オフィスビルの「景況と釣り合わない賃料設定」が招く事態とは?

前回は、オフィスビル投資最大の欠点を解消する「区分所有」方式について説明しました。今回は、オフィスビルの「景況と釣り合わない賃料設定」が招く事態について解説します。

すぐに「次のテナント」を見つけることが重要だが・・・

筆者は、区分所有オフィスの経営が皆さんにとって最善の資産防衛策だと考えます。しかし、ごくまれにですがオーナーから、「こんなはずじゃなかった」といわれることがあります。

 

その理由のほとんどが、3カ月、4カ月といった長期期間の空室です。オーナーのなかには、毎月入ってくると信じ切っていた賃料が突然なくなり、なかなか次のテナントが見つからない事態に慌ててしまう人がいるのです。

 

これまで説明してきた通り、中規模ビルは空室になる可能性が比較的低いといえます。ただし、もちろん絶対に空室にならないということではありません。スタッフの増員・減員、業種の転換などテナントにもさまざまな事情があります。これらに伴う移転を止めることは、オーナーにはできません。

 

したがってテナントが出てしまうことは、いつでも覚悟していなければならないでしょう。つまり重要なのは、その後いかに早く次のテナントを見つけるかです。

景気の動向によって変動するオフィスビルの賃料

「こんなはずじゃなかった」と言うオーナーは、次のテナント募集の際、ある共通のミスを犯しています。それはプライシングミス、つまり的外れな賃料設定をしてしまうのです。この間違いを犯すオーナーは、ほとんどが以前付けていた賃料にこだわります。

 

不動産の賃料相場は日々変化しています。マンションなど住居系の場合は、築年数に従って徐々に下がっていく傾向がありますが、築年数にあまり左右されないオフィス系の賃料は、おもに景気の動向によって上下します。その上下幅は住居系の比ではありません。住居系の場合は、入居者募集のたびに賃料を変えなくても、そこそこ人は集まるはずです。

 

しかし、オフィス系はそうはいかないのです。それにもかかわらず、「これまで付けていた月々100万円は譲れない」とプライシングしてしまうと、市場から相手にされなくなってしまいます。その結果、3カ月、4カ月と空室が続く――。

 

筆者の経験のなかで、2年近く賃料を下げずに空室が続いたオーナーもいました。これは数千万円の損失です。

 

このように頑なに賃料を下げないケースは、意外に立地の良い物件のオーナーに多いものです。良い物件を所有しているというプライドと、過去のテナント募集に苦労した経験がないので、どうしても妥協できないのでしょう。

 

しかし、このプライドは百害あって一利なしです。どんな物件でも、賃料を適切に設定することができれば、空室に悩むことはあり得ないのです。

 

仮に1カ月100万円の賃料を、80万円にしたとしましょう。もし、皆さんが経営する会社の月の売り上げが1億円だったら、この値下げによって9980万円になります。この20万円の差が経営にどの程度影響するでしょうか。

 

20万円の出費といえば、フルタイムのアルバイトを一人雇ったようなものです。アルバイト一人を雇うことで、会社が傾くことはないはずです。20万円を惜しんで、80万円の賃料を受け取らないのは本末転倒です。

 

オフィスビルの賃料は、景気動向で上下するということを肝に銘じて、下げるべきときは思い切って下げるしかありません。

 

【図表 事業系と住宅系では、賃料と時間の関係にこれだけ差が出る】

本連載は、2016年7月29日刊行の書籍『「区分所有オフィス」投資による最強の資産防衛』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

株式会社ボルテックス 代表取締役社長

平成元年、早稲田大学商学部卒業。同年、ユニバーサル証券株式会社(現三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社)に入社。証券マンとして働く一方で不動産に着目し、不動産会社への転職を決意。平成7年、株式会社レーサム・リサーチ(現株式会社レーサム)入社、営業部長として活躍し、不動産投資コンサルティングを行う。そんななか、高い利回りが見込める「区分所有オフィス」に魅力を感じ、平成11年に独立。株式会社ボルテックスを設立し、現在に至る。

著者紹介

連載資産を確実に守る「区分所有オフィス投資」最強の方程式

「区分所有オフィス」投資による 最強の資産防衛

「区分所有オフィス」投資による 最強の資産防衛

宮沢文彦

幻冬舎メディアコンサルティング

長寿企業に共通する条件。それは「本業による収益とは別に、不動産を所有することで利益を得ている」ことであると語る著者。100年以上続く企業の中で、不動産による下支えのない会社は事実上存在しないだろうというのが、持論…

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