今回は、がん治療の苦痛を緩和する「緩和ケア・支持療法」とは何かを見ていきます。※本連載は、生命保険の専門家であり、自身も医師として活躍する佐々木光信氏の著書、『比較検証、がん保険 』(保険毎日新聞社)の中から一部を抜粋し、近年長足の進歩を遂げている「がん医療」の種類と変遷を紹介します。

在宅での療養生活の維持向上などを目指す

がん対策基本法(基本法)が施行されたのは、2007(平成19)年4月1日になります。基本法の第9条第1項に「がん対策推進基本計画」(基本計画)の策定が定められ、5年ごとに見直しすることも規定されています。

 

これまで、平成19年そして2012(平成24)年に基本計画が策定されたわけですが、平成19年6月に公表された計画では、重点的に取り組むべき課題の2番目に「治療の初期段階からの緩和ケアの実施」が明記されています。

 

「がん患者の状況に応じ、身体的な苦痛だけでなく、精神心理的な苦痛に対するこころのケア等を含めた全人的な緩和ケアの提供体制の整備」や「がん患者の在宅での療養生活の維持向上を図るため、在宅医療と介護を適切に提供していく体制を整備」と明記されています(以下図表1参照)。

 

[図表1]がん対策と緩和ケア

 

これまで、「緩和ケア」という用語は、「ターミナルケア」を意味する用語として捉えられる印象があるので現在では、支持療法という用語も使用されるようになっています。

 

「緩和ケア」「支持療法」は患者の生活の質を改善する療法・ケアを意味し、身体的なケアのみならず精神的、スピリチュアルな面も含む広範な概念です(以下図表2参照)。

 

[図表2]緩和ケア・支持療法

抗がん剤の副作用や、痛みを緩和する「支持療法」

一方、実際の支持療法という表現は、抗がん剤治療後の副作用を抑える治療やがんの疼痛治療を意味する用語として用いられることが多いのが事実です(以下図表3参照)。

 

[図表3]一般的な支持療法

 

基本計画にあるようにターミナル段階のみならず、療養の初期から実施されることを考えれば、「緩和ケア」の用語を、「ターミナルケア」を意味する給付金の商品名に用いることは慎重に考える必要がありそうです。また、支持療法についても、疼痛治療や薬剤の副作用に対する治療に限定して民間保険の商品名に使用することは検討が必要でしょう。

 

細かいことですが、用語の使用を考えながら基本計画に合致する民間保険のサービス提供を考えなくてはなりませんね。

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    佐々木 光信

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