ここ数年、注目度が高まっている「民事信託(家族信託)」。2006年の法改正によって、制度の本格利用が始まり、高齢者の財産承継において、さまざまなメリットを享受することが可能になりましたが、実際には、その利用には高いハードルがありました。

高いハードルとなった「受託者名義」による口座開設

理論的にも優れた特性を有する民事信託(家族信託)ですが、この10年間で右肩上がりに普及してきたかというと、決してそうではありません。

 

制度そのものの認知度が高まっていないというのも、大きな理由のひとつです。ただ、民事信託(家族信託)を理解された方々や、利用を提唱されている士業の先生にとっても、いざ実践と言う段階になると高いハードルが待ち受けていました。

 

それは、民事信託(家族信託)を実践に移す段階で、受託者のみでは信託事務の適切な履行が確保できないという問題があったのです。というのも、信託法に定められている善管注意義務や分別管理義務を果たし、万全な管理、適切な運用を行うためには、金融機関の活用が必要であり、そのためには受託者名義での口座開設が必要不可欠なのですが、この受託者名義の口座開設に応じてくれる金融機関がほとんど無かったのです。

 

これは、民事信託(家族信託)の黎明期ということもあって、受託者との取引に固有のリスク・論点についての十分な整理がまだなされておらず、各金融機関が慎重に対応しているためと思われます。

ノウハウを活かせる大手信託銀行がサービス提供を開始

2014年当時、筆者の勤める三井住友信託銀行でも、民事信託(家族信託)は対岸のもの、さらには我々が取り扱う商事信託の各商品とも対峙するもの、という感覚をもっていました。

 

プライベートバンキング部は日頃から、税理士、弁護士、司法書士の先生方と接点を持つ機会が多かったのですが、先生方との会話の中で、「民事信託(家族信託)を考えているんだけど、口座開設をしてくれる金融機関が無くて困っている」「御行でバックアップしてもらえないか」と言った要望を多く耳にするようになりました。

 

そこで、受託者との金融取引について、社内の関係部署を始めとして、顧問弁護士の先生方も交えて、民事信託(家族信託)の適切な普及という観点から、リスク・論点についての整理に着手しました。

 

そして、すでに信託事務の履行のために整備されていたインフラや、蓄積されてきたノウハウを活用することにより、受託者の信託事務をサポートすることが十分可能だとの結論に至ったのです。

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