前回は、財産の棚卸で不可欠な「保証債務」のチェックについて説明しました。今回は、返済の見込みがない貸付金を「不良債権」として処理すべき理由を見ていきます。

経営する会社の貸付金には特に注意

棚卸をしたら、正の財産である貸付金もなるべく整理しておくといいでしょう。なぜかと言いますと、この貸付金には節税をする余地がないからです。

 

貸したお金が戻ってくれば現金になりますから、貸付金は当然、相続時には財産として計上されます。5000万円の貸付金なら5000万円分そのままが相続税の課税対象となります。

 

しかし貸付金でよくある話が、子どもや親族の会社にどんどん貸し付け、それで会社がかろうじて保たれているようなケースです。当然、そのような会社では、貸付金が戻ってくる見込みはありません。もう戻ってこないことが明らかな不良債権です。

 

実際に筆者のお客さまでもこういうことがありました。長男が社長を務める会社があり、その決算書を見たら親からの資金の注入で保っているような会社とすぐにわかりました。

 

この方の場合は、他の兄弟がしっかりしていたので、長男にズバリ言いました。「お前はもう親からかなりのお金をもらっているのだから、お前が継ぐべき資産はないからな」と。

 

親もいよいよ諦めて資金の注入をやめ、長男の会社は破たんしました。これは相続を見据えると正解だったといえます。

不良債権として処理すれば「課税」を回避できる

相続発生前には、このような貸付金を不良債権と判断して処理しなければなりません。この場合の貸付金はもう返ってこないお金ですから、せめて相続財産に計上されないように会社などは清算します。そうすれば課税される財産ではなくなるからです。

 

もし長男の会社がそのまま法人として存在していたら、確定申告を所轄税務署に申告しているでしょうから、相続時に税務上、貸付金として計算されるのは逃れようがありません。

 

いくら子どもがかわいくても、お金を入れてダメな会社ならいっそのことつぶして身ぎれいにしておくことも考えねばなりません。そうでないと、周囲に被害がおよんでしまいます。

 

親が貸してくれないならと、サラ金のようなものに手を出して借金を抱えてしまったら、相続どころの話ではなくなってしまいます。

本連載は、2013年8月2日刊行の書籍『相続財産を3代先まで残す方法』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

相続財産を3代先まで残す方法

相続財産を3代先まで残す方法

廣田 龍介

幻冬舎メディアコンサルティング

高齢化による老々相続、各々の権利主張、そして重い税負担…。 現代の相続には様々な問題が横たわり、その中で、骨肉の争いで泥沼にハマっていく一族もあれば、全員で一致団結して知恵を出し合い、先祖代々の資産を守っていく…

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