今回は、民事信託の受託者への「専門家による継続的支援」の重要性と、実際に安全な民事信託を設定するためのチェックリストを見ていきます。※本連載は、税理士・公認会計士の成田一正氏監修、一般社団法人民事信託活用支援機構理事長の髙橋倫彦氏、同機構理事の石脇俊司執筆の『『危ない』民事信託の見分け方』(日本法令)の中から一部を抜粋し、資産家の相続対策、資産および事業承継対策としての活用が期待される民事信託について、その特徴や問題点、起こりうるトラブルへの対処法を見ていきます。

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信託事務に慣れていない受託者に専門家の支援は不可欠

信託事務に慣れていない個人の受託者に対しては、専門家が法務、税務の知識はもとより、財産の管理や運用の知識やノウハウも提供し、継続的に支援する必要があります。

 

また、受益者は受託者の監督のための広範囲の権利を有します(信託法第92条)が、受益者がこれを適切に行うことができない場合は、信託監督人を選任し、その権利行使を任せることができます(同法第132条)。

 

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専門家による支援のポイントは以下の通りになります。

 

(1)信託契約書の解釈を専門家が支援する

 

民事信託の契約書は、一般には簡素で、詳細には書かれていないことが多いため、受託者は権限の行使や信託事務の取扱いにおいて、その判断に迷うことが多いものです。その場合は、法務や税務の専門家が適切な助言を行う必要があります。

 

(2)受託者または受益者の事務を専門家が支援する

 

個人の受託者や受益者は、信託事務や税務手続に慣れていないため、税理士、公認会計士などの専門家がこれを指導し、必要があれば次のような事務や手続きの委託を受ける必要があります。

 

①受託者の信託事務処理報告、帳簿の作成・保存

受託者は信託取引の記帳、信託勘定の決算、その貸借対照表、損益計算書等の報告書を作成し、10年間保存しなければなりません。また、信託財産に帰せられる収益の額の合計額がその年に3万円を超える場合は、受託者が受益者ごとに、委託者および受益者の氏名、信託に係る資産および負債の額、信託財産に帰せられる収益の額を記した信託の計算書を、所轄税務署長に提出しなければなりません(所得税法第227条)。

 

②受益者の税務申告書の作成

新たに受益権を取得した者は相続税、贈与税の申告を、信託所得が帰属する受益者はその所得税の申告を行う必要があります。

 

③受託者の調書の作成

また、信託の効力が生じた時、受益者等が変更された時などに、信託に関する権利または信託財産の価額が100万円を超える場合は、受託者は受益者別の調書を所轄税務署長に提出しなければなりません(相続税法第59条第2項)。

『危ない』民事信託のチェックポイント

民事信託を設定する場合に、それが『危ない』民事信託になるか否かを判定するためのチェックポイントは、次の通りです。

 

「危ない」民事信託になるか否かのチェックポイント

 

□ 受託者の選定の誤り

□ 信託財産の保全の不備

□ 受託者の不適切な事務処理の恐れ

□ 受託者と受益者間の利益相反取引の恐れ

□ 受託者による資産運用の失敗の恐れ

□ 信託財産の不適切な処分の恐れ

□ 関係者が受託者の事務処理を妨害する危険

□ 信託財産、受益者の想定外の危険

□ 委託者、受託者、受益者、指図権者等の死亡

□ 取引先の倒産、債権者が担保財産の信託設定を拒否する恐れ

□ 遺留分の侵害の恐れ

□ 事業承継信託における後継者候補が不適格になる危険

□ 資産承継信託の税務リスク

□ 受益者連続信託の税務リスク

□ 信託契約の不適切な変更の恐れ

□ 受益者が特定できないために法人課税信託になるリスク

 

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本連載は、2016年4月1日刊行の書籍『『危ない』民事信託の見分け方』から抜粋したものです。その後の法改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

「危ない」民事信託の見分け方

「危ない」民事信託の見分け方

成田 一正 監修 髙橋 倫彦、石脇 俊司 著

日本法令

民事信託は、相続対策、資産および事業承継対策として、今後大いにその活用が期待されている。 一方、民事信託は当事者が家族や身内の者になる信託であるため、受託者の業務が安易に流れ、信託法が定める忠実義務や分別管理義…

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