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連載法律家による「FinTech」入門【第7回】

資産運用におけるロボアドバイザービジネスの現状~米国編①

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資産運用におけるロボアドバイザービジネスの現状~米国編①

今回から、資産運用におけるロボアドバイザーについて、そのビジネスの現状を見ていきます。まずは、米国におけるロボアドバイザービジネスの特徴についてお伝えをします。 ※本連載は、西村あさひ法律事務所の有吉尚哉弁護士、本柳祐介弁護士、水島淳弁護士、谷澤進弁護士の編著書籍、『FinTechビジネスと法 25講』(商事法務)の中から一部を抜粋し、近年、大きな注目を集めている「FinTech」の概要や関連法制について紹介していきます(本稿は、上記書籍の14講の抜粋です)。

最適なポートフォリオを自動的に策定して安価で提供

ロボアドバイザーとは、一般的には、スマートフォンやPCを利用し、アルゴリズムを用いて分析された最適ポートフォリオに従った資産運用を安価で提供するビジネスモデルである。ロボアドバイザーの多くは投資一任を含むオンライン資産運用サービスの形で提供されるが、ネットを通じた有償ファイナンシャルプランニングのみが提供されるものなども広義のロボアドバイザーとされている(1)

 

顧客は、原則として、ロボアドバイザー業者が有するウェブサイトにおいて、年齢、リスク許容度、財務状況、投資経験などを入力し、その情報をもとに、ロボアドバイザー業者は最適なポートフォリオを自動的に策定する。また、いったん策定されたポートフォリオは、顧客の入力した投資方針の年齢やリスク許容度の変動に応じて各資産への配分比率が自動的に変化する仕組みになっている。

 

ロボアドバイザーは米国で発祥したものといわれているが、日本においても近年急速に拡大している。以下、米国において発展したロボアドバイザーの特徴、ビジネスモデル、近年のロボアドバイザー市場を踏まえた上で、日本におけるロボアドバイザービジネスと金融商品取引法の業登録との関係で問題になる点を論じる。

スマートフォンのアプリ等を活用して人件費を抑制

1.米国におけるロボアドバイザービジネス

 

米国では、2000年代後半からロボアドバイザービジネスが広がりをみせ、2014年12月末時点で20社超がサービスを提供し、関連残高は約190億ドル(約2兆3,000億円)となっている(2)

 

ロボアドバイザーとは、ネットを通じたセルフ・プロファイリングと分散ポートフォリオの自動運用を組み合わせたサービスを一般に指し、ファイナンシャルアドバイザーやプライベートバンカーと対比した造語である。プライベートバンカー等が金融機関の店頭、顧客の自宅や勤務先における対面での資産運用に関する相談を行うのに対して、ロボアドバイザーは、スマートフォンなどのネットを基本チャンネルとして資産運用を提供するものが主流である。

 

①ロボアドバイザーの特徴

 

ロボアドバイザーの特徴としては以下の点が挙げられる(図表)。

 

(ⅰ)一般的な個人投資家(非富裕層)・Millennials(3)向け

 

実際にほとんどのロボアドバイザーで個人投資家(非富裕層)の割合が約76%から99%といわれており、ロボアドバイザーの顧客の90%以下が50歳以下であるといわれている(4)。ミレニアル世代(Millennials)は、サブプライムローン問題やリーマンショックなどに起因した金融危機を目の当たりにしているため、金融機関に対する信頼が薄い一方で、資産形成については、ベビーブーマー世代(5)やジェネレーションX世代(6)よりも意識が高く、資産運用を始める年齢も早いことから、新しい資産形成の方法としてロボアドバイザーに注目が集まっているものと考えられている(7)

 

(ⅱ)対面ではなく、スマートフォン等を利用

 

資産形成期の投資家の中には、従来のようなFAによる対面サービスへのこだわりを持たない顧客も増えており、特にデジタルネイティブ、インターネットネイティブといわれる情報リテラシーも高いミレニアル世代(Millennials)をその顧客層への組み込みに成功していることから、必然的に、スマートフォンでの手軽な利用が喜ばれている。

 

(ⅲ)人件費を抑制し上場投資信託(ETF)を活用することで手数料が低く設定されている

 

資産の投資・運用アドバイザリーという行為は、以下の3つのステップから成り立っているところ、ロボアドバイザーは、かかる3つのステップを自動化しウェブ経由で提供することに主眼を置いている。このことから、人件費が安くすみ、運用もオペレーションも、フルサービスの総合証券会社が平均1%程度の手数料を取っている中、ロボアドバイザーは0.25%~0.35%程度の手数料とすることが可能と謳われている(8)

 

投資・運用アドバイザリーの3つのステップ

 (ア)顧客の誘導と関係維持

 (イ)ポートフォリオの分析

 (ウ)投資に係る助言・運用行為

 

【図表】ロボアドバイザーとプライベートバンカーの対比

(出典)  和田敬二朗=岡田功太「米国で拡大する『ロボ・アドバイザー』による個人投
資家向け資産運用」野村資本市場クォータリー71 号(2015)。
(出典)  和田敬二朗=岡田功太「米国で拡大する『ロボ・アドバイザー』による個人投
資家向け資産運用」野村資本市場クォータリー71 号(2015)。

 

脚注

(1)和田敬二朗=岡田功太「米国で拡大する『ロボ・アドバイザー』による個人投資家向け資産運用」野村資本市場クォータリー71号(2015)。

(2)和田=岡田・前掲注⑴。

(3)Millennialsとは、1980年頃から2000年頃に出生した米国若年層を指す。(4)“WealthfrontHits$1BInAssets”ETF.com,June2014

(5)ベビーブーマー世代とは、1946年から1964年までの間に生まれた世代を指す。米国のソーシャルセキュリティ(社会保障)制度にある程度信頼を置いてきた世代とされている(後掲注7参照)。

(6)ジェネレーションX世代とは、1965年から1978年までの間に生まれた世代を指す。米国のソーシャルセキュリティ(社会保障)制度に疑問を持ち始め、また、勤務先が401kを導入し始めた世代といわれている(後掲注7参照)。

(7)“Technologyischanginghowweretire”CRUNCHNETWORK,March23,2016.

(8)渡邊竜士「FinTechその(1)、ロボ・アドバイザー(自動投資助言サービス)をご存じですか?」トムソン・ロイターViewPoint(2015年6月1日)。

本連載は、2016年7月15日刊行の書籍『FinTechビジネスと法 25講』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

片上 尚子

西村あさひ法律事務所・弁護士
ニューヨーク州弁護士 

2002年神戸大学法学部卒業、2005年司法修習終了(58期)、2012年ノースウエスタン大学(LL.M./Kellogg Program)卒業。
【主な著書等】「Third Edition(Japan Chapter)」『The Real Estate Law Review』(共著、Law Business Research、2015)、『Q&A金融商品取引法の解説』(共著、金融財政事情研究会、2007)

(第14講担当)

著者紹介

有吉 尚哉

西村あさひ法律事務所・パートナー 弁護士
京都大学法科大学院非常勤講師 

2001年東京大学法学部卒業、2002年司法修習終了(55期)、2010年〜2011年金融庁総務企画局企業開示課専門官。
【主な著書等】『資産・債権の流動化・証券化(第3版)』(共編著、金融財政事情研究会、2016)、『新株予約権ハンドブック(第3版)』(共編著、商事法務、2015)、『平成26年会社法改正と実務対応(改訂版)』(共著、商事法務、2015)、『要綱から読み解く債権法改正』(共編著、新日本法規、2015)、『論点体系金融商品取引法〔1〕・〔2〕』(共著、第一法規、2014)、『最新金融レギュレーション』(共編著、商事法務、2009)

(第4講・第10講担当)

著者紹介

本柳 祐介

西村あさひ法律事務所・パートナー 弁護士
ニューヨーク州弁護士 

2001年早稲田大学法学部卒業、2003年司法修習終了(56期)、2010年コロンビア大学ロースクール(LL.M.)卒業、2009年〜2010年デービス・ポーク・アンド・ウォードウェル法律事務所(在ニューヨーク)勤務、2010年〜2012年ドイツ証券出向。
【主な著書等】『投資信託の法制と実務対応』(共著、商事法務、2015)、『ファンド契約の実務Q&A』(商事法務、2015)、『ファンドビジネスの法務(第2版)』(共著、金融財政事情研究会、2013)、「上場企業の第三者割当をめぐる法整備の概要」ジュリスト1470号(共著、2014)、「外国ETF・外国ETFJDRの上場に関する法的論点と実務」旬刊商事法務2034号(2014)、「並行第三者割当の法的論点と実務」旬刊商事法務2024号(共著、2014)

(第2講・第9講担当)

著者紹介

水島 淳

西村あさひ法律事務所・パートナー 弁護士 

2004年東京大学法学部卒業、2005年司法修習終了(58期)、2013年スタンフォード大学ビジネススクール(MBA)卒業、2012年〜2014年米国WHILL,Inc.ビジネスディレクター、2007年〜2010年および2015年成蹊大学法科大学院非常勤講師。
【主な著書等】『租税法概説(第2版)』(共著、有斐閣、2015)、『企業取引と税務否認の実務』(共著、大蔵財務協会、2015)、『ビジネスパーソンのための企業法務の教科書』(共著、文藝春秋、2012)、「シティグループと日興コーディアルグループによる三角株式交換等の概要〔下〕」旬刊商事法務1833号(共著、2008)

(第1講担当)

著者紹介

谷澤 進

西村あさひ法律事務所・弁護士
ニューヨーク州弁護士 

2004年東京大学法学部卒業、2006年司法修習終了(59期)、2012年ヴァンダービルト大学ロースクール(LL.M.)卒業、2012年〜2013年金融機関(在ニューヨーク)に出向、2013年〜2014年外資系証券会社(在東京)に出向。
【主な著書等】『新株予約権ハンドブック(第3版)』(共著、商事法務、2015)

(第6講・第12講担当)

著者紹介

連載法律家による「FinTech」入門

FinTechビジネスと法 25講

FinTechビジネスと法 25講

有吉 尚哉,本柳 祐介,水島 淳,谷澤 進 編著

商事法務

西村あさひ法律事務所所属の弁護士が、「FinTechビジネス」のさまざまな分野ごとに概要を紹介しつつ、それらのビジネス遂行上に必要な法令の基礎知識・適用関係を、平成28年5月25日に成立した改正Fintech関連法も踏まえて解説…

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