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連載ビジネスに役立つ「アジア流交渉術」〜中国・インド編〜【第4回】

「中国企業」とビジネス交渉する際の留意点

アジア中国

「中国企業」とビジネス交渉する際の留意点

今回は、「中国企業」と交渉する際に気をつけることを見ていきます。※本連載は、世界4カ国で20年もの経営経験をもつ平沢健一氏の著書『アジアビジネス成功への道』(産業能率大学出版部)の中から一部を抜粋し、中国・インドでの交渉術や、勝ち抜くためのノウハウを紹介します。

常に「情報の裏を取る」ことを心がける

今回は、交渉の前提となることについて見ていきます。

 

①中国人は時間延ばしの名人

 

ほぼ中国の全省を回り、いろいろな地方の中国人と交渉してみて思うことは、彼らの交渉スタイルに惑わされてはいけないということです。日本人、欧米人と比べて、彼らの一方的な質問と要求の嵐に閉口したことが多かったです。

 

特にビジネス交渉ではなおさらです。彼らの言っていることを辛抱して傾聴し、まず、その中で誰が決定権者かをしっかり探ることが大切です。

 

また、日本人とは全く異なる時間感覚に注意しましょう。中国人は時間こそ金であり、効率であり、勝利であると信じています。さらに長いスパンで物事を考えようとし、時間延ばしの名人です。

 

歴史問題などの反日教育もあり、日本人に対する中国人の不信感は一般的に欧米人に対するよりも相当大きいのです。赴任時に「中国人は相手国によって交渉スタイルを変えてくるから注意しろ」と香港で財をなした中国人に言われました。

 

豊かになってきた最近の中国でも、日本人に対して傲慢な対応をする人もまだまだ多いですから、中国人とのビジネスはいかにして信頼されるかが極めて重要で、人間関係づくりが大切です。

 

②相手を知る

 

相手の日本人がどの程度の人間か、観相術が好きな中国人はまず相手を値踏みしてきます。改革開放の前は国営企業の中で集団生活を送っていましたから、集団内の噂やねたみ、そして告発などが極めて多かったため、こうした習慣は今でも残っており、厄介なことを引き起こしやすいのです。

 

それだけに企業内でもこのような風潮は健在で、こうした事情を考えながら行動してくることに注意が必要です。

 

日本企業内の中国人幹部にうまく乗せられ、あげ句にその企業の日本人社長からひんしゅくを買うなどということも起こってしまいます。常に裏を取り、事の顛末を書き出して証拠を残す習慣をつけましょう。これが後々役立つことが多かったのです。

中国企業との交渉では「三段論法」が有効

③論理的な回答の重要性

 

外国人との交渉では「積極的な傾聴」が極めて重要で、相手の質問は徹底的に聞き漏らさないことを肝に銘じましょう。時には文書にして確認を怠らないことです。

 

彼らは時間をかけて質問し、その後、得た回答を実によく分析して、その上で相手に威圧をかけてきます。だからこそこちらも論理的なコミュニケーションを心がけ、質問をしていくことが必要です。

 

話の途中で、「なぜ?」「根拠は?」「理由は?」「裏付けは?」「論点は?」「結論は?」など、相手の論理の整合性を確認していきます。議論がかみ合い、互いの考え方が分かり合えたら論理的に回答をしていきます。

 

その際は、三段論法が有効です。結論の序論から入り本論(根拠や理由を3種類くらい用意)を述べ、最後に結論でしっかり決めていきます。

 

中国の人たちは「起承転結」という日本流の言い回しは大嫌いだと思った方がよいでしょう。既知の事柄から思考によって未知の事柄が正しいことを導こうとする「推論による問題解決法」に帰納法と演繹法がありますが、中国人との交渉は演繹法に限ると思った方がよいと思います。

 

ただ、中国人の個人差は日本人の比ではありませんから、相手をよく観察して、それぞれの違いに合わせて対応していかなくてはなりません。

 

④どう喝や不意打ちに応じない

 

下記の図表は、中国人のケンカの概念を表しています。

 

[図表]中国人のケンカの概念

 

私の中国ビジネスの師匠がよくアドバイスしてくれました。「中国人と良いケンカをしなさい。日本人はおとなしすぎる」。中国の人とは激しいビジネス交渉を重ねましたが、このアドバイスが生きました。

 

たくさんのリストラや解雇、工場の撤退もやりましたが、一切訴訟やもめ事はありませんでした。周りの知人、友人の経営者の中には殴られそうなどう喝を受けた人もいたようですが、殴られた人はいませんでした。

 

中国の人たちは役者が多いのです。中国側の交渉団の中に、時々激しく怒り出し不意打ちをする人がいたり、中にはメンツの国であるにもかかわらず皆の前でどう喝してくる人もいました。こうした人たちは例外なく、「中国のことは中国人が一番よく知っている」と大声を張り上げて脅してきました。

 

このようなケースはだいたい事前に予想できますから、あらかじめ周辺に煙幕を張っておくとよいでしょう。

 

一番大切なことは、そうしたどう喝に応ぜず、どう喝は中国人の伝統文化で空気のようなものと割り切ることです。「来た、来た。」と思って平気の平左でいることが極めて有効です。

 

しかし、その場で譲ってはいけません。そうした忍耐力のある人を中国人は高く評価し、翌日は何もなかったようにケロッとして対応してきてくれることが多かったのです。相手や場合によっては激しく怒ってケンカをすることも有効ですが、翌日はやはり何事もなかったようにケロッとして対応してきました。

 

不意打ちや居丈高戦術(人を威圧するような態度)をかけてくるケースもありますから、予期して準備しておくとよいでしょう。中国人は、「断固たる態度」「白黒をはっきりつける」「いい加減にしない」「スピード」が大好きな人たちです。

本連載は、2016年6月30日刊行の書籍『アジアビジネス成功への道』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

平沢 健一

株式会社トランスエージェント 会長
G&C(グローバル&チャイナ)ビジネスコンサルタント 代表
アジア立志塾 代表 

早稲田大学第一商学部卒業。15年間日本ビクターで国内営業、本社国内課長後、1982〜87年米国ニューヨーク駐在、テレビ初代マーケティング部長、ニューヨーク営業所長。88〜96年イタリアミラノ駐在、JVCイタリア初代社長。96〜98年英国ロンドン駐在、JVCヨーロッパ副社長、欧州副本部長。98〜2002年中国北京・上海に駐在、日本ビクター理事、JVC中国社長、会長。この間4ヵ国20年間海外現地法人経営。56ヵ国をビジネスで訪問。
現在、株式会社トランスエージェント会長、G&C(グローバル&チャイナ)ビジネスコンサルタント代表、(一財)海外職業訓練協会理事、(株)イチビキ特別顧問、NPO法人日本交渉協会特別顧問、北京金杜法律事務所顧問、日中関係学会理事、アジア立志塾代表。

著者紹介

連載ビジネスに役立つ「アジア流交渉術」〜中国・インド編〜

アジアビジネス成功への道

アジアビジネス成功への道

平沢 健一

産業能率大学出版部

アジアの14ヵ国で成功を収めた14人の経営者と、世界4カ国20年の経営経験をもつ筆者が、グローバルビジネスの中心となってきたアジアビジネスでの成功の秘訣を語る。アジアビジネスでの苦労や成功体験はもちろん、アジア各国で…

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