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連載知らないと損をする「不動産売却」の必須ノウハウ【第9回】

不動産の価値を測るうえで「容積率」が重要となる理由

中古住宅容積率

不動産の価値を測るうえで「容積率」が重要となる理由

前回は、大きく3つの仕組みがある不動産の「公的な評価制度」について見ていきました。今回は、不動産の価値を測るうえで「容積率」が重要となる理由を見ていきます。

利用して初めて価値を生み出す「不動産」

不動産の価格は買い手側の事情によっても変わり得ることを説明しました。ここでいう「事情」とは、買い手がその不動産を購入してどのように利用するか、という点です。つまり、買い手にとっての不動産の利用価値です。これが高い不動産に対しては、買い手は高い値を付けるはずです。逆に利用価値の見込めない不動産に対しては、低い値を付けざるを得ません。

 

不動産を高値で売却しようとするなら、買い手がその不動産に対して高い値を付けるように利用価値をできるだけ高く引き上げる必要があるわけです。ここで不動産の利用価値というものを考えてみましょう。

 

かつて不動産で収益を上げるといえば、売却益のことを指す時代もありました。右肩上がりに地価が上がっていた時代です。その時代には、土地を何も利用しない更地のままで所有し続けても売却すれば収益を上げることができました。周辺の地価が上がるのに併せて、不動産の価格も自ずと上がっていたからです。売却しさえすれば、地価上昇がもたらしたその含み益を手に入れることができたわけです。

 

しかしいまは、そういう時代ではありません。不動産は利用して初めて価値を生み出すのが原則です。土地であれば、例えば駐車場として賃貸する。そこにビルを建設し、テナントに賃貸する。そうした利用が考えられます。いずれにしても、不動産を何らかの形で第三者に賃貸し、そこから賃料収入が得られる、という点に価値を見出します。より多くの収益を見込める不動産ほど、利用価値は高くなります。

 

不動産売買の現場でも、この利用価値は強く意識せざるを得ません。利用価値という点でよく問題になるのは、「容積率」です。容積率とは、敷地の面積に対して建物の延べ床面積をどの程度まで確保できるかを定めた建築規制上のルールの一つです。

 

敷地の場所ごとに容積率の値が都市計画として定められています。容積率が400%と定められている敷地であれば、仮にその面積が200㎡なら延べ床面積800㎡までのビルをそこに建設できるということです。この容積率が問題になるのは、それが不動産の利用価値と直結しているからです。不動産の利用価値は簡単にいってしまえば、そこから得られる賃料収入です。

 

どの程度の収入を得られるかは、不動産の立地条件や、賃貸しようとする相手がオフィスなのか店舗なのか住宅なのか、その用途によっても異なりますが、一つのビルを特定の用途で賃貸するのであれば、少なくとも賃料の単価は決まってきます。したがって賃料収入は、その賃料単価で賃貸できる床面積をどの程度確保できるかによって変わってくるわけです。

単価を見るときは「容積率」の考慮が不可欠な理由

具体の敷地に建設するビルで床面積をどの程度確保できるかを決めるのは容積率です。したがって、賃料収入は容積率が大きいほど多くなり、逆に小さいほど少なくなることになります。容積率が不動産の利用価値と直結しているというのは、こういう理由からです。

 

この容積率という建築規制上のルールが、面倒くさい代物なのです。第一段階の一般的なルールとしては、地図上でこの範囲が300%とか400%と、はっきり定められています。ところが、具体の敷地単位で建築計画を立てる場合には、この第一段階の一般的なルールのほかにもさまざまな個別のルールが上乗せされるため、実際に適用される容積率の値は300%とか400%より小さくなってしまうのです。

 

一例を挙げれば、敷地に接する前面道路の幅員によって適用される容積率には違いが生じます。幅員が12m以上と広ければ問題ありませんが、都市部でもよく見られるように幅員4mとか6mになると、その広さに基づき一定の制限を受けるのです。

 

都市計画上、容積率とセットで定められる用途地域が商業系の地域で容積率600%の例を考えてみましょう。この場合、敷地に接する前面道路の幅員が仮に6mとすると、その敷地に適用される容積率はその幅員の六掛けである3.6をパーセンテージに置き換えた360%に抑えられます。容積率600%のエリアでも実際には同360%が適用されるということは、その敷地に建設するビルで確保できる床面積を600分の360、つまり5分の3に抑えられてしまうということです。

 

これは当然、賃料収入に響きます。単純に考えて、ビルの床面積が5分の3になれば賃料収入も5分の3に減ってしまいます。それだけ、不動産の利用価値が損なわれてしまうわけです。この場合、不動産の利用価値をできるだけ損ねないようにすることが可能です。さすがに敷地に接する道路の幅員そのものを広げることはできません。しかし、まったく異なる方法で前面道路の幅員を広げることが、決して不可能ではないのです。

 

それは、敷地のとらえ方を周囲にまで広げるという発想に立つことです。敷地の前面道路は幅員6mだったとしても、隣地の前面道路が幅員12mであれば、これら2つを合わせた土地の前面道路は幅員12mと認められます。幅員12mであれば、都市計画上で定められている容積率が適用される決まりです。

 

先ほどの例に戻れば、容積率600%が適用されます。隣地と一体になることで、不動産の利用価値を一気に引き上げることができるわけです。ここで述べてきたように、不動産の利用価値は容積率に置き換えられます。不動産の単価を比べる時によく、坪当たりの単価だけでなく、容積率100%当たりの単価を用いるのは、そのためです。

 

容積率100%を一種、同200%を二種、と呼んだことから、一種当たりの単価と通常呼んでいます。例えば一種当たりの坪単価が100万円のエリアであれば、容積率600%が適用される広さ100坪の土地は総額6億円と計算できるわけです。その不動産に適用される容積率を、どこまで引き上げることができるのか――。これが、不動産の利用価値を最大限に高めようとするときに求められる視点です。

本連載は、2016年6月29日刊行の書籍『はじめてでも高く売れる 不動産売却40のキホン』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

宮﨑 泰彦

株式会社北極星コーポレーション 代表取締役

20年間以上マンション・ビル用地の開発事業や不動産再生事業に携わる。土地オーナーへのきめ細やかな企画・提案、コストの削減・管理までを行うコンサルティングには定評がある。不動産に関するさまざまな問題に正面から取り組み、優良な都市の形成と住宅の供給に日々励んでいる。

著者紹介

連載知らないと損をする「不動産売却」の必須ノウハウ

はじめてでも高く売れる不動産売却40のキホン

はじめてでも高く売れる不動産売却40のキホン

宮﨑 泰彦

幻冬舎メディアコンサルティング

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