前回は、住宅の内覧では、まず部屋の「入隅」をチェックする理由について説明しました。今回は、「家の傾き」を簡単に調べる方法を見ていきます。

特別な道具を使用しなくても「異常な傾き」は確認可能

ポイント⑫ 家や床は1000分の6以上の傾きはアウト

家や床の傾きは、住宅の欠陥・不具合の代表例です。テレビ番組などで、ピンポン球を置いて傾きを確かめる様子などを見たことがある人も多いでしょう。

 

家が傾いていると、ドアなどの建て付けが悪くなったりという不便があることに加えて、ひどい場合は人体にも悪い影響があります。ずっと傾いた状態で暮らしていることで平衡感覚がおかしくなってしまったり、目まいを起こしたりすることがあるのです。

 

家や床が傾いているかどうかの目安は、数字でいえば、1000分の6の傾斜までは許容範囲です。この数字以下なら暮らしていて不都合はありませんし、体に異常を感じることもないでしょう。家や床の傾きは、普通に立ったり歩いたりするだけでは、なかなかわかりません。

 

また、木造住宅においては、不陸(ふり)くといって、床には、わずかな傾きや、多少波打っている状態が一般的でもあります。そこで、特別な道具を使うことなく、自分で家の異常な傾きを確認する方法がいくつかあります。

 

ひとつ目は、室内のドアを開けてみることです。トイレ、居室など、どこでもよいので、ドアを開けて、途中で手を離してみてください。傾きに問題がなければ、手を離したところでドアは止まります。しかし家が傾いていると、勝手に動き出して閉まったり、逆に開いたりします。

 

もうひとつは、室内の照明器具や火災警報器など、室内にぶら下がっているヒモを見ることです。50センチメートル程度あるヒモがないか探してみてください。片目をつむった状態で、サッシやドア枠の縦のラインとヒモを重ねて見てみます。建物が傾いていると、縦のラインが斜めになって見えます。

 

家に適当なヒモがないときには、「重りと糸」を持参しておくと便利です。重りをつけた糸を、入隅の近くの壁にテープで貼ってみましょう。入隅の縦のラインとぶらさげた糸
を平行に見て、上のほうと下のほうとで開き具合が違うなら、傾いています。新築物件で壁にキズを付けるわけにはいきませんが、許可を得たうえで、跡が残らない場所にテープを貼るぐらいは許してもらいましょう。

「道路のマンホール」が家を傾かせる原因に!?

専門的な診断になりますが、「赤外線ラインレベラー」という機器を使えば、より正確に傾きを測ることが可能です。この器械から発する赤い赤外線ラインと、壁の隅のラインとを見比べて、傾きが許容範囲の1000分の6以内に収まっているかを確認します。

 

また、家の敷地が接している道路についてもチェックが必要です。家の敷地が接している道路にマンホールはないでしょうか。マンホールの上を大型車やトラックが通るたびに、家に振動が伝わってきます。その振動が長年続くと、やがて家を傾かせる原因になるのです。

 

中古住宅の場合には、すでに傾きが起きている場合がありますので、床鳴りを確かめながら歩いてみてください。1、2カ所なら問題ないと思いますが、3カ所以上にもなると、建物に問題があると考えられます。

 

自分で家の状態を確かめたいというご要望に応えて私たちが開発したのが、スマートフォン専用アプリ「水平くん」です。これを使えば、垂直と水平モードの切り替えで誰でも家の傾きの状態を確認することができます。

 

入隅で垂直を確かめる際には、「垂直」モードにしてください。また、床の傾きを見る場合には、「水平」モードを選んでください。いずれも傾きが1000分の6以上の場合は、要注意として、警告が出るようにもなっています。

 

複数の箇所を測定して、数値が同じであれば、家全体が傾いている可能性が大きいといえます。ときには、1カ所だけの傾きが大きく出ることもありますので、必ず、複数の箇所を測定してください。同じ方向に1000分の6以上の傾きがあるポイントが3カ所以上発見された場合は、購入を再検討すべきです。

本連載は、2015年6月25日刊行の書籍『こんな建売住宅は買うな』から抜粋したものです。その後の法律・条例改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

こんな建売住宅は買うな

こんな建売住宅は買うな

田中 勲

幻冬舎メディアコンサルティング

注文住宅と比べて安く購入できる建売住宅は、特に地価の高い都心近郊で人気がありますが、実は流通している住宅の大部分が目に見えない欠陥・不具合を抱えているのが実情です。 実際に、断熱材のズレ・不足や、準防火地域にお…

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