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連載法律家による「FinTech」入門【第4回】

課題解決アプローチで分類する「FinTech」のカテゴリー①

FinTech

課題解決アプローチで分類する「FinTech」のカテゴリー①

今回は、課題解決アプローチで分類する「FinTech」のカテゴリーについて見ていきます。※本連載は、西村あさひ法律事務所の有吉尚哉弁護士、本柳祐介弁護士、水島淳弁護士、谷澤進弁護士の編著書籍、『FinTechビジネスと法 25講』(商事法務)の中から一部を抜粋し、近年、大きな注目を集めている「FinTech」の概要や関連法制について紹介していきます(本稿は、上記書籍の1講の抜粋です)。

「社会の問題解決」「差別化」という視点の重要性

前回の続きである。

 

連載第2回のようにFinTech を広く捉えると、そこに含まれる事業は実に多岐にわたる。そして、それらの事業に適用される法規制は決済、証券、保険といったそれらが属する事業分野に応じて大きく異なるため、それらを分類するにあたっては、事業分野の切り口によるのがまず第1であり、本書『FinTechビジネスと法 25講』の第5講以降の各講もこういった切り口から論じる。

 

一方で、ある技術についてそれがどのようにビジネスに利用できるのかを検討する場合、あるいは、実際にビジネスを構築し、また、ビジネスを評価する場合には、事業分野という切り口よりもむしろ、それらの技術やビジネスがどういったアプローチで社会の問題を解決し、また、差別化を打ち出せるのか、という視点も重要であると思われる。

 

そこで、本講ではそういった課題解決アプローチからの分類でFinTechを概観し(図表1)、それぞれに該当すると思われるビジネスのいくつかの例を挙げ、法的論点となり得る部分を概括的に挙げてみたい。

 

もちろん、個々のビジネスモデルにはさまざまな要素が含まれているためここでの分類は相互に排他的なものではなく、また、課題解決アプローチからの分類としてもさまざまな切り分けの視点があり得る中であくまでも1つの分類の試みと理解されたい。

 

【図表1】課題解決アプローチの類型

多人数の少額取引を効率的に集約するケース

1.プラットフォーム化による多人数・少額取引の集約・マッチング

 具体例

① クラウドファンディング(本書『FinTechビジネスと法 25講』第9 講、第10 講、第11 講)

② シンジケート可能な投資SNS(ソーシャルネットワーク)(本書第12 講)

③ P2P(個人間)レンディング(本書第8 講)

 

オンラインまたはモバイルでプラットフォームを構築することにより、窓口や書面ベースでのサービス提供と比較して、より低コストでより多人数の潜在顧客に対するリーチが可能となる。これによって、従来の金融事業者が費用対効果の関係でカバーできなかった多人数の少額の取引を効率的に集約し、マッチングするサービスを提供するビジネスが出現している。

 

各種のクラウドファンディングは、個々ではごく少額の投融資や商品購入額をある程度のロットをもった投融資や商品購入にまとめるビジネスである。また、クラウドファンディングプラットフォームに似た類型として、個々のSNSユーザーがシンジケートとして集団で投資を行うことができる投資SNS プラットフォームなども上記のような特性を活かしたビジネスであると言える。

 

また、P2Pレンディングについても限られた数の個々人ではビジネスとして成立しないものを、オンラインプラットフォームを活用し多人数参加させることでマッチングを容易にし、多人数・少額取引を収益事業として成立させているビジネスであると言える。

 

これらのビジネスに関しては、多人数を対象とするため、それが証券である場合には金融商品取引法上の開示規制・業規制との関係に注意が必要となり、また、消費者契約法、特定商取引法など消費者保護法制の観点からの検討が必要な場合もある。

 

さらに、取引当事者となるユーザーが貸金業法上の登録など必要な許認可を有していないことを前提に事業を構築しなければならないため、その観点からのサービス提供の可否や事業ストラクチャーの構築が必要となってくるものと言える(次回に続く)。

本連載は、2016年7月15日刊行の書籍『FinTechビジネスと法 25講』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

水島 淳

西村あさひ法律事務所・パートナー 弁護士 

2004年東京大学法学部卒業、2005年司法修習終了(58期)、2013年スタンフォード大学ビジネススクール(MBA)卒業、2012年〜2014年米国WHILL,Inc.ビジネスディレクター、2007年〜2010年および2015年成蹊大学法科大学院非常勤講師。
【主な著書等】『租税法概説(第2版)』(共著、有斐閣、2015)、『企業取引と税務否認の実務』(共著、大蔵財務協会、2015)、『ビジネスパーソンのための企業法務の教科書』(共著、文藝春秋、2012)、「シティグループと日興コーディアルグループによる三角株式交換等の概要〔下〕」旬刊商事法務1833号(共著、2008)

(第1講担当)

著者紹介

有吉 尚哉

西村あさひ法律事務所・パートナー 弁護士
京都大学法科大学院非常勤講師 

2001年東京大学法学部卒業、2002年司法修習終了(55期)、2010年〜2011年金融庁総務企画局企業開示課専門官。
【主な著書等】『資産・債権の流動化・証券化(第3版)』(共編著、金融財政事情研究会、2016)、『新株予約権ハンドブック(第3版)』(共編著、商事法務、2015)、『平成26年会社法改正と実務対応(改訂版)』(共著、商事法務、2015)、『要綱から読み解く債権法改正』(共編著、新日本法規、2015)、『論点体系金融商品取引法〔1〕・〔2〕』(共著、第一法規、2014)、『最新金融レギュレーション』(共編著、商事法務、2009)

(第4講・第10講担当)

著者紹介

本柳 祐介

西村あさひ法律事務所・パートナー 弁護士
ニューヨーク州弁護士 

2001年早稲田大学法学部卒業、2003年司法修習終了(56期)、2010年コロンビア大学ロースクール(LL.M.)卒業、2009年〜2010年デービス・ポーク・アンド・ウォードウェル法律事務所(在ニューヨーク)勤務、2010年〜2012年ドイツ証券出向。
【主な著書等】『投資信託の法制と実務対応』(共著、商事法務、2015)、『ファンド契約の実務Q&A』(商事法務、2015)、『ファンドビジネスの法務(第2版)』(共著、金融財政事情研究会、2013)、「上場企業の第三者割当をめぐる法整備の概要」ジュリスト1470号(共著、2014)、「外国ETF・外国ETFJDRの上場に関する法的論点と実務」旬刊商事法務2034号(2014)、「並行第三者割当の法的論点と実務」旬刊商事法務2024号(共著、2014)

(第2講・第9講担当)

著者紹介

谷澤 進

西村あさひ法律事務所・弁護士
ニューヨーク州弁護士 

2004年東京大学法学部卒業、2006年司法修習終了(59期)、2012年ヴァンダービルト大学ロースクール(LL.M.)卒業、2012年〜2013年金融機関(在ニューヨーク)に出向、2013年〜2014年外資系証券会社(在東京)に出向。
【主な著書等】『新株予約権ハンドブック(第3版)』(共著、商事法務、2015)

(第6講・第12講担当)

著者紹介

連載法律家による「FinTech」入門

FinTechビジネスと法 25講

FinTechビジネスと法 25講

有吉 尚哉,本柳 祐介,水島 淳,谷澤 進 編著

商事法務

西村あさひ法律事務所所属の弁護士が、「FinTechビジネス」のさまざまな分野ごとに概要を紹介しつつ、それらのビジネス遂行上に必要な法令の基礎知識・適用関係を、平成28年5月25日に成立した改正Fintech関連法も踏まえて解説…

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