前回は経営改善のためには「腹をくくった判断」が必要とされる組織・人事改革について説明しました。今回は、「利益の進捗状況」の管理の徹底で自社の目標を達成する方法について見ていきます。

現状での獲得済み利益額はいくらあるのか?

「社員説明会」を開催し、全社で向かうべき方向性が固まったら、あとは目標に向けて進むだけである。

 

しかし、よくあるのは最初は皆そこそこやる気になっていたものの、その目標が徐々に忘れ去られていくケースである。したがって、道を逸それていかないよう、定期的に進捗管理をしなければならない。

 

目標としている「必要利益額」に対し、現在いくらまできていて、残りいくらなのか。その金額を認識できて初めて、残りの期間で不足分を達成するための方法を考えることができる。一方、期が終わり、決算を見て初めてその期の結果を知る会社がいかに多いことだろう。

 

野球でも9回終了して初めて何点ずつ取ったかをカウントするのでは意味がない。勝っている場合は勝っている場合の、負けている場合は負けている状況下での戦い方がある。決算を締めた結果が出るのをドキドキしながら待っていてはいけない。期中で対策を講じなければならない。そのままの流れで、各期の残りの期間を過ごしてはいけないのである。

 

進捗数字の確認に関して押さえておくべきポイントは、「現状での獲得済み利益額はいくらあるのか?」の一点である。

 

具体的には、以下の合計利益額を「現在獲得している粗利益額の総合計」とするのが望ましい【図表1】

 

【図表1】 現在獲得している粗利益総額の計算方法

 

①施工が既に終了している「売上計上済み物件」の粗利益の合計

②「現在施工中物件」の粗利益の合計

③「受注したての物件」(工事への引き継ぎがまだ)の粗利益の合計

④未受注だが、「ほぼ受注できそうな物件」の粗利益の合計

⑤「少額工事の年間見込み」の粗利益の合計

 

一般的には①の数字のみで不足分に圧倒されがちだが、⑤までの数字をカウントすると、不足分は思ったほどでもなかったりする。また、このカウント方式を取る場合のメリットとして一番大きいのが、先が読めるということである。

「当期、次期の数字」は受注ベースで確保

私がサポートしている多くの会社は、期の途中の時期にある程度の年間の着地目安が見える。早い会社では、期が始まって2〜3カ月の時点で、その期の数字がほぼ確実にクリアできそうだということが分かる。

 

建設業という業種には「工期」がある。それを前述したように完成基準を取れば、完成時期により当期計上の物件か来期計上の物件かが分かるため、随時カウントできる。

 

要は受注ベースで当期、次期の数字を見ていくのである。逆に言えば、受注現場の工期は規模にもよるが、通常は最低でも3カ月はかかるため(長ければ半年から1年、2年かかる)、期の折り返し地点(決算の6カ月経過時点)である程度、受注を確保(目標の70%付近)しておかないと、最終地点で数字が届かないとも言える。

 

自社の受注現場の工期を考慮しながら、経過時期に応じた確保率を目安にしなければならないということになる。

 

【図表2】 粗利益進捗管理表(サンプル)

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    本連載は、2016年9月14日刊行の書籍『たった1年で利益を10倍にする 建設業のための経営改善バイブル』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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    中西 宏一

    幻冬舎メディアコンサルティング

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