今回は、努力で結果を得ることができた人々のエピソードを例に、世間でいう「才能は生まれつきのもの」が本当なのかどうかを考察していきます。※本連載は、東京大学薬学部卒業で、現在は作家、心理カウンセラー、イラストレーターとして活躍する杉山奈津子氏の著書、『偏差値29からなぜ東大に合格できたのか』の内容の中から一部を抜粋し、子どもの能力を最大限に引き出す親の役割と、短期間で劇的に偏差値を上げる学習法を公開します。

なぜ「凡庸」だった人が輝かしい功績を残せたのか?

人は、歴史に名を残す偉人や世界で活躍する著名人を「自分とはかけ離れた別次元の人間」として見る傾向があります。生まれつきずば抜けた才能をもつ天才が、その能力でたやすく輝かしい業績を挙げたのだと思ってしまうのです。まずは、偉人と呼ばれる人たちでさえ、最初は落ちこぼれ、あるいは凡庸と言われていたことが多かった、ということを知ってください。

 

昨年亡くなった国民的俳優の高倉健さんは、役者になったばかりのときに「才能がないから諦めた方がいい」と言われ、その怒りをバネに頑張ったのだそうです。映画『タイタニック』で一躍有名になったレオナルド・デイカプリオも、子役時代のオ ーディションで「この子じゃない」という言葉に泣きながら帰ったとインタビューで語っていました。アップル社を設立したスティーブ・ジョブズでさえも、幼少期はさえない子どもだったと言われています。

 

では、凡庸と言われていた彼らが、果たしてどのように華々しい功績を残すに至ったのでしょうか。その過程を見ていくと、決して生まれもった才能によるものではないことがわかります。彼らは全員、失敗を恐れず、何度でも挑戦し、努力し続けるメンタルセットをもっていたのです。

 

あのエジソンも、幼い頃から機械が好きではあったそうですが、決して生まれつきの卓越した能力で、あっさりと電球を発明したのではありません。5 千回以上という気の遠くなるような回数の実験を繰り返し、失敗を重ね、やっとのことでつくり出すことに成功したのです。

 

今や世界的なファッションブランド「コム・デ・ギヤルソン」を立ち上げた川久保玲さんも、最初は普通のスタイリストでした。その後、パリでコレクションを発表するようになるも強く批判され、「ボロボロの布のよう」「西洋の服への胃潰」とまでけなされました。

 

しかし、彼女は「どうしようとしょんぼりしているだけでは何も変わらない」と言って、どんどん新しいことに挑み続けました。あるインタビューで「これをやったら安全でしょう、リスクがないでしょうということが、コム・デ・ギャルソンにとってはリスクです」と、評価や失敗を恐れずに挑戦する必要性を説いています。

たやすく「輝かしい結果」を得られた人はいない

目標を達成するには才能ではなく、継続して挑戦し続けるメンタルセットが大事です。これは芸術分野、運動能力、ビジネススキルなどに加え、勉強に関しても同じです。実際、東大生に話を聞くと、最初はそんなに成績が良いわけではなかったので、ひたすら努力したという人が大勢います。

 

現役で理科Ⅲ類に入ったS君も、やはり「もともと頭が良くて簡単に合格できたしょ?」と言われることがあるそうで、腑に落ちないと怒っていました。なぜなら、彼が初めて模試を受けたとき、最も低い合格確率のE判定だったからです。だからこそ彼は、がむしゃらに努力したのだと言っていました。

 

また、先ほどもお話しした、「なぜそんな広範囲にわたって難しいことを知っているのか?」と疑問に思うほどすごい量の知識をもつN君。まさしく博識で、「こういう人を天才というのか」なんて思ったりしました。当然のように、テストはどれもこれも満点に近いのです。

 

しかし彼の日常生活の話を聞くと、時聞があれば本を読み、何もない日でも眠い目をこすって根性で夜遅くまで勉強をし、自分の能カを伸ばすために人並み外れた努力をしていました。そんなN君の「本当にやりたいことがあるなら、どんなことをしてでもやるはずでしょ?」という言葉を聞いて、天才だとか、生まれつきの才能だとか、そういう言葉で彼を評価するのは失礼だと気づきました。

 

そもそも、知識なんて覚えなくては頭に入らないのだから、考えてみれば「努力して覚えた」のは明らかなのです。私たちは優れている人に対して、「あの人は才能があるから自分とは違う」と思ってしまいます。しかしそれは、才能という言葉を隠れみのにして、じつは自分が努力していないことに目をつぶっているだけのような気がします。

 

自分の才能が他人と違うかどうかは、その人と同じ時間と量だけ努力してみて、初めて比べられるものです。輝かしい結果だけに着目すると、もともと才能のある人が「たやすく」「スムーズに」 達成できたと想像してしまいそうですが、実際にそんな人はいないということを、親も子どもも知っておくべきです。

 

そのためには、子どもが好きな歴史上の人物のことを、一緒に詳しく調べてみるといい かもしれません。必ず、その裏には目標達成のためのとてつもない努力が隠されているは ずです。

 

別次元の人間と思われる偉人も、じつは努力家だったと知ることで、能力はどこまでも伸ばせるのだというメンタルセットが生まれます。

偏差値29からなぜ 東大に合格できたのか

偏差値29からなぜ 東大に合格できたのか

杉山 奈津子

幻冬舎

高校3年生の秋に“偏差値29”だった著者は、一浪の末、見事に東大合格を果たす。なぜどん底の成績でも、「自分は受かる」と信じられたのか。なぜ途中で断念することなく、努力を続けられたのか。本書は、自身と周囲の東大生の…

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