今回は、歯科医院の税務調査で指摘されやすいポイントの具体例を紹介します。 ※本連載は、中央税務会計事務所の税理士・中島由雅氏と、株式会社アックスコンサルティングの代表取締役・広瀬元義氏の共著『これ1冊で安心 歯科医院経営のすべてがわかる本』(あさ出版)の中から一部を抜粋し、歯科医院の節税、税務調査対策について解説します。

院内に設置した自動販売機の売上も忘れず申告

●重加算税の対象となる雑収入

携帯電話に使われている金属を回収すればお金になるように、患者さんの歯から取れた金歯などは、滅菌をすれば再利用できるため、価値があります。歯科治療では歯に金属を入れるだけではなく、すでに患者さんの歯に入っている金属を回収することも多いため、そうした廃棄金属の売却代金は、必ず雑収入として計上しなければなりません。医院の規模が大きければ100万円単位になることがあるため、必ず目を付けられるポイントです。

 

また、駐車場や院内に自動販売機が設置されている場合は、その収入が計上されているかどうかもチェックされます。

 

●技工所に預けている在庫(棚卸資産)

歯科治療に使う材料が経費となるのは、実際に使われている分だけです。未使用状態で倉庫に残っている分は、棚卸資産として経費から除外しなければいけません。

 

薬品など、院内に置いてあるものに関しては多くの先生が気を付けているのですが、技工所に預けている在庫に関しては、計上し忘れているケースが結構あります。歯科治療の材料である金属は、あらかじめ歯科医院が購入して、技工所に預けておくスタイルが一般的です。

 

金属は、いつ・どれだけ預かったか、どの患者の何番の歯を作ってどれだけ金属を使用したか、いつ納品したかなどが、書類として残っています。そのため、故意でなくとも在庫を棚卸資産として計上していなければ、必ず指摘されます。

徹底的に調べられる自由診療の領収書

●自由診療の領収書

社会保険診療は、レセプト請求から実際にお金が振り込まれる流れが完全に見える、ガラス張りの制度です。一方自由診療は、領収書を出さなければ収入を隠すことができてしまいます。

 

最近は自由診療を受けた患者さんの多くが医療費控除を申告しているため「領収書隠し」による脱税は減っています。しかし、電子申告では領収書の提出が省略できること、ホワイトニングなど医療費控除が使えないものに関しては、患者さんから「領収書はいらない」と言われるケースもあるため、税務調査では自由診療の領収書が徹底的に調べられます。

 

●インプラントは計上のタイミングに気を付ける

インプラントは治療本数が多ければ数百万円かかることがあり、治療期間も3カ月から半年以上と長期になるため「分割払いの患者さんが支払い続けることができずに中断した」「一度中断したが、半年後に再開した」というケースは珍しくありません。このため領収書を前年の終わりに発行しているのに、売上の計上を翌年に行うなど、ややこしい状況が発生しやすくなります。

 

税務調査で調査官は、売上の計上漏れがないか厳しく目を光らせています。高額な自由診療が年をまたぐ場合は、必ず指摘を受けるので、注意しなければいけません。

本連載は、2015年7月1日刊行の書籍『これ1冊で安心 歯科医院経営のすべてがわかる本』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

これ1冊で安心 歯科医院経営の すべてがわかる本

これ1冊で安心 歯科医院経営の すべてがわかる本

中島 由雅,広瀬 元義

あさ出版

新規開業の方法、アルバイトに高い売上を上げてもらう手立て、決算書の見方から、税務調査対策まで、歯科医院の経営を成功させるため実務に直結する具体的なアドバイスをお伝えします。 「コンビ二より激しい」といわれる歯科…

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