事業承継で「MBO」を活用する際の留意点

前回は、オーナー社長の息子や娘に後継者が見つからない場合の対応策について説明しました。今回は、事業承継で「MBO」を活用する際の留意点について見ていきます。

知識、人望、資金力…最適な人材を見つけるのは困難

MBOには困難もつきまといます。それは、リタイアするオーナー社長に代わって残った社員を率いていく「経営力のある最適な人材」を見つけにくいということです。雇う側と雇われる側では、大きな差があります。

 

例えば社長の右腕、金庫番として会計や経理を一手に担っていて資金繰りの苦労などもわかる専務や役員がいたとしても、技術や営業のことはもう一つわからないということがあります。

 

逆に、内外からの人望が厚いうえに営業成績や技術に秀でたベテランスタッフであっても、お金のことはからっきしわからないという人もいます。会社の特定の分野に秀でた優秀なスタッフであっても、全体を見通して先の戦略を立てていくのは別の才覚なのです。

 

また、より瑣末なこととしては、スタッフ間で「オレより年下の人間が社長になるのか」といった感情論が問題になることもあります。仮に前オーナー社長に匹敵するほどの経営の才覚があり、社内外の人望も厚い候補スタッフがいたとしても、さらに別の問題があります。

 

それは、前オーナー社長から株式を買い取るだけの資金力があるかどうかという問題です。さらにいえば、会社が金融機関から借入している場合は、通常、オーナー社長の退任に伴って、新オーナー社長が借入金の個人保証を引き継ぐことになります。その際、金融機関を納得させるだけの信用力を問われることになります。

修業期間を決めて帝王学を学ばせる方法も

このように、MBOには会社のカルチャーや体制を維持しやすいというメリットがある一方で、適任者が見つかりづらいという問題があります。そこで、一つの解決策があるのです。

 

それは、あらかじめ2~3年などの準備期間を設け、社長業の修業を行うというやり方です。具体的にはM&Aコンサルティング会社のアドバイザーなどと相談のうえ、外部からコンサルタントを招き入れるなどして、帝王学を学んでもらうのです。

 

例えば、営業や技術のことは何でもわかるオーナー社長の右腕が会計のことは苦手という場合、実践の中で経営と会計分野のことを集中して学びます。併せて内外に「次期社長」を公表し、入念に承継を準備するのです。本人の気構えができ、経営のイロハも習得する。そして周りが「次期社長」を見る目も好奇から信頼に変わったとき、満を持してMBOという形で事業承継を行うわけです。

 

「ビフォーM&A」として、事業承継の前の諸々の準備について詳述しますが、時間をかけてMBOに備えるというのもその一つになります。ちなみに当社では、経営コンサルティングも行っているため、よくこのような相談にもあずかり、実際に準備期間を経てMBOを成功させた例もあります。

本連載は、2013年9月20日刊行の書籍『会社を息子に継がせるな』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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連載身内が最適な「事業の後継者」とは限らない理由

株式会社スターシップホールディングス 代表取締役兼CEO

税理士・米国公認会計士。東京の独立系M&A専門会社にて、後継者難の企業に対するM&Aコンサルティング、M&Aによる企業再建コンサルティングを手掛ける。その後、監査法人系公認会計士事務所にてベンチャー企業の新興市場への公開支援業務、企業価値評価業務を手掛ける。

著者紹介

会社を息子に継がせるな

会社を息子に継がせるな

畠 嘉伸

幻冬舎メディアコンサルティング

現在、9割の中小企業経営者が後継者不在という問題を抱えています。息子がいない、いても“家業"に興味を示さない、あるいはオーナー社長が手塩にかけてきた会社を任せられるほどの才気がない。だからといって、廃業を選んでし…

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