前回は、不動産の「代襲相続」に関するトラブルについて解説しました。今回は、不動産にかかってくる相続税が高額であっても、適用を受けられれば大幅な税額軽減が可能となる「小規模宅地等の特例」について見ていきます。

財産は自宅の敷地と建物だけなのに・・・

相続税と言うと、「不動産をたくさん持っている資産家が払うもの」というイメージかあるかもしれません。しかし、都心のような地価の高い地域に自宅を構えている人は、その自宅の敷地と建物くらいしか財産らしい財産を持っていなくても、相続税が課税されることがあります。

 

実際、東京の千代田区や港区は、大半の土地が1㎡あたり1 0 0万円以上します。中央区、新宿区、品川区、世田谷区でも、1㎡あたり50万円以上の地域が広く分布します。また、都心ほどでなくても、首都圏や地方の大都市になれば地価はそれなりに高いものです。こうした地域に少し広めの土地があれば、地価だけで1億円を超えても不思議ではありません。また、著書の第1章に詳述しましたが、評価額だけが高い土地というものも存在します。


そのような土地をお持ちの場合、大地主であれば、自宅以外の土地を売却したり物納したりして納税できるかもしれません。納税額を払っても痛くないくらいキャッシュが潤沢にあるお宅なら、そもそも問題ないでしょう。

 

しかし、そのような〝納税の当て〞がある人というのは少数派で、大多数の人は相続税の納税に困るのではないでしょうか。納税できなければ、今住んでいる自宅を売らなければならないかもしれません。そうしたら、明日から住む家がなくなってしまいます。

「小規模宅地等の特例」で評価は大きく圧縮可能

そのようなことのないように、相続税には「小規模宅地等の特例」という税軽減の措置が設けられています。

 

小規模宅地等の特例とは、相続や遺贈によって居住用宅地(自宅敷地のこと)を取得した場合において、一定の面積まで、通常の土地評価額から80%減額できる、というものです。1億円の自宅敷地が80%引きの2000万円の評価になれば、相続税の基礎控除額の枠内に収まり、相続税がゼロになるケースが圧倒的に増えます。ただし、この特例には次のような要件があります。


①宅地についての要件

●相続開始直前において、被相続人または被相続人と生計を一にしていた親族の居住用に供されていた宅地であること(「生計を一にする」とは、生活費全般を1人が賄っている、という意味です。同居している、もしくは別居であっても送金を行うなど、生活費に一体性が見られる状態を言います)

●建物や構築物の敷地用に供されていたこと

●240㎡(平成27年1月1日より330㎡)までを限度とすること


②取得者についての要件

●配偶者は無条件で適用される
●被相続人と同居していた親族。ただし、相続開始の時から相続税の申告期限まで引き続きその家屋に居住しており、その宅地等を有していること
●被相続人と同居していない親族(通称「家なき子」。これについては、後述します)
これらの要件を満たさない場合は、特例が適用されません。よって、80%の評価減は受けられなくなります。


小規模宅地等の特例は、使い方が他の特例に比べて簡単で、節税効果が大きいという特徴がありますので、ぜひ活用したいものです。

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    本連載は、2013年12月2日刊行の書籍『ワケあり不動産の相続対策』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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    倉持 公一郎

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