税務調査員に「経費」として認めさせる説明の仕方

今回は、税務調査員に「経費」として認めさせる説明の仕方を紹介します。※本連載は、中央税務会計事務所の税理士・中島由雅氏と、株式会社アックスコンサルティングの代表取締役・広瀬元義氏の共著『これ1冊で安心 歯科医院経営のすべてがわかる本』(あさ出版)の中から一部を抜粋し、歯科医院の節税、税務調査対策について解説します。

調査員は経費の「証拠・動機・事実の証明」を探す

個人事業者の場合、最も税率が大きくなってしまうのは所得税です。そのため院長はなるべく多くの経費を計上して、事業所得を減らす努力をします。しかし、何が経費になるのか、正しく理解している先生はあまりいません。

 

経費は、領収書という証拠だけでは認めてもらえません。「Aはこういう理由で事業につながる出費である」という動機と、実際にその通りに使用しているという事実の証明があって、初めて経費として認められるのです。

 

たとえば「4ドアのベンツは経費になりやすい」というウワサがありますが、「4ドア」「ベンツ」という理由では、経費になりません。

 

「院長である自分が医院の売上のほとんどを稼いでいるので、追突されて重大なケガを負うようなことがあれば、医院が潰れてしまう。そのため、頑丈で安全性が高いベンツで移動する必要がある」このような説明が求められます。

 

また、歯科医院は営業活動をしないため、お歳暮の費用はふつう経費に計上されません。しかし「学会でA先生から○○という技術を学んでおり、その技術によって自由診療率が上がったので、お歳暮を渡した」と、事業に繋がる出費であることを説明できれば、経費として認められます。

 

とにかく大事なのは、経費として計上するものは「個人的趣味」ではなく「業務上必要である」と証明できることです。勤務医時代に自分が使ったお金を経費として経理担当者に申請するとき、その使い道の説明によって通ったり通らなかったりしていたと思います。その感覚を忘れないようにしておきましょう。

 

税務調査官が来たときは、「趣味」と疑われるようなものは出さないようにすることが得策です。

 

たとえば応接室に家族旅行に行った際の写真などがたくさん飾られていると、「写真を撮るのがお好きなんですね」「はい、カメラが趣味です」このやりとりで、口腔内用撮影のために購入したカメラは、経費にできなくなります。実際に医院で使用していても、家族旅行の記念撮影用だと自分から告白してしまったためです。

 

また、1つの地方への出張費が何度も計上されている場合、「ご出身はどこですか?」「生まれは九州です」「ご実家もそちらですか。時々帰省されているのでは?」「はい。だいたい月に1回は帰っています」「じゃあ、毎月計上している九州への出張は帰省に使っているのですね」このように、上手く誘導尋問されてしまうことがあります。

 

税務調査官はこちらの「証拠」を疑って「動機」「事実の証明」を確認しに来ているのだということを忘れずに、しっかりとした答えを準備しておきましょう。

 

関連するすべての項目が「経費か否か」の判断の対象に

また「事実の証明」を確かなものにするためにも、支出の用途は普段からしっかりとメモを残しておくことが肝要です。

 

税務調査の内容は昨年のことばかりではなく、3年前や5年前の支出にまで及びます。大きなお金を投じた設備等ならともかく、日常的に使っている接待交際費やタクシー代などを、細かく覚えている人などいません。しかし説明できなければ経費として認められないのです。

 

何よりも怖いのは「これはダメ」「これもダメ」と、領収書1つひとつに対して否認するのではなく、「これがダメだから、この部分に関係する支出は全部ダメです」と関連事項まで串刺しで否認されることです。オセロの端と端を取られてすべて裏返ってしまうように、複数の項目が一気に経費でなくなってしまいます。

 

たとえば先ほどの例で言えば、院長の安全を守るために使われているはずのベンツが普段から自宅の駐車場にあり、チャイルドシートや家族の荷物などが乗っていると、「この車は奥さんがお子さんの送り迎えに使っていますね」と言われて、車に関する費用がすべて否認されてしまいます。つまり、3年分や5年分の車検、自動車税、ガソリン代などがすべて、経費とみなされなくなってしまうのです。

 

本連載は、2015年7月1日刊行の書籍『これ1冊で安心 歯科医院経営のすべてがわかる本』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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連載院長必読!歯科医院の節税と税務調査対策

中央税務会計事務所 所長補佐 税理士・CFP®

1974年埼玉県生まれ。埼玉県さいたま市の税理士事務所「中央税務会計事務所」2代目、職員数80名超クライアント数600件超、税務署出身者(法人・資産税)多数在籍のもと、個人事業から大法人まで様々な業種を関与。なかでもクリニックに特化し、医療法・診療報酬改定の助言、開業支援、医療法人化等も行っている。また、セミナー講師として商工会議所を中心に全国各地で積極的に行っている。親身な姿勢と専門用語を一切使わない手法がわかりやすいと好評を得ている。

歯科医院を応援する会計事務所の会会員。

その他著書に『なぜ名刺交換しても仕事につながらないのか?』(同友館・共著)、『税理士のための医業顧客獲得法』(中央経済社・共著)がある。

著者紹介

株式会社アックスコンサルティング 代表取締役

1988年、会計事務所とその関与先の成功を支援するコンサルティング専門会社として創業。会計事務所の経営支援、一般企業の経営支援、資産家の不動産コンサルティングを中心に業務を展開。
2010 年、相続・贈与に取り組む専門家のネットワーク「アックス資産税パートナーズ®」を発足、「相続・贈与相談センター®」としてサービスを展開。
2011 年、スモールビジネスの成功を支援する会計事務所の全国フランチャイズ「Q-TAX®」を発足。
会計事務所および経営者向けセミナーの講演は年間50 回以上。これまで出版した著書は45冊以上、累計発行部数は48万部を超える。

著者紹介

これ1冊で安心 歯科医院経営の すべてがわかる本

これ1冊で安心 歯科医院経営の すべてがわかる本

中島 由雅,広瀬 元義

あさ出版

新規開業の方法、アルバイトに高い売上を上げてもらう手立て、決算書の見方から、税務調査対策まで、歯科医院の経営を成功させるため実務に直結する具体的なアドバイスをお伝えします。 「コンビ二より激しい」といわれる歯科…

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