前回は、血管の「酸化」が原因である動脈硬化の発生メカニズムについて説明しました。今回は、認知症が起こるメカニズムと「脳の酸化」との関係を見ていきます。

脳の細胞が壊れることで起こる「認知症」

脳は、私たちのあらゆる活動をコントロールしている司令塔です。それがうまく働かなければ、身体活動も精神活動もスムーズに行えなくなります。

 

認知症とは、脳の細胞が死んでしまったり、働きが悪くなったためにさまざまな障害が起こり、生活する上で支障が出ている状態(およそ6カ月以上継続)を指します。認知症にはいくつかタイプがありますが、日本人に多く見られるのは「脳血管性認知症」と「アルツハイマー型認知症」の二つです。以前は脳血管性認知症が多かったのですが、近年はアルツハイマー型認知症の方が多くなっています。

 

脳血管性認知症は、脳の血管が詰まってその先に血液が回らなくなることで起こります。脳の細胞に血液が届かなくなると、活動するのに必要な栄養が摂れなくなりますから機能が低下、あるいは細胞死を起こしてしまうため、もの忘れがひどくなり、やがて認知症に至ります。脳血管性認知症の場合は、段階的に症状が悪化していくのが特徴です。これは、動脈硬化をはじめとする生活習慣病に起因します。

 

一方、アルツハイマー型認知症は、脳の実質そのものが破壊されてしまう「アルツハイマー病」によって引き起こされています。脳萎縮といって脳の容量が減少し、神経細胞が大量に変性しているのが特徴です。

 

いずれの場合も、脳の細胞が壊れることによって直接起こる症状が、記憶障害、見当識障害、理解・判断力の低下、実行機能の低下などです。これらの症状のために周囲で起こっている現実を正しく認識できなくなります。

 

本人がもともと持っている性格、環境、人間関係などさまざまな要因がからみ合って、うつ状態や妄想のような精神症状や、日常生活への適応を困難にする行動上の問題が起こってきます。

 

この他、認知症にはその原因となる病気によって多少の違いはあるものの、さまざまな身体的な症状も現れてきます。特に脳血管性認知症の一部では、早い時期からまひなどの身体症状が合併することもあります。アルツハイマー型認知症でも、進行すると歩行が拙くなり、終末期まで進行すれば寝たきりになってしまう人も少なくありません。ときには、知的機能が全体的に低下するため、人格障害や記憶障害が起こりやすく、障害を自覚する認識力も失われることがあります。

アルツハイマー病を引き起こすのは「活性酸素」?

なぜアルツハイマー病を発症するのか、その原因はまだはっきり解明されたわけではありません。ただ、脳の神経細胞の周辺には「老人斑」(シミのような斑点ができること)と呼ばれるアミロイドβ(Aβ)という特殊なタンパク質が発生したり、糸状に神経原線維変化が起こることで、脳神経に悪影響を及ぼし、情報伝達の効率を下げて脳全体として認知症を引き起こすと考えられています。

 

その原因として挙げられているのが、活性酸素による脳への影響です。Aβによって多量の活性酸素が発生し、その活性酸素が脳の神経細胞を破壊しているというわけです。

 

【図表 正常な脳と萎縮した脳を写真で比較】

本連載は、2015年6月10日刊行の書籍『「病気知らず」の体をつくるビール健康法』から抜粋したものです。記載内容は予防医学の観点からの見解、研究の報告であり、治療法などの効能効果や安全性を保証するものではございません。

「病気知らず」の体をつくる ビール健康法

「病気知らず」の体をつくる ビール健康法

大川 章裕

幻冬舎メディアコンサルティング

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