ノベル版『女騎士、経理になる。』~第2章その①

幻冬舎コミックス運営のWEBマンガ雑誌「デンシバーズ」と幻冬舎ゴールドオンラインによる特別コラボ企画。デンシバーズの好評連載『女騎士、経理になる。』の原作小説で、2016年6月24日に発売された単行本『女騎士、経理になる。①鋳造された自由』のプロローグと第1章、第2章、第3章を無料公開します。今回は第2章「ガバメント・オブリゲーション」その①です。

▼港町、銀行家の邸宅

 

幼メイド「だんなさまぁ~! たいへんですぅ~!」

 

トテトテ……

 

黒エルフ「ちょっと。廊下を走るとコケるわよ」
メイド「あっ、ダークエルフさん! だんなさまはどちらでしょう?」

 

黒エルフ「書斎だと思うけど……いったいどうしたの?」
メイド「じつは、こんなお手紙が届いたのです!」

 

黒エルフ「え? この手紙は……!?」

 

▼書斎

 

銀行家「女騎士さんがいらして2ヶ月、不良債権は着実に減っているようですね」
女騎士「うむ。私の友人の力だ」

 

銀行家「ご謙遜は要りません。借金を取り立てるだけではなく、経営再建を手伝っているのでしょう。とても好評ですよ」

 

女騎士「肉屋のようなお店がたくさんあったのだ」
銀行家「そうだ! 女騎士さん、私塾の講師になりませんか?」

 

女騎士「講師?」

 

銀行家「私の主宰で、芸術家を育てる私塾を開講する計画があるのです。そこで簿記の授業をなさっては?」

 

女騎士「い、いや」
銀行家「ご報酬は弾みますよ」

 

女騎士「私は……」
女騎士(簿記2級レベルなのだが──!?)

 

銀行家「私塾には、あらゆる時代、あらゆる場所の芸術品を集める予定です。 すでに少しずつ買い集めているのです!」

 

女騎士「ほう。では、その机のうえの彫像も?」
銀行家「はい! これはおよそ8千年前に作られた『精霊の像』です。どうです? 見てください、この曲線美を……」ウットリ

 

女騎士「銀行家さんがそのように熱弁をふるうとは……。見るからに高価そうな彫像だ。よくぞ番頭さんが購入を許したな」

 

銀行家「……じつは、まだ話していません」
女騎士「え」

 

銀行家「この計画は番頭には相談せずに進めています。バレたら叱られちゃいます」てへっ

 

女騎士「ぎ、銀行の経営は?」
銀行家「よろしく頼みます」ガシッ

 

女騎士「」

 

女騎士(銀行家さんが芸術好きなのは知っていたが、まさかここまでとは……)
女騎士(世界中の芸術品を買い集める、か……)

 

女騎士(この計画を知ったら、怒るのは番頭さんだけではないぞ。きっと、あのダークエルフも頭から湯気を立てて怒るはず!)

 

銀行家「ダークエルフさんがどうかなさいましたか?」
女騎士「た、ただの独り言だ」

 

銀行家「そうですか。できればあの方にも講師をお願いしたいところですが……。とにかく、芸術を志す若者たちを世界中から呼んで、この港町を文化の中心地にしたいと考えています」

 

女騎士「はあ」

 

銀行家「さあ、ともに美を探究しようではありませんか! さあ……さあ! ぜひ私塾の講師になってください!」ズイッ

 

女騎士「い、いや……私は、えっと……」

 

黒エルフ「失礼するわよ!」
幼メイド「するのです!」

 

女騎士「おおっ、ちょうどいいところに! 助かった!」ホッ
黒エルフ「……助かった?」

 

女騎士「いや、こっちの話だ」
黒エルフ「あら? その彫像は……?」

 

銀行家「よくぞ訊いてくれました! これは──」
女騎士「わーっ!」

 

黒エルフ「?」
女騎士「そ、そんなことより、何か用事があったのではないか?」

 

幼メイド「そうなのです! じつはお手紙が届いていたのですよ~」
銀行家「手紙ですか……?」

 

幼メイド「だんなさま宛てのお手紙を読むのもわたしのお仕事なのです!」えっへん

 

銀行家「読むに値する手紙ばかりではありませんからね。信用できる使用人に先に読ませて、くだらない広告のたぐいは捨てさせています。さて、この封蝋は……人間国政府のものですね」

 

銀行家「ふむ……。どうやら国債の新規発行が決まったようです」
女騎士「戦費を調達するためか」

 

銀行家「ええ。各地の豪商や銀行に、あらかじめ政府の側で決めた金額を購入するように勧告しています」

 

ぴらっ

 

女騎士「うっ……すごい金額だ。しかし、払えぬほどではないか」
黒エルフ「ダメよ」

 

女騎士「国債の購入とは、つまり国に対してカネを貸すのだろう? 安全な資産運用だと聞くが……」

 

黒エルフ「時と場合によるわ。政府の収入を増やす手段は2つ。増税するか、戦勝国として賠償金を取るか……。つまり、今回の国債は、戦争に勝つまでカネを返すあてがないってことでしょう」

 

幼メイド「もしや、人間国が負けるとお考えなので~?」

 

黒エルフ「……いいえ。でも、終戦より先に政府が破産して徳政令を出す可能性はあるわ」

 

幼メイド「とくせいれい?」
女騎士「借金をチャラにする政令のことだ」

 

黒エルフ「その手紙に書かれた金額の国債を購入するのはリスクが高すぎるのよ」

 

銀行家「待ってください。手紙に続きがあります」
女騎士「続きだと?」

 

銀行家「精霊教会も今回の戦時国債の購入を予定しているのですが、その取引を仲介する銀行を募集しているそうです」

 

女騎士「政府と精霊教会との取引なら、金額は莫大なはず」
黒エルフ「仲介業者に選ばれれば、手数料をたんまり受け取れるでしょうね」

 

カキカキ……

 

 

黒エルフ「この手紙の内容をまとめると、こんな感じね。……国債の購入には、あたしは反対よ。もしも買うとしても、もっと少額にすべきだし、精霊教会の取引の仲介業者に選ばれて、手数料を受け取らないとワリに合わないわ」

 

銀行家「国債の購入金額を変更したい場合や、仲介業者候補として応募する場合は、期日までに帝都に行かなければなりません」

 

女騎士「政府に直接嘆願すれば金額を変更できるのだな。……それで、期日は?」
幼メイド「明後日なのです~」

 

黒エルフ「横暴よね。帝都まで6日間はかかるのに……」

 

銀行家「期日に間に合わない以上、勧告された額の国債を買うしかないのでしょうか……?」

 

黒エルフ「ダメよ! そんなの絶対にダメ!」

 

女騎士「ふむ。明後日までに帝都に行く方法か……」

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女騎士、経理になる。 ①鋳造された自由

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原作:Rootport,イラスト:こちも

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