本連載は、一級建築士・須藤桂一氏の書籍『まちがいだらけのマンション管理タブー集』(誠文堂新光社)の中から一部を抜粋し、マンション管理組合の理事や役員の方が間違えやすい点、その結果として生じる問題などについて、1つずつ具体的に取り上げ、わかりやすく解説します。

「理事の引継ぎなんて立ち話で十分でしょ?」

「ほのぼのマンション」の管理組合では、管理会社による新旧理事の引継ぎのサポートがありませんでした。そこで、自分たちでやることにしたのですが・・・。

 

理事長:私、今度、理事長をやることになった200号室のアラタニです。

 

旧理事長:ご苦労様です、フルイです。はずれくじでしたか、災難でしたな(笑)。

 

理事長:はい(笑)。あのー、一応、引き継ぎをと思いまして。

 

旧理事長:頭が痛いのは、駐輪場ですかね。大規模修繕は管理会社に任せとけばいいし。だいたい、管理会社に聞けば何とかなりますよ。

 

理事長:ありがとうございます!

引継ぎでは、必ず重要事項を書面で残す

輪番制を導入し、理事が1年ごとに総入替する管理組合において、引継ぎがしっかり行われているところはほとんどないのが現状だと思います。

 

総入替になってしまうケースでは、前理事会が一生懸命に取り組んできた活動が新理事会に継承されることが難しく、再度「イチからの仕切り直し」になってしまいます。それが、何期にも渡って行われてしまうと、そのマンション独自での問題点の抽出や、改善事項がうやむやになってしまい、管理会社任せの管理組合になりかねません。

 

実際のところ、どのような引継ぎが行われているのかと言えば、よくあるパターンは新旧の理事会役員が一度だけ集まり、口頭で簡単に伝える程度です。重要なポイントを書面に残すような引継ぎは、あまり行なわれていないのが実情です。

 

本来、サポートすべき管理会社は、なぜ何も指摘しないでしょうか。

 

1つには「引継ぎをしっかりして、新理事のモチベーションが上がったりしたら大変だ」という理由が考えられますが、管理会社にとって都合の悪いことを闇に葬る良い機会でもあるとも考えているようです。

 

そこで、自分たちだけでもしっかりした引き継ぎを行うポイントを挙げてみました。1つ目は「マンション管理会社へ依頼中の事項」、2つ目は「前期理事会から新理事会への懸案・心配事項」などの進行中の事案について、書面にまとめたものを渡しましょう。

 

もちろん、引継ぎの場でも口頭で説明しますが、書面に表すことで明確化されるので、より伝わりやすくなりますし記録として残せます。

 

その他、「引継ぎ重要保管物リスト(印鑑・損害保険証券・通帳等)」「引継ぎ資料・物品リスト(ファイル・データ記録媒体・物品等)」といった物品に関する情報は、あらかじめリストを作成しておけば、毎年、加筆修正をするだけで引継ぎがスムーズに行えるようになると思います。

 

他に「その他連絡・引継ぎ事項」も、書面化して渡しましょう。

任期2年で1年毎の「半数改選」も検討してみる

長年に渡り、たくさんの管理組合を見てきましたが、マンション住民全員ができるだけ早く理事を経験することはとても良いことだという結論にいたりました。それを実現できる理事の輪番制は、管理組合にとって最適な方法だと思います。

 

1年で全員が改選すれば多くの人が理事を経験できるようになりますが、1年の全数改選だと様々な弊害が表れてきます。

 

そこで、任期2年の半数改選というのを検討してみてはどうでしょうか。半数改選であれば、残り半数の理事はそれまでの1年間の経緯や議論を見ているわけですから、引継ぎができているのと同レベルで議事が進むと思います。

 

また、理事の引継ぎにはノリシロを設ける意味で、3カ月間は新旧の理事が理事会に出席する仕組みをつくるのも一案です。

 

その間、旧理事がオブザーバー的な役割を果たせば、「何がなんだか分からないまま、数カ月が過ぎてしまった」という事態を未然に防ぎ、ひいては「よく分からないから、やる気が失せてしまった」というモチベーションダウンも回避することができると思います。

 

それぞれのマンションや、理事の個性によっても違いはあるかと思いますが、「最低限の引継ぎはしっかり時間をかけてやる」ことを、この機会にぜひ仕組み化してみてはどうでしょう。

 

[図表]引継ぎ時に行う5つのポイント

 

「大事なのは引き継ぎが毎年、行われるよう仕組み化すること。そのためにも、書面化することが大切なのです。上記の他に引継ぎ書類もあると、なおいいですよ!」

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