得したとします。ここまで述べてきたとおり、「5000万円」という現金が賃貸アパートの建物に形を変えたわけですが、その全額が一度に所得計算上の経費や損金になるわけではありません。

 

この場合のRC造アパートの法定耐用年数は47年です。所得計算上の経費や損金になる減価償却費は、5000万円を47年かけて均等に償却していくことになるので償却率は0.022、1年間に計上する費用=償却費は「5000万円×0.022(償却率)=110万円」です。建物の取得価額の47分の1相当額が経費や損金になり、帳簿価額が1円になるまで47年にわたって償却できることがわかります。

土地や骨董品は減価償却できない

減価償却資産の法定耐用年数が資産ごとに画一的に定められているのは、納税者間の公平性を保つためです。資産が使える期間を納税義務者の見積もりに委ねた場合、納税義務者の事務負担になってしまうことや、同一の資産でも人によって耐用年数がバラバラになってしまい、結果として課税の公平が損なわれる恐れがあるのです。減価償却資産の法定耐用年数については、その資産の物理的使用可能年数や技術革新等の機能的な陳腐化等を総合勘案したうえで定められていると考えられます。

 

さて、減価償却がどういう制度であるか、ざっと解説してきましたが、ここで一つ質問です。土地や骨董品は減価償却できる資産でしょうか。答えはNOです。

 

なぜなら、土地も骨董品も、時間が経過することで価値が減っていくものではないからです。いくら高額な資産だとしても、経費や損金を何年にもわたって配分することはできません。どういった資産が、どのような理由で減価償却されるのか、大まかにご理解いただけたでしょうか。

 

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    本連載は、2014年4月25日刊行の書籍『スゴい「減価償却」』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

    本連載の内容に関しては正確性を期していますが、内容について保証するものではございません。取引等の最終判断に関しては、税理士または税務署に確認するなどして、ご自身の判断でお願いいたします。

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