今回は、「相続財産の先取り」があった場合の権利調整について見ていきます。※本連載は、税理士・田中潤氏著『きっと今までになかった相続の権利調整を考える本』(メディアパル)から一部を抜粋し、相続を円滑に進める「権利調整」について、分かりやすく解説します。

生前に「特定の相続人」だけが財産を貰っていたケース

相続が発生した時、被相続人には身の廻りのもの以外財産はほとんど無かった、ということは決して珍しいことではありません。

 

借入金を抱えていたり誰かの連帯保証人になっていれば相続放棄の手続が必要になりますが、そうしたものも無ければ事実上相続手続は何も無いわけです。

 

ところが、被相続人から生前に特定の相続人だけが財産を貰っていた場合、他の相続人はこれについて相続財産の先取り(特別受益額)があったとして、遺留分の請求をできることがあります。

 

しかし、生前に相続人の一人に贈与が確定しているものについて、他の相続人が改めてその中の一部を取り戻すことはかなり難しいことです。

お互いに「譲歩」することでトラブルを防ぐ

被相続人の亡くなる数年前に多額の預金が移動していたり、唯一の不動産がその一人の相続人に名義書換されていたりするなど、その特定の相続人に不自然に財産が移転していることが明確であれば、その他の相続人は遺留分の減殺請求が可能となります。

 

こうした場合、財産の贈与をされていた人は被相続人とのやりとりで自然にその財産を受け継いだつもりでいたとしても、争いを避け他の相続人に対して自分の資産の中から一定の財産を支払うことが賢明です。相続では互いに譲歩し合うことが、その後も仲良くやっていくためのコツなのです。

 

なお、一般的な特別受益額を含んだ法定相続分の計算は、その特別受益額を持ち戻し相続財産に加算して各相続人の法定相続分を定め、特別受益額のあった人はその分を差し引いて相続分とします。

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