今回は、製品の高機能・高品質化が、本当に消費者のニーズに合うことなのか、筆者の考えを見ていきます。※本連載は、コンサルタントとして活躍する出口知史氏の著書、『東大生が実際に学んでいる戦略思考の授業』(徳間書店)の中から一部を抜粋し、企業の経営戦略に潜む落とし穴を見ていきます。

画質の向上、軽量化等の進化を遂げた「テレビ」だが…

国内の例ですが、いまとなっては苦戦のニュースしか流れなくなってしまったテレビの例を見てみましょう。大学生の読者は見たことがないかもしれませんが、テレビは登場以来40年程度、通称「ブラウン管」と呼ばれていた、奥行きが40~60センチくらいある大きな箱型のものが主流でした。

 

20インチサイズあたりを超えるととても重たくて、引っ越しなどの際には成人男性でも持ち上げるのに四苦八苦するようなものでした(いまとなってはいい思い出ですが)。

 

その後、日本では地上波デジタル放送が2003年に開始、2011年にアナログ放送の終了が移行期間となるような形で、液晶テレビに置き換わりました。このブラウン管から液晶へのハードウェアの進化の過程には、画像品質の向上、大画面化、軽量化という点で大きな飛躍があったように、イチ消費者として感じます。

 

その後のハードウェアの進化は、例えば3D液晶テレビ、PDP(プラズマディスプレイ)テレビ、4Kテレビ、有期EL(エレクトロルミネッセンス)テレビなどが登場したことからしても、技術の躍進はかなり高度なものがあったとは思います。これら4つの方式だけでもおそらく日本企業による累積投資は何千億、何兆円という規模になっています。

どこまで市場・消費者に訴求できているかは未知数

しかし、それによって発揮できた機能や品質が、どこまで市場・消費者に訴求できているのかは、まだ答えが出ていない状況にあります(パナソニックは2013年に、それまで何千億と投資してきたPDP事業からすべて撤退することを決定しました)。

 

一方で、双方向化やインターネットとの連動など、ソフトウェアの開発は求められていそうでいて、進化、普及しているような実感に乏しい状況です。

 

こうしたハードウェアとソフトウェアへのニーズと、実際にかけた投資金額のバランスはとれているのか、投資を活かすための社内の人員配置や価値観の統制などを検証することが、ここで述べる内部資源と市場環境のニーズとの整合性をとっていくことにつながっていきます。

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