今回は、海外の事例でAirbnbゲストが引き起こしたトラブルを見ていきます。※本連載は、Airbnb総合研究会代表、阿部ヨシカズ氏の著書『インターネット民泊仲介サービスAirbnb入門ガイド』(ソシム)の中から一部を抜粋し、Airbnbを始める際に知っておきたい法律面・契約面のポイントや、想定されるトラブルの解決法などを紹介します。

宿泊料の支払いをせず、退去もしない長期滞在ゲスト

■宿泊料の一部だけを支払って居座ったゲスト

カリフォルニア州在住のCory Tschoglさんは、長期滞在を申し出た兄弟に部屋を貸すことにしました。ところが、最初の30日分だけ宿泊料を支払って、その後は宿泊料の支払いを拒否したまま居座ってしまいました。このまま居座るなら電気を止めると立ち退きを要求したところ、逆に「恐喝だ。電気を止められると仕事に支障が出るので、その収入を補償をしろ」などと逆に脅しをかけてきました。

 

カリフォルニア州では、30日以上賃料を払っている場合は、部屋を借りている人の権利を保護するという条例があり、ゲストはこの条例をいいように解釈して居座ったものと思われます。

 

強制退去を執行するには複雑な手続きが必要で、仮に執行が認められたとしても、最長6ヶ月の時間が必要になります。また、手続きのための費用も数十万円かかります。

 

ホストはAirbnbに仲介を求めました。Airbnbはゲストに対して、短期滞在のためのホテルを用意するので退去することを提案しましたが、ゲストはその提案も拒否して居座り続けました。後に、このゲストの兄弟は、クラウドファウンディングのサイトでも詐欺まがいの資金集めをしていることが発覚しました。

 

このトラブルの顛末は不明ですが、仮にホストがすでに別のゲストからの予約も取っていた場合は、さらに被害は大きくなります。ホストの都合で予約をキャンセルする場合、キャンセルのペナルティがホストに請求されるほか、自動的に悪いレビューが付けられてしまい、最悪の場合は、実質的にAirbnbでの活動ができなくなってしまいます。

Airbnbのシステムを通さないやりとりは「規約違反」

■ゲストに貸した家が知らぬ間に売春宿に

オーストラリアの女性Aさんは、自宅をAirbnbで貸し出すことで副収入を得ていました。何度も問題なく貸し出していたので、油断があったのでしょう。ある時、Airbnbを通して連絡があった女性に、Airbnbの決済システムを使わずに2泊貸し出すことに同意して、宿泊料を現金で受け取りました。

 

ところが、ゲストがチェックインした直後から、頻繁に男性が彼女の家に入っていくのが近所の住民に目撃され、ホストの家が即席の売春宿として使われていることが発覚しました。この事件によって、ホストは地域での信用を失うことになってしまいました。

 

ただし、このトラブルはAirbnbのシステムを通さずに部屋を貸し出すという規約違反を犯したホストにも重大な責任があります。規約違反の取引を持ちかけるゲストを信用したことが大きなミスでした。

 

現地メディアの取材を受けたオーストラリアのAirbnb責任者は、「この事例は、Airbnbのプラットフォームを通じて成立した契約ではないので、Airbnbのトラブルではない」とコメントしています。

 

もし、Airbnbのプラットフォームを使用しない取引を持ちかけられた場合は、そのような提案には応じるべきではありません。Airbnbのプラットフォームを使わずに貸し出した場合は、当然ながら、Airbnbのホスト保証も適用されません。

本連載は、2016年1月12日刊行の書籍『インターネット民泊仲介サービスAirbnb入門ガイド』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

インターネット民泊仲介サービスAirbnb入門ガイド

インターネット民泊仲介サービスAirbnb入門ガイド

阿部 ヨシカズ

ソシム

Airbnb(エアビーアンドビー)は主に海外からの旅行客に対し民泊の仲介を行うサービスで、日本でも急速に利用者を伸ばしています。 本書では、Airbnbしくみと現状の使われ方、副業としての可能性などのほか、旅館業法などの法…

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