前回は、超低金利時代が続くと、「預貯金」の価値はどうなるのかを説明しました。今回は、日常生活が困難となる「ハイパーインフレ」が起きた世界の実例を見ていきます。

15時間おきに物価が倍になったハンガリー

インフレについてもう少し見てみましょう。日本では戦後、モノの価格が3年半で100倍になるようなインフレが起きましたが、世界的に見ればそれほど特別なものではありません。歴史上には、月あたりのインフレ率が50%を超えるハイパーインフレというものもあります。日本の戦後インフレの月率は、せいぜい5%でしかありません。

 

ハイパーインフレとはどのようなものでしょうか。これまで最も急激なハイパーインフレは、第二次世界大戦後のハンガリーで発生しました。その模様は、次のように描写されています。

 

1946年7月には、15時間おきに物価が倍になるほどのインフレ率だったといいます。簡単に言えば、朝に食べた500円のトーストセットが、夕方になると1000円に値上がりしているような事態でした。市民はトランクやベビーカーに紙幣を積み込まなければ、日用品の買い物すらできませんでした。

 

結局、ハンガリーは新しい通貨を2回も発行して、このハイパーインフレを収束させました。この過程で、現金や預金は紙屑同然になりましたが、土地や株式といった資産の価値は保全されました。

 

なぜならば、インフレとは、お金の価値が下がってモノの価値が上がることですから、土地や株式といったモノの資産価値はどんどん上がっていったからです。

直近のハイパーインフレは2008年のジンバブエで…

ハイパーインフレは、決して過去のものではありません。2008年のジンバブエのハイパーインフレは、第二次大戦後のハンガリーに次ぐ史上2位のインフレ率となりました。

 

当時発表された2008年7月のインフレ率は年率2億3100万%で、それが最後の公式発表となりましたが、その後もインフレ率は高まり続けたといわれています。最盛期には、25時間おきに物価が倍になっていたそうです。

 

今日200円で買えた牛乳1パックが、明日は400円、明後日は800円、1週間後には2万5600円になるようなものですね。

 

物価の高騰にあわせて、ジンバブエ政府は100億ジンバブエ・ドル紙幣、100兆ジンバブエ・ドル紙幣と高額紙幣を発行し、最終的にはジンバブエ・ドルを諦めて、アメリカ・ドルなどの外貨を国内でそのまま使うようにしてしまいました。

 

そのほか、第一次世界大戦後のドイツや、90年代の旧ユーゴスラビアなどハイパーインフレの例は枚挙にいとまがありません。研究者によるとこれまでに50以上の事例が確認されているそうですが、日本のインフレはその中に入ってはいません。

 

日本の戦後インフレは確かに急激なものでしたが、通貨の切り下げ(デノミネーション)を行わねばならないほどではなく、またその後に、折よく高度経済成長期が到来し、経済成長率が高くなったためインフレが苦になりませんでした。

 

簡単に言えば、物価がいくら上昇しても、賃金もそれに伴って上昇したので問題にならなかったのです。

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