前回は、個人事業主の所得税対策となる「青色申告特別控除」の概要を見てきました。今回は、リスクマネジメントの基本となる「分散投資」について説明します。

不動産経営に失敗しても資産が残るように・・・

マネジメントの中身には「予想されるリスクにどのように対処するか」というリスクマネジメントも含まれます。ことに不動産事業に関しては、多くのリスク要因が存在するため、周到なリスクマネジメントが求められることになるでしょう。

 

そのような観点から、お勧めしたいのが「財産三分法」の活用です。これは、財産を「不動産・現金(預金)・有価証券」の3つの資産に分けて保管・運用することであり、リスクの分散と収益の安定を目指す分散投資の考えに基づくものです。

 

具体的にいうと、全資産をアパートやマンション等の不動産の形で持ち続けていた場合、その運用に失敗してしまえばすべてを失うことになりかねません。そこで、一部を現金(預金)、一部を株式等の有価証券の形にしておくことで、万が一、不動産経営に失敗した場合でも、資産が残るようにリスクマネジメントを図るわけです。

 

財産三分法の基礎となっている分散投資の考えは、例えば土地を保有する際には、1カ所に土地を集中してもつのではなく、複数の地域に複数の土地を持つ、有価証券を購入する場合には時期をずらして購入するなど、さまざまな形で応用することも可能でしょう。

相続税対策としての有効性を定期的にチェックする

ここまで触れた貸借対照表の作成や財産三分法などのほかにも、遺言書の作成などマネジメントの一環として行うべき相続税対策は多様な形で考えられます。いずれの対策も、一度きりで終わらせるのではなく継続して進めていくことが重要となります。

 

例えば、相続税対策としてマンションを建てたような場合であれば、そのまま運用を続けてよいのかを、定期的に検討してみましょう。不動産市場の状況等によっては、物件を売却してそれによって得た資金で都心等のより資産価値の向上を図れる地域に不動産を購入する、すなわち資産の組み替えを行うことが望ましいかもしれません。

 

また、定期点検を行う際には前述した相続対策を意識した貸借対照表を利用することが重要となります。遺言書にしても作成した後で、家族関係の変化に応じて書き直すことが必要になるかもしれません。また、税制度の改正や金融政策などの変更によってかつては有効だった節税手法が効果を失うこともあるでしょう。

 

そのような場合には、改めてまた別の対策手段を考えなければならなくなるはずです。このようにマネジメントを進めていくうえでは、継続的に取り組む姿勢、問題点が表れたら改善することをためらわない心構えが求められるのです。

本連載は、2014年11月27日刊行の書籍『地主の相続財産は法人化で残す』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

地主の相続財産は法人化で残す

地主の相続財産は法人化で残す

小澤 豊,川本 泰正

幻冬舎メディアコンサルティング

相続税をできるだけ節税したい、遺産分割で家族がもめてほしくない──。地主にとって相続は、頭の痛い問題です。 多くの地主の相続財産は、現金ではなく土地が大半のため、いざ相続になったときに預貯金だけでは相続税を支払…

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