今回は、血のつながらない「夫と前妻との子供」に財産を相続させる方法を説明します。※本連載は、弁護士・武内優宏氏の著書『おひとり様おふたり様 私たちの相続問題』(セブン&アイ出版)の中から一部を抜粋し、「おひとり様」の相続を巡るさまざまなトラブルを、具体的な事例を取り上げて解説します。

良好な「夫の前妻の子供」との関係

【case4】夫の前妻との子供にも自分の財産を相続させたい

 

●相談者:田中咲子(仮名72歳)

●被相続人(予定):本人(配偶者故人)

●相続人:長兄の子(甥1人、姪1人)、次兄、妹に

●相続財産:自宅マンション、預貯金、株、ゴルフ会員権

 

相談者の田中咲子さんは、61歳になった定年退職を機に、かねてから内縁関係にあった男性と熟年結婚をされました。それから、十余年が経ち、先日、夫は80歳で亡くなり、現在は一人暮らしをしています。

 

夫には前妻との間に2人の子供がおり、夫が存命のときから、よく田中さん夫妻の自宅へ遊びにきていました。

 

また、前妻の子供たちは、夫が病気で入院しているときも、葬儀のときも、なにかと田中さんを支えてくれました。もちろん、夫が亡くなったあとも、遺産相続でもめることはありません。初婚で子供もいない田中さんは、前妻の子供との関係もよく、「いずれ、自分が亡くなったら、この子たちに財産を譲りたい」と考えています。

 

ただ一つ田中さんには危惧があり、「自分の実子ではないから、もし自分が亡くなれば、財産は兄弟や甥姪のもとへ行ってしまう。前妻との子供たちに財産を遺すにはどうしたらいいのでしょうか?」とご相談にいらっしゃいました。

「養子縁組」する方法もあるのだが・・・

「もし、自分が死んだら、夫と自分が築いた財産を夫の前妻との子供に譲りたい。でも、なにもしなければ、自分の兄弟姉妹、甥姪に相続されてしまう。どうしたらいいのでしょうか?」

 

熟年結婚をされていて、実の子供がいない場合、田中さんのようなケースの相談を受けることがあります。まず対策の1つ目としては、夫と前妻との間の子供と「養子縁組」をすることです。

 

田中さんと夫は婚姻関係でしたが、夫と前妻との子は田中さんの子ではありませんので、相続権がありません。しかし、田中さんが前妻との子供と養子縁組をすれば、子供たちは第1順位の相続人になるので、田中さんが亡くなったあと、財産は前妻との間の子供たちが相続することになります。

 

ただ、私は、養子縁組という方法はあまりおすすめしていません。理由は、養子縁組を解消するのが大変だからです。万が一、今後、前妻の子供たちとの関係が悪くなったとしても、一度決めたことを簡単には翻すことができません。

 

いざ養子縁組を解消しようと思っても、縁組を解消してしまえば子供たちには田中さんの遺産を相続できなくなりますので、反対してくる可能性だってあります。養子縁組をする場合は、よく考えたうえで行うようにしてください。

 

2つ目の対策は、遺言書を作成し、「遺贈」することです。遺言を作成しておけば前妻の子供へ財産を遺すことができます。遺贈された人は「受遺者」と呼ばれます。田中さんのケースでは、前妻との間の子供2人が受遺者になります。

 

遺贈には「特定遺贈」と「包括遺贈」の2種類があります。「特定遺贈」は、特定の財産を指定して遺贈する方法です。「包括遺贈」は、財産の割合を指定して遺贈する方法です。

 

田中さんの場合、生前にどちらかの遺贈を選び、遺言書を作成しておくことで、前妻の子供たちに財産を遺すことができます。2つのうちどちらかの方法を使えば、田中さんの希望を実現することができますので、心配することはありません。

本連載は、2015年3月1日刊行の書籍『おひとり様おふたり様 私たちの相続問題』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

おひとり様おふたり様 私たちの相続問題

おひとり様おふたり様 私たちの相続問題

武内 優宏

セブン&アイ出版

「自分が死んだあと、親族に迷惑は掛けたくない」。高齢者のおひとり様の相談では、口をそろえて皆さんがおっしゃいます。その不安を取り除くには、法律の知識を用いてさまざまな対策を考えて、実行していくしかありません。兄…

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