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連載未来のあなたを襲うかもしれない相続の悲劇【第3回】

財産を「嫁」には渡したくないが・・・民法が引き起こす相続の悲劇

民法

財産を「嫁」には渡したくないが・・・民法が引き起こす相続の悲劇

今回は、遺言書を残さずに民法にしたがって相続を行えば、どのような事態が起こりうるのかを考えてみます。※本連載では、いまや誰にとっても巻き込まれてしまう危険性がある相続トラブルについて、具体的にどのような事態が発生する可能性があるのかを見ていきます。

「渡したくない人」にも財産が渡ってしまうリスク

前回、説明したような法定相続のルールによって起こり得る問題として、まず指摘できるのは、自分の死後、その財産が、本来望んでいなかった人の手に最終的に渡ってしまう恐れがあることです。

 

例えば、息子が結婚した女性を親が嫌っていたとします。親が資産家であり、女性が息子と結婚したのは「財産目当て」であるように思えた場合などには、そのようなネガティブな感情を抱くことは十分にあり得るでしょう。親からすれば、そのような女性が自分の財産を最終的に手にすることは「耐えがたい」と思うはずです。しかし残念なことに、その女性が息子よりも先に亡くなるか、あるいは離婚しない限りは、法定相続のルールによって、そんな望ましくない結果が実現されることになってしまうのです。

 

自分が死んだ後、法定相続により親の財産は息子が相続し、息子が死んだ後、その財産は法定相続によりその妻が、すなわち息子の妻が相続することになるからです。実際、このように自分の死後「望んでいない人に財産が渡ってしまう」ことを懸念している人は少なくありません。

自分の死後に「先祖代々の自宅」は誰が引き継ぐ?

ここで一つの事例になりますが、ある高齢の女性が、次のようなご相談に見えたことがあります。

 

「現在、次男夫婦は私の自宅に隣接した私名義の土地に建てた貸家に無償で住んでいる。次男夫婦には子供がおらず、また次男の配偶者とは折り合いが悪いため、隣同士でありながら普段は全く交流がない状態である。私が死んだ後は、次男に本宅も渡したいが、もしその後、次男が亡くなったら、家はその妻が相続することになる。しかし、この家は代々先祖から受け継いできたものであり、折り合いの悪い次男の妻に渡すことはどうしても避けたい。万が一、私が死んだ後、次男が急に亡くなるようなことがあった場合には、長男に家を継いでもらうような形にしておきたい」

 

ご相談に来られた女性は現在住んでいる家を、自分の直系の子孫に相続させることを望んでいました。もしこのまま何もしないでいれば、自らの財産は法定相続により長男と次男に受け継がれることになります。

 

その遺産分割の過程では、「誰が家を相続するのか」についても話し合われることになるはずですが、次男が母親の隣で暮らしている現状を尊重するのであれば、次男が相続するのが自然な流れということになるでしょう。

 

しかし、万が一、次男が妻よりも早く亡くなるようなことになれば、家を相続する権利を妻が得ることになります。そうなれば、家は最終的に妻のものになってしまう可能性が高いでしょう(次男に子供がいないため、長男にも次男の財産を相続する権利が生まれますが、その場合でも、家については住み続けている妻が相続するのがやはり自然の流れといえます)。

 

最終的に次男の家をその妻が相続することになれば、母親の立場からすれば、家は自分とは全く何の血のつながりのない者のものになってしまうわけです。家に対して強い愛着を持っていた女性にとって、それは絶対に受け入れがたいことのようでした。ことにその財産を手にする可能性のある者が、前述のように財産目当てで自分の子供と結婚したような人間であったとしたら、「あの女がまんまと自分の財産を思惑通り手に入れるなんて、死んでも死にきれない」という気持ちになるかもしれません。

 

そして、そのような思いを抱えたまま亡くなることは、やはり一つの大きな「悲劇」といえるのではないでしょうか。

本連載は、2014年3月22日刊行の書籍『相続争いは遺言書で防ぎなさい』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

大坪 正典

大坪正典税理士事務所 所長 税理士

神奈川県横浜市出身。相続、事業承継、都市開発、企業再生支援業務などを中心に携わる。他士業とのコラボレーションによるワンストップサービスを提供。著書に『もめない相続ABC』(共著、日本相続新聞社)、『はじめての相続・贈与』(共著、明日香出版社)などがある。

著者紹介

連載未来のあなたを襲うかもしれない相続の悲劇

相続争いは遺言書で防ぎなさい 改訂版

相続争いは遺言書で防ぎなさい 改訂版

大坪 正典

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