本連載は、Airbnb総合研究会代表、阿部ヨシカズ氏の著書『インターネット民泊仲介サービスAirbnb入門ガイド』(ソシム)の中から一部を抜粋し、Airbnbを始める際に知っておきたい法律面・契約面のポイントや、想定されるトラブルの解決法などを紹介します。

旅館業を営むには都道府県知事の許可が必要だが・・・

Airbnbのように、個人が所有する部屋を有料で貸し出すことを、一般的に「民泊」と表現します。民間の家庭に宿泊するという意味です。

 

外国人留学生などを家族の一員のように受け入れるホームステイも実質的に有料で宿泊スペースを提供していますので、広い意味では民泊の一形態に含まれるともいえますが、通常は民泊とは区別されます。

 

また、似たような言葉としては「民宿」があります。これは、民家を宿泊施設として使う許可を得て営業しているもので、明らかに「民泊」とは異なります。

 

日本では、宿泊施設を提供する事業者を対象にした「旅館業法」という法律があります。旅館業とは「宿泊料を受けて人を宿泊させる営業」と定義されており、「宿泊」とは「寝具を使用して施設を利用すること」と説明されています。具体的には、ホテル営業、旅館営業、簡易宿所営業、下宿営業の4種類があり、前述の民宿は簡易宿所営業に該当します。

 

【図表 旅館業法の種類】

 

旅館業法では、旅館業を経営するものは、都道府県知事の許可を受ける必要があると規定しています。旅館業の許可を受けるには、旅館業法施行令で定める構造設備基準や、都道府県の条例で定める換気、採光、照明、防湿、清潔等の衛生基準に適合する必要があり、個人が旅館業を新規に開業するのは容易ではありません。

 

ホストとして気になるのは、Airbnbで自宅を貸し出すことが「旅館業の経営」とみなされてしまうことはないか、という点ではないでしょうか。基本的には、Airbnbは部屋を貸すことを「業」としていない個人が、ネット上で知り合った人を個人的に部屋に泊めている、という立場ですので問題はないと思いますが、不特定多数に対して頻繁に宿泊するための部屋を有料で貸し出している場合、管轄の都道府県から実態に関する問い合わせが来る可能性はあります。

Airbnbの概念に対応できていない現行の「旅館業法」

Airbnbは、個人の自宅や空部屋を共有するシェアリング・エコノミーという新しい概念のサービスです。現在の法律や法令は、Airbnbのような民泊仲介サービスが出現することは一切想定に含まれていません。

 

現在の旅館業法は昭和23年7月に施行されたものですが、ベースになっているものは100年以上前から存在する法律です。このような大昔に作られた法律が、Airbnbのような新しい概念に合致しないことは、誰が見ても明らかなことでしょう。

 

実は、イギリスではロンドンオリンピックでの民泊需要の高まりに対応して、2015年には新しい法律「住宅共有法」が施行されました。この法律により、自宅を年間90日までシェアリングすることが法的に認められるようになりました。パリやアムステルダムなどでも、市が条例を定めて民泊を認めました。日本でも、東京オリンピックを控えて、民泊を一部公認する法改正やガイドラインの制定が予想されます。

 

正直なところ、現時点ではAirbnbを経由した自宅の貸し出しについては、グレーゾーンに該当している部分もあります。しかし、それは現在の法律が新しい概念に対応しきれていないだけのことです。Airbnbに限らず、これまでに存在しなかった斬新的なビジネスモデルが誕生した時には、いずれも同じような経緯をたどってきています。

 

今後、日本でもAirbnbでの「民泊」について定義が行われるでしょう。正式にガイドラインや法令が制定されれば、その範囲でAirbnbを活用すればいいということになります。何よりも私自身が法の準備が整うのを首を長くして待っているのです。

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    本連載は、2016年1月12日刊行の書籍『インターネット民泊仲介サービスAirbnb入門ガイド』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

    インターネット民泊仲介サービスAirbnb入門ガイド

    インターネット民泊仲介サービスAirbnb入門ガイド

    阿部 ヨシカズ

    ソシム

    Airbnb(エアビーアンドビー)は主に海外からの旅行客に対し民泊の仲介を行うサービスで、日本でも急速に利用者を伸ばしています。 本書では、Airbnbしくみと現状の使われ方、副業としての可能性などのほか、旅館業法などの法…

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