「暦年贈与」の活用法と「都度贈与」との違い

前回は、相続税対策における3つのキーワードのうちの一つ、「海外移住」について説明しました。今回は、「暦年贈与」の活用法や「都度贈与」との違いなどについて見ていきます。

親の「名義預金」とみなされないための留意点

国税庁の統計では、相続税の税務調査件数のうち、約80%もの事案で申告漏れが見つかり、追徴課税となっています。申告漏れでは、現預金や有価証券が半分を占めていますが、「名義預金」などとして追徴課税されているケースが多いようです。

 

よくあるケースは、親が子供名義の銀行口座にせっせと預金していて子供がその事実を知らない、あるいは知っていても自由に使える状態でないようなケースです。このような場合、「名義預金」つまり「名義は子供でも実質は親の財産」とみなされ、贈与が認められない可能性があります。

 

名義預金とみなされないようにするには、次の点に留意して贈与の証拠を残しておくことが大切です。

 

①贈与契約書を作成すること
贈与は贈与者、受贈者両方の意思があって初めて成立します。そこで両者の意思を証拠として残しておくために、贈与契約書を作成します。

 

②現金で渡すのではなく金融機関の口座へ送金・移管すること
財産が移動した記録を残しておくことです。金融機関で振替・移管すれば記録として残せます。現金で渡したのでは贈与の証拠が残りません。

 

③通帳や印鑑は受け取る側が保管すること
贈与の事実は、受贈者側がいつでも使える状況であるかどうかが重要な判断材料となります。税務調査では、通帳や印鑑を誰が管理していたか確認されるようです。

 

④基礎控除110万円を超えるなら申告すること
基礎控除額の110万円を少しだけ超える金額を贈与して、あえて税務署に申告するという方法もあります。例えば111万円を贈与して千円の贈与税を納税しておけば、後々否認されるリスクが小さくなります。

「教育費や生活費」としての贈与は非課税!?

暦年贈与と混同されやすいものに「都度贈与」があります。扶養義務者から生活費や教育費について贈与があっても、通常必要なものは贈与税の対象にはなりません。

 

留意点は、必要な都度必要な金額だけ贈与すること、贈与を受けた資金を預金しないこと、そして自動車や不動産などの贈与は対象外となることです。

 

教育資金や結婚・子育て資金については、「一括贈与」の制度を利用することができます。教育資金は受贈者1人当たり1500万円まで、結婚・子育て資金は1000万円までの贈与税が非課税となります(平成31年3月まで)。

 

留意点は、一定の年齢までに使いきれなかった分は贈与税の対象になること、贈与しすぎて後悔している人が多いこと、そして手続きが意外と面倒なことです。なお、この一括贈与については、相続開始前3年規定は適用されませんので直前対策として有効です。

本連載は、2016年7月4日刊行の書籍『超低金利・大増税時代の資産防衛戦略』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

キャピタル・ソリューション株式会社 代表取締役

一橋大学経済学部卒。平成2年大手証券会社に入社後、個人富裕層向けの資産運用アドバイス、上場法人向けのコンサルティング業務に従事。平成26年より現職。有価証券だけでなく、不動産、自社株、相続・事業承継など、多様な側面から顧客資産の分析を行い、最適な解決策を提供することを目指している。資産運用のプロフェッショナルとして、幅広く講演、研修、セミナーを行っている。

著者紹介

連載超低金利・大増税時代に資産を守り抜くための「税金対策」

超低金利・大増税時代の 資産防衛戦略

超低金利・大増税時代の 資産防衛戦略

森 秀光

幻冬舎メディアコンサルティング

終わりの見えない超低金利時代。加えて、相続税や所得税の増税、海外資産の捕捉厳格化など、富裕層が持つ資産は国から狙い撃ちにされているのが現状だ。そんな中で大切な財産を守り受け継いでいくには、どうすればいいのか? …

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