前回は、収建物本体と「付属設備」を分けて減価償却をする理由を説明しました。今回は、収益物件の活用で、高所得者ほど節税効果が上がる理由を見ていきます。

物件の保有期間における損益は、他の所得と通算

前回は、法人でのタックスマネジメントを説明しましたが、個人で収益物件を取得し、活用する場合においては、物件の保有期間にかかる税率と売却時にかかる税率にギャップがあるため、さらにメリットが得られます。

 

収益物件の保有期間における損益は、他の所得と通算されたうえで課税されます。オーナー社長のなかには年収が高く所得税の最高税率50%(地方税含む。平成27年からは課税所得4000万円超の場合55%にアップ)の方々が多数いらっしゃいます。

 

このような方々については、減価償却で赤字を計上した分、税率にすれば50%の節税効果があります(ただし、土地にかかる借入金が損益通算で認められないなどはありますが)。仮に収益物件の減価償却で500万円の赤字が出れば、節税効果はその50%である250万円です。

税率のギャップが生じることで節税が可能に

一方、収益物件の売却時の税率は、他の所得とは切り離して課税される分離課税です。さらに、収益物件を5年超所有した後に売却する長期譲渡においては、税率が約20%(短期譲渡の場合は税率約39%)となるのです。

 

つまり、保有時の税率と比較して、30%(平成27年からは最高税率が55%に上がるため、55-20で35%)ものギャップが生まれ、節税が可能となるのです。毎年の利益に対して50%の税率で節税を続け、売却時の利益には50%ではなく20%の税率しかかからない。この日本の税制の仕組みを活用することで、税の先送りだけではなく、文字どおりの節税(減税)が実現し、利益を最大化することができます。

 

【図表】税率のギャップで節税

本連載は、2014年8月30日刊行の書籍『会社の経営安定 個人資産を防衛 オーナー社長のための収益物件活用術』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

本連載は情報の提供及び学習を主な目的としたものであり、著者独自の調査に基づいて執筆されています。実際の投資・経営(管理運営)の成功を保証するものではなく、本連載を参考にしたアパート事業は必ずご自身の責任と判断によって行ってください。本連載の内容に基づいて経営した結果については、著者および幻冬舎グループはいかなる責任も負いかねます。なお、本連載に記載されているデータや法令等は、いずれも執筆当時のものであり、今後、変更されることがあります。

会社の経営安定 個人資産を防衛 オーナー社長のための収益物件活用術

会社の経営安定 個人資産を防衛 オーナー社長のための収益物件活用術

大谷 義武

幻冬舎メディアコンサルティング

アベノミクス以降、景気は回復傾向を示していますが、利益を上げ続けるというのは簡単なことではありません。加えてオーナー社長を悩ませるのが増税です。 本書では、中小企業のオーナー社長に向けて、賃貸用アパート・マンシ…

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