今回は、子どもと同居する場合でも、「家と土地」は妻が相続するべき理由について説明します。※本連載は、ファイナンシャルプランナー・高橋成壽氏の著書、『ダンナの遺産を子どもに相続させないで 50~70代のみなさまへ わが子のためにもなる相続と老後のマネー術』(廣済堂出版)の中から一部を抜粋し、50~70代の女性を対象とした相続対策のポイントなどをご紹介します。

生活する上で大切な基盤になる「持ち家」

家と土地は、何よりも、「老後の安心な生活」を成り立たせるための基盤ともいえるものです。もし「家」がなければ、家を相続した子どもさんと同居をするか、あるいは別の子どもさんの家に同居させてもらうか、それができなければ借家住まいになるか──です。

 

しかし、基本的に高齢者の独り住まいでは、借家や賃貸マンション等の新規契約はなかなか難しいのが実情でしょう。それに、これまで作成してきたキャッシュフロー表でも、持ち家があることを前提にしています。

 

持ち家があることで、家賃等を月々捻出(ねんしゅつ)する必要もなく、キャッシュフロー表上の生活費もそのうえに成り立っているといえます。そんな大切な基盤を手放してしまって、よいのでしょうか?

 

私は、よほど特別な事情でもない限り、何を置いても家と土地は、妻が相続するべきだと思います。仮に、相続した子どもと同居することにしても──です。 

 

もし、持ち家を子どものいずれかに相続させ、その子どもと同居した場合、その家は奥様のものではなく、子どもさんのものです。子どもさんが結婚され、お子さんもいらっしゃるなら、その家はお嫁さんまたはお婿(むこ)さんの家であり、お孫さんたちの家でもあるのです。子どもさん一家にとって、いっしょに暮らしているお母様は、立場的には、悪く言えば「居候(いそうろう)」、よく言っても「同居の母」です。

 

一方で、持ち家は奥様が相続し、奥様名義になっていれば、子どもさん一家のほうが、「母の家に同居させてもらっている」立場になるのです。これは、単なる〝言葉のアヤ〟的な違いのように見えて、この違いが、日々の生活のはしばしに、また子どもさんないし子どもさん一家との関係に、さまざまな影響をおよぼしてきます。

お嫁さんと「いい関係」を維持するには?

たとえば、家が子どもさん名義になっている場合、子どもさん一家が「家をこんなふうにリニューアルしたい」と言えば、たとえそれに反対でも、もはや自分の家でもないものに「NO」とは断りづらいものです。

 

また、子どもさんが息子なら、そのお嫁さんが家のなかを取り仕切るようになることもありえます。そのお嫁さんがもし、「お姑さんの家に同居させてもらっている」身なら、たとえば自分のお友だちを家に呼ぶにも、「今日は数人の友だちが家に見えるので、少し騒がしくなるかもしれませんが、よろしくお願いします」と、ひと声かけてくれるかもしれません。

 

しかし「お姑さんが私たちの家に同居している」という形になってしまうと、「いつ、誰を家に呼ぼうと、私の自由」という心持ちになってもおかしくないでしょう。そのようなことから、仮に最初はうまくいっていたとしても、だんだんにお互いの間に「感謝」の気持ちもなくなり、不満や疎(うと)ましさを感じたり、摩擦(まさつ)が生じたり、それがエスカレートすれば、嫁姑戦争に発展することにもなりかねません。

 

もちろん、お嫁さんと互いの立場を思いやりながら上手にやっている方も、たくさんいらっしゃると思います。しかし、もともとは赤の他人同士だった者が一つ屋根の下で暮らすには、お互いの思いやりだけでなく、ときには遠慮も忍耐も必要になることが多いものです。

 

お嫁さん、お婿さんとの間にわだかまりが生じるようなことは、みなさんも望まないでしょう。それ以上に、夫と共に守ってきた家の中で、ご自身が必要以上に遠慮して肩身の狭い思いをしながら暮らし続けるのは、やるせない思いにもなるはずです。

 

同居する子どもさん一家にとって「同居の母」ではなく、「母に同居させてもらっている」立場から、「お母さん(おばあちゃん)は、この家のなかでいちばん大事に尊重するべき人」であることは、互いの「いい関係」を維持していくためにも、とても重要なのです。

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    本連載は、2014年12月5日刊行の書籍『ダンナの遺産を子どもに相続させないで』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

    ダンナの遺産を子どもに相続させないで 50~70代のみなさまへ わが子のためにもなる相続と老後のマネー術

    ダンナの遺産を子どもに相続させないで 50~70代のみなさまへ わが子のためにもなる相続と老後のマネー術

    高橋 成壽

    廣済堂出版

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