前回は、自分に合う保険に加入するために、どの程度時間を要するのかを説明しました。今回は、高額商品である保険を選ぶ際の留意点を改めて考えてみます。

保険はいわば「人の命」の買い物

保険は目に見えませんし、その手で触れることもできません。その目に見えない、まるで空気のようなものに対して、お客様は1カ月当たりそう安くはない保険料を支払うことになります。

 

ほとんどの皆さんはあまり意識したことがないかもしれませんが、10年、20年と支払い続けることを考えると、その支払い総額は驚くような金額になっているはずです。

 

よく、保険は家の次に高い買い物だなどと言われますが、家は形が残りますけれども、保険には形がありません。役に立つ保険ならよいのですが、そうでなかった場合、保険は人生で一番高い買い物と言えるかもしれません。

 

おそらく、車を買うときのほうが皆さんももっと熱心に検討しているでしょう。車種は何にするのか。車を買う目的は何か。日々の買い物に使うのか、長距離移動に使うのか。運転するのは家族の誰が中心か。何人乗れるのか。荷物はどれぐらい積めるのか。

 

ファミリータイプか、スポーツタイプか。保険や税金など、維持費はどれぐらいかかるのか。カタログを取り寄せ、インターネットで情報を集め、車の性能を検討し、燃費を計算するでしょう。ディーラーで試乗して、見積もりを出してもらい、支払いが可能かを検討します。

 

それ以外にも車体の色、車内のインテリアやオプションなど、実際に買うまでに家族で話し合うことは山のようにあります。

 

気付いてください! 保険は車よりも高額の商品です。

 

ディーラーに行って、フェラーリやポルシェをその場でポンと買う人はよほどのお金持ちです。普通だったら、何度もディーラーに通って、検討を繰り返して購入を決断するはずです。

 

保険も同じです。何度も話し合って、納得して決める。このプロセスは外せません。しかし、驚くことに死亡保険には未加入なのに、自動車保険には対人・対物無制限、数百万円の車両保険に加入している方も「ザラ」です。

 

何度も何度も言いますね! フェラーリより、ポルシェより、人の命のほうが高いのです。大切なのは皆さんの命であり、ご家族の未来です。

 

どんなに時間をかけてお客様と話し合っても、私たちにとっては1円の収入にもなりません。保険を募集しなければ、保険会社からの手数料収入は得られないからです。

 

売り上げだけを考えるのであれば、もっと簡単に、効率的に、それこそ売り上げ上位の保険を提案するとか、雑誌で取り上げられたランキング上位の保険を提案するとか、お客様が欲しいという商品だけを提案したほうが、楽に保険募集ができるに決まっています。コミッションパワーで動くプランナーなら、そうかもしれません。

 

それでも、プランナーが時間をかけてお客様から話を聞くのは、ひとえにお客様にベストなプランを提案したいからです。お客様に、保険のことで後悔してほしくないからです。ですから皆さんも、保険と真剣に向き合いましょう! そして「役に立つ保険」にお金を払うのです!

自身が加入している保険の意味や役割を覚えておく

あるとき、こんなお客様がいらっしゃいました。ご夫婦で来店したお客様でしたが、ライフプランについていろいろと話をしている最中に、奥様がお手洗いへと席を立ちました。ところがなかなか戻ってきません。

 

しばらくして、目を真っ赤にはらして戻られた奥様に事情をうかがうと、このようにおっしゃいました。

 

「ライフプランを考えているうちに、夫が亡くなるときのことを初めて想像しました。そうしたら涙が止まらなくなってしまったのです」

 

私にとって、とても印象的な出来事でした。なぜなら、お客様がこれほど真剣に保険について考えてくださるというのは、保険を扱う者として冥利に尽きるからです。

 

こんな経験をしたプランナーもいます。かつて自分が担当して保険に加入してくださったお客様が、保険の見直しのために来店しました。

 

見直しについて話をしていると、保険に加入したのはもう何年も前だったにもかかわらず、お客様はご自身が加入している保険の意味や役割をしっかりと覚えていてくださっていたといいます。

 

これも、プランナーにとっては嬉しいことです。加入時に時間をかけてプランニングを行った、それが決して無駄ではなかったことが実感できる場面だからです。お客様は、汗水流して働いた給料の中から保険料を払ってくださっているのです。それが無駄になっていないということを私たちが確認できる瞬間なのです。

 

そういった経験をする度に、私たちプランナーは改めて、お客様のためにベストなプランを作ろうと、キリッと心を引き締めるのです。

本連載は、2015年6月26日刊行の書籍『死亡保険金は「命の値段」』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

死亡保険金は「命の値段」

死亡保険金は「命の値段」

杉山 将樹

幻冬舎メディアコンサルティング

命とお金に関わる保険は、生きている限りほとんどの人にとって必要不可欠な金融商品ですが、近年、その種類や保障内容が多様化・複雑化しています。 加入者は要望に合わせて自由に保険を選べるようになったものの、その選び方…

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