今回は、インドの人と円滑に仕事をするためのヒントについて見ていきます。※本連載は、株式会社インド・ビジネス・センター代表取締役社長・島田卓氏の著書『インドとビジネスをするための鉄則55』(アルク)から一部を抜粋し、インドでビジネスをするための様々な基礎知識をご紹介します。

仕事の指示は「5W1H」を押さえ、できる限り明確に

Q.インドの人と円滑に仕事をするためのヒントを教えてください。

 

A.仕事の指示は、基本の「5W1H」を押さえ、できる限り明確にします。また、継続性、一貫性、透明性、タイミング、予見性や忍耐を常に意識することも大事です。

 

昔から「郷に入っては郷に従え」というように、インドで日本の手法は通じません。言語も文化も異なるので、「推して知るべし」とはいかず、考えていることの3割くらいしか伝わらないと思った方がいいでしょう。

 

社内の従業員に指示を出すときも、「日ごろから見ているから分かるだろう」という前提に立つのは間違いのもとです。インドの仕事へのアプローチはアメリカ的で、明確に指示されたことのみをやります。たとえば、10の指示のうち2がやや曖昧だった場合。日本では上司の意図を正確に読み取り、将来まで見通して付加価値を生み出すことが評価されるため、自分なりに考えて10プラスαまでやろうとします。

 

一方、インドでは不明確な点があると、指示されたとは受け止めません。8まで実行し、それ以上は自分の守備範囲を超えた、手をつけてはいけない領域と考えます。

 

これを承知しておかないと、互いに理解に苦しみ、トラブルが続出し、不信感を募らせることになります。

 

仕事の指示は、基本の「5W1H」を押さえ、できる限り明確にします。いつ誰がどこで何をするのか、何のためにどのようにするのか。当然と思っても説明、説明です。最終的に本人のキャリアアップにつながることが伝われば、意欲も効率も向上するでしょう。

雑談のネタとなる「クリケット」の試合結果

インドでのビジネスで常に意識しておきたいのが、「2C(Continuity/継続性、Consistency/一貫性)、2T(Transparency/透明性、Timing/タイミング)、2P(Predictability/予見性、Patience/忍耐)」です。

 

2Cは、こちらの意図、求める形を明確に提示して、相手から継続的に一貫したものを得るということです。たとえば、インドでは調査リポートを出すようにいうと、言葉で表現しようとしがちです。分かりやすいようにチャートにしてくれと指示すると、そのときは作成しますが、次回はまた言葉での説明に戻ってしまいます。この場合は、リポートのひな型を用意し、それに基づいて作成するよう指示するしかありません。常にそれを使うように指示し、望むものが継続して得られるようにすることです。

 

2Tの最初のTは、徹底した透明性です。「それはできない」と言われたら、その根拠を明らかにするよう求めます。これは取引先との交渉でも頭に刻んでおきたい点です。不可能なのは法律の規定からなのか、単に条件が厳しいからなのか、明確にしてもらう必要があります。言われるまま鵜呑みにしていては話が進みません。

 

もう一つのTは、時宜を逸しては良い仕事も意味がないということです。インド流の積み上げ式で作業をしていると、納期を過ぎることが多々あります。会議に使うリポートは会議の前に必要ですし、外部からの納品も大幅に遅れて支払いを求められては困ります。

 

そこで大きな課題となるのがPです。予見できる仕事の進め方が身に付くようにするのです。積み上げ式ではなく、先を見越し、ゴールを見据えたうえで、どういう手順でどう作業を進めていくかを事前に入念に練るアプローチです。

 

従業員に対しては、忍耐強く説明を重ね、どうしてその方が良いのか、そうする必要があるのかを納得させるしかありません。これがもう一つのP(忍耐)です。辛抱強く、相手が根負けしてこちらの話に合わせてくるくらい〝Never give up.〞の精神で臨みます。「これは問題だから、こう直せ」と強制しても、やがて元に戻るだけで、継続して一貫性が得られません。自ら納得し、改善すべきと気付くように工夫すると、進んで修正し、身に付きます。仕事の進行状況はこまめにチェックし、「2C、2T、2P」が得られるようにしましょう。外部への発注は、納期を過ぎると支払いがどうなるかなど、契約書に細かく盛り込んでおくことです。

 

従業員とうまく意思の疎通ができるようにするには、日ごろからまめに声をかけ、気を配ることです。あいさつくらいはヒンディー語で言えるようにしておくといいでしょう。誕生日は月ごとにまとめて、昼休みなどにケーキをふるまってお祝いするのが普通です。労をねぎらうときには、食事会をしたり、自宅に招いたりもします。逆に招待を受けたら、なるべく出席しましょう。春、秋には家族も招いて慰安旅行をする会社も多くあります。

 

打ち解けるための雑談のネタとしては、まず国民的スポーツであるクリケットが挙げられます。レジェンドとされるサチン・テンドルカル、天才マヘンドラ・シン・ドニなど有名選手は覚えておき、試合の結果をチェックするといいでしょう。

 

映画界では、ボリウッドの帝王といわれるベテラン俳優アミターブ・バッチャン、「3大カーン」と呼ばれるアーミル・カーン、シャー・ルク・カーン、サルマン・カーンなどを覚えておくといいでしょう。女性ではCM女王カトリーナ・カイフ、カリーム・カプールなどが人気があります。音楽では「インドのモーツァルト」といわれ、映画音楽で知られるA・R・ラフマーンをチェックしてみましょう。アジア人で最多のCD販売を誇る人物です。

インドとビジネスをするための鉄則55

インドとビジネスをするための鉄則55

島田 卓

アルク

これまでインドとまったく接点がなかったのに、会社から突然インド担当を命じられた! そんなビジネスパーソンが知っておきたい、インド社会の基礎知識、仕事を着実にこなすコツ、マナーやNG行動、インドで生活するための情…

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