今回は、親の面倒を見た相続人が「寄与分」を主張する方法について解説します。※本連載は、税理士・田中潤氏著『きっと今までになかった相続の権利調整を考える本』(メディアパル)から一部を抜粋し、相続を円滑に進める「権利調整」について、分かりやすく解説します。

子の立場では親から一定の「お墨付き」をもらっておく

被相続人の晩年の介護をした子の貢献度を相続の遺産分割の際に考慮する措置として、寄与分という考え方があります。これは、元々相続人の間でそうしたある特定の子の貢献を皆が認め、その子を優遇した遺産分割がされればそれまでのことですが、そうした配慮がなされなかった場合、その子がこれを不服として法定相続分以上に自分の取り分を主張しようとした場合に根拠となる概念です。

 

つまり、相続人の間でトラブルが起きた時の為の考え方なのですが、裁判所が絡んでくるので過去の貢献を客観的に示すことは難しく決め手に欠けることが多いようです。

 

親が高齢化していく中で、子がその介護をする期間は長期化しています。無償労働の時間が確実に増えていくなか、子がその貢献について親から一定のお墨付きをもらっておくことが確かな方法です。

親のためにお金を使った場合には詳細なメモを残す

原則的手法としては、遺言書に自分の貢献の内容を明記してもらうとともに具体的にその子が引き継ぐ相続財産を明記してもらうことです。

 

もう一点は、生前に親の財産から一定額を贈与してもらうことです。こうした場合、一般的には相続時精算課税制度により2500万円迄の贈与は申告をすれば無税(特別控除額)として扱われるので、早目に親にその手続きを頼むと良いでしょう。

 

親が痴呆になって成年後見人が必要になってしまうと、こうした処理は非常に困難になるので注意したいものです。

 

最後にもう一言。親の面倒をみる時に日常のお金の出し入れも明確にし、親のために自分のお金を使った場合には詳細なメモを残しておいてください。遺産分割協議の際に親に対して立て替えたお金として相続財産から返済してもらうことができますし、具体的に親の為に自分が貢献した事実を証明する裏付けにもなります。

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