空室対策に重要なビル「経営」の視点とは?

前回は、16カ月間、空室が続くビルが抱える問題点について取り上げました。今回は、このビルが抱える問題点、特に「経営」という視点を取り上げます。

空室期間が長くなれば維持費だけで大きな負担に

3番目の問題点はビル経営の視点にありました。

 

募集中にも維持費の支出があることを考えていなかったのです。たまたま、この会社では本業が順調でした。そのため、募集条件は強気のまま。空室がこれだけ続いても、条件を検討することもしていませんでした。

 

ですが、考えてみてください。募集中は賃料収入がゼロであるだけではありません。収入はなくとも、支出はあるのです。オフィスを使っていなくても水道、光熱費の基本料金は必要ですし、管理費用も払わなくてはいけません。規模が大きいビルであれば、その額は莫大になります。それを本業の利益で穴埋めするのは、はたして経営者として正しいあり方でしょうか?

 

本来、経営の収支はもっと全体から考えるべきです。ビル経営は1年、2年ではなく、20年、30年と続くものですから、長期的にトータルで考えるのが基本なのです。もし、賃料を下げるにしても、定期借家契約を使うことで、値下げを固定化させない手もあります。そうした手段を検討することなく、当初設定した賃料に固執、空室期間を延長させてしまうのは、あまりに近視眼的な経営です。

 

幸い、このビルでは社長に競合物件と市場の動向を冷静に分析してもらい、具体的な事例から収支を再検討することになりました。その結果、社長自らがビル経営自体を根本から見直すこととなり、見直し後ほどなく空室を解消することができました。

ビル経営者の「成功させる」という強い思いが大切

ちなみに長年、ビル経営に携わってきた私の経験では、社長あるいはオーナー自らが空室対策に乗りだしてきたときには成功の確率が高く、逆に他人任せのままという場合には、なかなかうまくいきません。成功させなくてはいけないという意識の高さが成否を決するわけで、他人に任せること自体は否定しませんが、最終的な決断は社長あるいはオーナーのもの。空室対策にはそうした強い思いも大事です。

 

以上を踏まえて、本事例の失敗の理由をまとめておきます。

 

①競合物件、市場動向、自ビルのメリット、デメリットを把握していなかった

②オーナーに空室解消への強い意志がなかった

③全体的な収支計画がなかった

本連載は、2010年12月21日刊行の書籍『空室を抱える中小オフィスビルオーナーのための満室ビル経営』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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連載中小オフィスビルオーナーのための「満室」経営術

サブリース株式会社 代表取締役

1946年岩手県宮古市生まれ。1969年に都留文科大学を中退、東都商事株式会社に入社。貸事務所仲介営業に従事し、入社から5カ月で営業管理職兼トップ営業マンと して活躍する。その後、同社を3年10カ月で退社、26歳 で独立を果たす。40年以上にも及ぶ業界経験のなかで、 貸事務所の仲介のみならず、貸ビルの設計・開発ならびに リフォームを含めたビルのコンサルティングも手掛け、多く の空室に悩むオフィスビルを再生させてきた。また、業界に先駆け、貸事務所の転貸業(サブリース)を考案するな ど、その豊富な経験を活かし、現在はサブリース株式会社 にて、オフィスビルの設計、開発、再生に力を注いでいる。

著者紹介

空室を抱える 中小オフィスビルオーナーのための 満室ビル経営

空室を抱える 中小オフィスビルオーナーのための 満室ビル経営

佐々木 泰樹

幻冬舎メディアコンサルティング

サブプライム問題、リーマンショックを経て、悪化した賃貸オフィスビル市場は依然厳しく、地方都市では都心以上に苦しい状況にあります。そのような中、特に中小規模のオフィスビルは、バブル期以前に建った築20年以上のビルが…

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